(1) 樹脂状酸性物質のクロマトグラフ分離
樋口らは先に溶剤およびアルカリによる亜炭ビチューメンの凡その分別を行い, それらの特異的な物質群の性質を知ることができた。ここでは亜炭ビチューメン中, エチルエーテルに可溶で, 5%炭酸アンモン (AE1) および7%炭酸ソーダ溶液 (AE2) により分別されるいわゆる樹脂酸と考へられる物質をメチル化して, クロマトグラフ法を用い, その再分別を試み, ある程度の目的を達することができた。各分別物については分子量, 酸価, 鹸化価, およびメトキシル基を測定してそれらの組成構造の推定を行い, また同時に炭水素比の相違から石炭化過程におけ, る脱水素反応の状態を知ることができた。
(2) 樹脂状酸性物質の水添および酸化分解
(1) と同一試料 (AE2) について, 水添および酸化を行い, それらの分解生成物の検討から (1) の結論との関連において構成単位体の推定を試みた。水添は銅クロム触媒を用いた高圧反応であり, 酸化は過マンガン酸カリおよび過酸化水素によつた。この両者の反応様式は全く異るが, 生成物としては割合に好收量でそれぞれ特徴ある物質をえた。この結果からすれば, 試料の本質的な構成体は大体において残存していると考えられ, 従つて一暦明確な単位体像を掴むことができた。
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