日本化粧品技術者会誌
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54 巻, 4 号
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総説
  • 安全性評価─原料・商品・発売後─
    植木 拓朗
    2020 年 54 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    医薬部外品を含む化粧品は,人々がさらなるQOL(Quality of Life)の向上を図ることを目的として毎日そして長期間使用されるため,安全性を十分に確保することが必要不可欠である。化粧品は多種多様な原料や材料で構成されており,その剤形はもとより,使用部位や使用方法も多岐にわたることから,原料から商品(製品),使用シーンに至るまでさまざまな状況に合わせた評価および安全性保証が必要になる。また,適切な評価を実施すためには,時代背景や法令,各種評価方法やガイドラインなど多くの情報を把握し,理解する必要がある。本総説では,安全性を評価および保証するために理解しておきたい内容について,これまでの化粧品の安全性に関わる変遷から,実際の安全性評価について基本となる情報をベースに幅広く紹介する。

原著
  • 中村 理恵, 板井 恵理子, 上原 静香, 水野 誠, 成 英次, 中出 正人
    2020 年 54 巻 4 号 p. 315-322
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    美しい肌の要素の1つに透明感があげられる。しかしながら,透明感に関与する皮膚生理特性の特定や作用機序は十分に明らかになっておらず,そのため透明感と皮膚生理特性間の相互作用を定量的に評価することは困難であった。そこでわれわれは,専門評価者による目視透明感スコアを複数の皮膚生理特性値から推定する数理モデルを開発し,透明感に影響する皮膚生理特性を特定した。また,判別分析を組み合わせ,透明感と皮膚生理特性の相互作用を探索的かつ体系的に解析した。その結果,肌透明感を精度高く推定する数理モデルを開発し,同時に,「肌表面のなめらかさ」および「斑点状の赤みの数」が透明感に最も大きく寄与する因子であることを明らかとした。さらに,判別分析の結果から,透明感の違いを定義づける補完的な皮膚生理特性が追加され,同時にそれら皮膚特徴と透明感の量的関係性には個人差があることを見出した。本研究で開発したわれわれのモデルは,肌の透明感に関するメカニズムについて定量的かつ体系的に説明するものである。このアプローチは,肌の透明感を向上させる個人ごとの皮膚生理特性を明らかにし,優れた新規肌透明感ケア方法の開発に有益である。

  • 萩野 亮, 渡邉 梨奈, 増渕 祐二, 奥山 雅樹, 山下 美香
    2020 年 54 巻 4 号 p. 323-332
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    目周りは対人印象に与える影響が大きい部位であり,アイシャドウはその印象を向上させる上で効果的なアイテムであるため,幅広い年代に使用されている。一方で目周りは,くすみ,たるみ,しわなどの加齢変化による悩みも顕著な部位である。アイシャドウにより加齢変化による影響をカバーし,印象を向上させるためには,しわを補正しフラットに整えること,くすみを解消し明るくすること,ツヤを与えハリを感じさせることが必要である。しかし,瞼はしわや二重瞼の溝等の凹凸が顕著であるため,均一な明るいツヤを得ることは難しく,瞼は瞬きにより激しく動くために,化粧持続性にも課題があった。そこで本研究では,高弾性油性ゲル製剤の開発を行った。弾性素材としてしられているポリウレタンの構造を制御することで,ツヤ高く,動きに破壊されない油性ゲルを開発した。開発したポリウレタンは,親油性ソフトセグメントと,親水性のハードセグメントを有し,水素結合を介して油を透明な弾性ゲルにすることが可能であった。このポリウレタンを用いた油性ゲル状アイシャドウは,加齢瞼にツヤを与えるとともに,瞬きなどの動きにも強いため化粧持続性も良好なものであった。

