日本は,山地が多く尾根や谷が複雑に発達しており,地形の概形を把握することは困難な場合が多い.そこで地形の概形を把握するために接峰面というものが考案された.接峰面とは山頂に接する仮想曲面で,原地形を示すと考えられたこともある(岡山 1988).接峰面作成法としては,方眼法,埋谷法,復旧法が用いられてきたが,包含内の最高点が山地斜面や尾根にあった場合,それらの点の間の標高地を補完する内挿という方法を用いて作成されるため,地表面を下回るような接峰面になる可能性がある.そこで本研究では,新たな接峰面作成方法「山頂抽出法」を提案し,従来用いられてきた方眼法を取り上げ,作成された接峰面と,その接峰面から地表面を差し引いて谷の深さを算出し,両手法により作成された接峰面と谷の深さを比較した.
方眼法は格子内の最高点を抽出し内挿することで,仮想曲面を構築する手法である.一方,山頂抽出法は,ある大きさの円内で中心が周囲より高い点を山頂とみなし,抽出された山頂の点を内挿し,山頂に忠実な曲面を構成する.本研究では,フォーカル統計を使用し,100m・500m・1000mの半径3種類の円で解析を行った.なお方眼法ではブロック統計を使用し,山頂抽出法と解析範囲を合わせるために,200×200m・1000×1000m・2000×2000mの3種類の方眼で行った.
山頂抽出法では半径が1000m,方眼法では2000×2000mの解析範囲の場合,両手法とも谷を覆う平面的な接峰面が得られ,最
大で深さ900~1000mが観測された.しかし範囲を狭くすると,方眼法では斜面や谷間の高地が最高点として抽出されやすく
なり,接峰面が地表面を下回る「谷の深さが0未満」の値も多く出現した.一方,山頂抽出法を用いた場合,山地斜面や谷にポイントが抽出される割合は小さく,谷を覆う接峰面が安定して形成され,谷の深さも一貫して大きかった.特に山頂抽出法では半径が100m,方眼法では200×200mの解析範囲の場合,方眼法は谷地形を残す曲面となる一方で,山頂抽出法は谷をほぼ完全に埋める接峰面を描いた.
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