肌の分光反射率曲線では, 500-600nmの領域にスペクトルの凹みが観察される。これは血液の光吸収によって生じるものであり, 人によって大きさが異なることが知られている。肌の分光反射率の測定結果から, 凹み面積と
L値との間に, 相関性があることが見出された。その関係式から求められる「標準的な凹み面積 (
ADs)」と, 分光反射率曲線から求められる「実際の凹み面積 (
ADa)」との比 (
ADa/ADs) は, 肌色印象のパラメーターとして用いることができる。人工的な光環境下で,
ADa/ADsを10-200%まで変化させた肌を作り出し, 印象評価を行った結果,
ADa/ADsが100-125%のとき, 肌は自然に美しく見えることが確認できた。次に, この結果をメーク料の開発に応用することを試みた。種々の検討の結果, マゼンタ色に染色した井形断面を有するファイバー粉体の開発に至った。この粉体を配合したファンデーションは, 短波長光と長波長光の反射率を同時に高めることによって, スペクトルに凹みを作り出すことができる。血色の悪いモデルにこの試作品を塗布したとき,
ADa/ADsは49%から107%に上昇し, 見た目の印象も向上した。
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