  • 渡辺 恵悟, 柿沢 英美, 田中 章博, 大塚 千恵, 奥山 雅樹
    2020 年 54 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    口唇に関する悩みの1つとして,くすみという現象があげられる。従来の口唇くすみの評価は,専門評価者の視感評価に頼っており,口唇くすみに対応する素材や製剤の開発に必要な客観的評価指標が提案されていなかった。そこでわれわれは,口唇の分光反射特性に着目し,被験者30名の口唇の分光反射スペクトルを解析することで,くすみの要因となる分光反射パターンを見出し,口唇くすみの客観的評価手法の確立を試みた。まず被験者30名について,口唇くすみの視感評価結果に基づき3つのグループに分類した。全被験者の口唇における分光反射スペクトルを取得し解析を行った結果,緑色領域における最大反射強度(IG)と赤色領域における最大反射強度(IR)との比率IG/IRに着目した。グループごとにIG/IR値をプロットしたところ,IG/IR値と口唇くすみの視感評価結果との間には強い正の相関が認められた。このIG/IR値の評価指標としての妥当性を検証するため,赤色202号および226号を配合したリップグロスを用いてIG/IR値を変化させ,それに伴う視感評価結果の変化を観察したところ,IG/IR値とくすみの視感評価結果が高い相関をもって連動していることが確認され,IG/IR値の客観評価手法としての有用性が示された。

  • Akihiro Watanabe, Yuki Kobayashi, Maki Sato, Nahoko Kisaka, Takashi Mi ...
    2020 年 54 巻 4 号 p. 340-350
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    It is necessary to establish an in vitro sun protection factor (SPF) test that considers costs, time requirements, and ethical problems. However, few studies on in vitro SPF tests for powder products, which do not easily create uniform layers on polymethyl methacrylate (PMMA) plates, have been reported so far. To produce uniform layers, solvents were applied on PMMA plates before applying powder products. This study aims to clarify the impact of various factors on in vitro SPF values of the powder products and establish an in vitro SPF test method that correlates with in vivo SPF values. Temperature variations affect the solvent viscosity, leading to significant differences in the in vitro SPF values. Therefore, we selected mineral oil because its viscosity is not strongly affected by the temperature. Based on the combinations of the amounts of solvents and samples, the confidence interval (CI[%]) varied. Therefore, we selected 0.3 mg/cm2 of sample against 0.1 mg/cm2 of solvent for the combination with CI [%]≤17. We identified significant differences in the in vitro SPF values depending on the number of spreads. Therefore, we defined the number of spreads as 10 reciprocations × 4, which had the smallest 95% confidence intervals (95% CI). We could not identify significant differences upon varying the spreading pressure. However, when the spreading pressure was (1.18±0.20)N, the CI [%] was higher than 17. Therefore, we chose (0.69±0.20)N, which had the smallest 95% CI. A single-regression analysis between the in vitro SPF values obtained by applying the conditions established in this study and the in vivo SPF values according to ISO 24444:2010 showed that the coefficient of determination was 0.9486 (r=0.9739). Thus, we successfully established an in vitro SPF testing approach for powder products.

短報
  • 佐藤 智穂
    2020 年 54 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    化粧品が心に与える影響について,化粧品の種類による違いに関する詳細な検討は見あたらない。そこで,本研究ではスキンケアとメイクアップの計10種類の化粧品使用時の気持ちについて,20~44歳の日本人女性2340名を対象にインターネット調査を実施した。覚醒度の高低で異なる「感情」の「安静爽快」「快活高揚」と自意識の違いを示す「意識」の「内向」「外向」に関して,先行研究と同様にスキンケア製品では「安静爽快」,メイクアップ製品では「快活高揚」「外向」が感じられた一方で,乳液・クリームは「安静爽快」が低く,メイク落とし・クリームは「内向」が低く,美容液は「快活高揚」「外向」が高く,化粧下地・ファンデーションは「快活高揚」が低いというように種類による違いが示された。また,スキンケアでは,朝は「快活高揚」,夜は「安静爽快」と「内向」が感じられ,朝と夜で関わる感情や意識が異なることが明らかとなった。

  • 増田 有紗, 今田 浩, 石黒 正雄, 戸堀 悦雄
    2020 年 54 巻 4 号 p. 358-363
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    毛髪はダメージを受けると表面の疎水性,強度,弾性が低下することがしられている。われわれはダメージ毛に,ジグルコシル没食子酸(以下,DGA)とカチオン性界面活性剤であるトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(以下,STAC)の水溶液を用いて上記3つの物性値変化を検証した。その結果,DGAとSTACを用いた場合,ダメージを受けていない毛髪と同等値までその値が回復することが明らかになった。これらの物性値変化に対し,DGAおよびSTACが作用する毛髪部位を明らかにするため,飛行時間型2次イオン質量分析法(ToF-SIMS)および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて解析を行った。その結果,DGAおよびSTACはキューティクル表面およびキューティクル層へ作用していることが示唆された。

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