日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
Print ISSN : 0387-5253
ISSN-L : 0387-5253
40 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 井須 紀文
    2006 年40 巻3 号 p. 187-194
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    健康で快適な住空間をつくるために取り組んでいる表面技術について述べる。一つは, 土が持つ細孔構造の特徴を活かして制御することにより, 自律的に湿度を制御するだけでなく, 室内のVOCを吸着するメソポーラスタイルである。もう一つは, 表面処理による住宅内の防汚技術についてである。住宅内では部位により汚れの発生原因が異なるため, それに適した適材適所の表面処理が必要である。乾湿が繰り返される衛生陶器表面には, 水道水中のケイ酸が水アカとして析出するが, 表面処理によってその析出を防ぐことができる。これらの技術を通して今後の循環型社会を目指すために必要な, 製造時のエネルギーや使用時のエネルギーを削減するだけでなく, 人にとっても付加価値が高い, 人と地球を考えたものつくりを目指している。
  • 工藤 大樹, 井柳 宏一, 吉沢 賢一, 大倉 さゆり, 中前 勝彦
    2006 年40 巻3 号 p. 195-200
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧品にとって保湿機能はとても重要であるが, 保湿機能を向上させるために保湿剤を高濃度配合するとべたつき感が強くなってしまい, 消費者に嫌われる感触となる。われわれは, 保湿剤によるべたつき感の原因は極性基の表面への露出であると考え, 「極性基の露出を防ぐ物質を共存させることで, べたつき感が抑制できる」という仮説のもとに, 課題の解決を試みた。保湿剤には優れた保湿効果を有するグリセリンを選択した。共存させる物質として既存物質を検討したが, 期待する効果の得られるものは見出せなかった。検討の結果, グリセリンの極性基の露出を効果的に抑制するには, ポリマーによる膜形成が有用であると判断し, グリセリンへの選択性の高いカスタムメイドポリマーである, polyglycolmethacrylate-2-hydroxyethylmethacrylate-fluoroalkylacrylate copolymer (ポリマーSR) を合成するに至った。ポリマーSRは, グリセリンの保湿効果を低下させることなく, 疎水的な膜を形成することで, 有意にべたつき感を抑制することができた。ポリマーSRのべたつき抑制メカニズムを解明するため, 溶液中におけるグリセリンとポリマーSRとの相互作用に関して, NMRおよび静的光散乱測定から解析を行った。その結果, ポリマーSRは肌上に塗布されると, 外側に疎水基を配向した構造をとって存在することが示唆された。官能評価の結果は, この疎水的な構造が皮膚上においても保たれていることを支持している。今回, われわれが保湿剤のべたつき感の抑制手段として確立した方法は, 対象とする機能と使用性を考慮して, 共存させる物質を設計することにより, 保湿剤以外への応用も期待され, 今後の化粧品開発に対して大きく役立つものと確信する。
  • 辻 澄子, 徳永 裕司
    2006 年40 巻3 号 p. 201-210
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    青色1号 (B1; ブリリアントブルーFCF) はアルカリ溶液中で加熱することにより分解することが知られているが, 室温ではアルカリ性でB1の色調変化がないといわれている。そこで, B1のアルカリ溶液中の加熱分解挙動をLC/MSおよびHPLCを用いて検討した。その結果, 市販B1中に存在する副成色素エチルアミン体 (B1sub-EA) およびフェノール体 (B1sub-HP) の生成が確認された。B1sub-EAの生成は非常に少なく, B1の殆どは赤紫色を示すB1sub-HPに分解していった。B1sub-HPはアルカリ溶液中互変異性体であるオキソシクロヘキサジエニリデン体 (B1sub-OCD) へ変化することが示唆された。同様に, アルカリ溶液中B1の異性化が起こり, 極大波長が同じ4級アンモニウム水酸化物へ変化することが示唆された。また, 温度の影響も検討した。その結果, 低い温度ではB1の異性化が律則段階となり, 分解は遅く, 室温での色調変化は短時間では見られないことが示唆される。
  • 久留戸 真奈美, 塩原 みゆき, 菅沼 薫
    2006 年40 巻3 号 p. 211-216
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    一般男性21名のヒゲ, および肌の状態を調査するとともに, 電動シェーバー3機種でヒゲを剃り, その性能と肌への影響を調査した。この結果, ヒゲが濃く, ヒゲ剃り時間が長い被験者ほど, 肌荒れや色素沈着が目立っていた。また, 機種によって, ヒゲ剃りの前後で, TEWLが大きく増加し, 赤みや出血が多く見られ, ヒゲ剃りで皮膚が傷ついていることが示された。また, 官能評価と計測判定の比較から, 官能評価でのシェーバーの「切れ味」や「深剃り感」は, TEWLの増加, 出血の多さ, 肌が赤くなることと同調する傾向があった。すなわち, 肌への負担が大きいことを, ヒゲ剃り性能が良いと誤解する傾向があった。男性の肌荒れは, ヒゲ剃りによる影響が非常に大きいと考えられ, より肌に負担をかけないヒゲ剃りとスキンケアの重要性が示された。
  • 影島 一己, 岡田 健児, 石原 良哉, 清水 敏之
    2006 年40 巻3 号 p. 217-223
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    迅速かつ簡便にチロシナーゼ活性の阻害剤をスクリーニングする方法として, フローインジェクション分析法の利用を検討した。5.0×10-3mol/Lのドーパ水溶液および5.0×10-2mol/Lのリン酸緩衝溶液を一定の流速で流路に流した。阻害剤を含むチロシナーゼ溶液は緩衝溶液側の流路に注入され, 反応コイルを通って検出器に導かれる。検出波長は475nmとした。測定の結果, フローシグナルのピーク強度は, 酵素活性単位1 unit/mL-10 units/mLの範囲で良い直線性 (相関係数0.992) を示した。また1検体あたり5min以内の測定が可能であった。本法においては, β-アルブチン, L-アスコルビン酸, コーヒー酸は強い阻害作用を示すことがわかった。
feedback
Top