超高齢社会の進展やユニバーサルデザイン思想の浸透を背景に,さまざまな人々にとって使いやすく快適,そして安全で健康的な製品が求められている。そのため,ユニバーサルデザインを考慮した製品がこれまでにも数多く開発されてきた。その一方で,まだその実現には至っていないものも少なくない。ユニバーサルデザインとは,高齢者や障がい者と呼ばれる人々に限定したものではない。年齢,性別,言語や文化を超えたさまざまな人々が対象となる。そうした多様な心身機能の特性やニーズをもつユーザの生理や心理を明らかにしたうえで,それらのデータから適切な設計値を導き出さねばならない。すでに,そのための設計に供する人間の特性に関するデータベースも整備されつつある。また,特性を明らかにするためのヒトの測り方や人間データを設計値に落し込むためのデータの解釈,変換,トレードオフなどの翻訳プロセス等も必要である。
アミノ酸系機能性粉体であるNϵ-ラウロイルリジンは,優れた滑沢性・撥水性を有し,メイクアップ化粧料をはじめ,幅広い化粧品に配合されている。しかし,Nϵ-ラウロイルリジンは,水にも油にも難溶性であるため,スキンケア商品や液体洗浄料などの液体剤型に対し,安定に配合することが難しかった。本研究では,Nϵ-ラウロイルリジンの特長を維持しつつ,液体化粧料への配合を容易とすることを目的とし,水溶性Nϵ-ラウロイルリジン誘導体の合成検討を行った。結果,2分子のNϵ-ラウロイルリジンとセバシン酸から形成されるジェミニ型誘導体は,pH7以上のアルカリ性領域では水に可溶であるものの,弱酸性~中性領域で水をゲル化させるというユニークな特長を有していた。なお,TEM観察の結果から,ジェミニ型誘導体は自己集合体化により繊維構造を形成し,ゲル化能が発現していることが示唆された。また一方で,ジェミニ型誘導体と特定の添加剤を組み合わせることにより,マルチラメラベシクルを形成することを見出した。本稿では,これらの詳細な検討と化粧品用途への応用について報告する。
光照射は活性酸素の生成を引き起こし,カルボニル化などのタンパク質修飾を誘発する。このカルボニル化タンパク質の形成は酸化ストレスのマーカーとして用いられてきている。ケラチンフィルムは日常生活レベルにおけるUV照射に起因するカルボニル化タンパク質を検出するための有効な生体材料であることが知られている。従来までは困難であった長波長UVA~高エネルギー可視光線(HEV)(380~530 nm)においてのカルボニル化タンパク質形成がこのフィルムの使用により確認でき,ソーラーシミュレータ(300~2500 nm)照射と比べて約40%もの生成量が認められた。代表的なUV吸収剤であるベンゾフェノン-3およびメトキシジベンゾイルメタンは,UVA~HEVによるカルボニル形成への阻害効果は低かった。可視光線の中で,ブルーライト/HEV(400~500 nm)が緑色光(500~550 nm)と赤色光(600~700 nm)照射と比べ,より高いカルボニル形成も引き起こすことが示された。
毛髪は人の印象を決める要因の1つとされているが,毛髪にツヤがあることや明るさの違いによって生じる人への印象の変化についてはいまだ十分な研究がなされていない。本研究では,毛髪のツヤおよび明るさの度合いが人の印象に与える効果について25語の肯定的評定語を用いた実験を行い,得られた評点を2要因分散分析および因子分析を用いて分析した。その結果,毛髪のツヤが上がるとほとんどの評価語で得点が高くなり,明るさが上がるといくつかの印象語の得点が低下することが示された。また因子分析により示された4因子モデルではツヤは触覚的な質感語と女性らしさを感じさせる評定語を含む因子を,明るさは視覚的な質感語とフレッシュさを感じさせる評定語を含む因子を説明できた。毛髪のツヤおよび明るさが人の印象に与える効果を明確にしたことで,頭髪化粧品を消費者が望む容姿によりよく適合させることが期待できる。