隆起サンゴ礁段丘上の発達段階を異にする土壌の腐植の形態分析および腐植と錯体を形成している金属イオンの0.1molL^<-1>ピロリン酸ナトリウム水溶液抽出による定量を行い,隆起サンゴ礁段丘上の土壌発達過程に伴う腐植の形態変化を検討した結果,以下のことが明らかとなった。1)遊離炭酸塩含量は,初生レンジナ様土で高く,レンジナ様土で急激に減少し,その後は1〜10g kg^<-1>程度であった。有機炭素含量も同様の傾向を示すことから,遊離炭酸塩の急激な溶解・溶脱に伴って腐植の分解が急激に進むことが示唆された。2)腐植の抽出溶媒として0.1mol L^<-1>水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合,土壌間に腐植酸の型およびCh/Cf比の差異が認められなかった。0.1mol L^<-1>ピロリン酸ナトリウム水溶液を用いた場合には,差異が認められ,腐植酸の型は土壌の発達段階に伴い,P型からB〜A型に変わり,B型を経て,Rp〜P型へと変化を示した。また,Ch/Cf比もレンジナ様土で最も高く,すなわち一時的に腐植化度が高まり,その後,徐々に低下する傾向が認められ,土壌の発達段階に伴い,変化を示した。3)0.1mol L^<-1>ピロリン酸ナトリウム水溶液で抽出される鉄,アルミニウム,カルシウムおよび炭素を定量したところ,隆起サンゴ礁段丘上の土壌腐植は,土壌発達過程の初期段階では,豊富なカルシウムとかなり高い割合で結合していた.その後,カルシウムの溶脱に伴い,遊離し,一部は鉄やアルミニウムと錯体を形成して存在するが,最終的には遊離した形態や三二酸化物とゆるく結合した腐植が主体となることが明らかとなった。以上より,隆起サンゴ礁段丘上の土壌発達過程の初期段階では,脱炭酸塩作用が急速に進み,有機炭素含量も同時に減少するが,腐植化度は一時的に高まり,その後,徐々に低下していくことが明らかとなった。
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