発達心理学研究
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14 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 松嶋 秀明
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 233-244
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    非行少年の問題を研究するためには,少年の行為自体や,家族関係などに注目するだけではなく,そこに問題をみてとる側の視点に注目し,実践場面においてどのような知識が意味をもっているのかを調べること伝実践を反省的に見つめなおすためには有用であると思われる。本研究では,ある更生保護施設(A園)で,非行少年の更生・自立を支援する一人の実践家(N氏)のインタビューを,その実践についての観察記録とともに質的に分析した。そして,非行少年の問題が,いかに語りの中で構築されるのかを,実践との関連において検討した。インタビューには4つのテーマがあった。第1に,家族を非行化の原因とする語り,第2に,少年たちの親へ,わが子に対する教育の責任を問うこと,第3に,少年自身を基本的な生活能力を身につけていないものとすること,そして第4に少年との関わりについてであった。各々の特徴は,N氏やA園の実践を,聞き手に意味のあるものとして見せる語りロをとっていた。これらの語りはN氏の実践との関連において考察された。
  • 小田切 紀子
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 245-256
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学生男女646人を対象にして,離婚と離婚家庭に対する否定的意識の形成過程について検討することである。そのために,離婚観,結婚観,性役割観,育児観,家族の信頼感を尋ねる質問紙調査を実施した。その結果,離婚と離婚家庭に対する否定的意識の形成には,結婚と育児に対する意識が関与しており,「伝統的結婚観」,「結婚への期待」,「育児に対する拘束感」が強いほど,離婚と離婚家庭に対して否定的な判断をする傾向が明らかになった。また,離婚に対する否定的意識の形成過程には性差が認められ,性役割を受容していることが,男子の場合は「育児に対する拘束感」を介して,女子の場合は結婚,育児への肯定的意識を介して,離婚に対する否定的意識を強める傾向が明らかになった。以上から,結婚経験のない大学生は,将来の結婚や育児に対する期待や考えをもとにして,離婚に対する否定的意識を形成していることが明らかになった。このことは,離婚が思いこみや固定化されたイメージで判断されていると推測でき,離婚や離婚家庭の実情についてより深く理解することで,それらへの否定的意識が低減する可能性が示唆された。
  • 坂上 裕子
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 257-271
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究では2歳児の母親25人に半構造化面接を行い,子どもの反抗や自己主張の本格化に対する母親の適応過程を,グラウンデッド・セオリーの手法を援用し,検討した。子どもの反抗や自己主張の本格化を,成長の現れと捉えていた母親もいたが,母親(特に第1子の母親)の多くは苛立ちや困惑を経験していた。大半の母親は,反抗や自己主張が激しい時やそれらに意図性が窺える時,時間的・精神的余裕がない時に,自身の意図に子どもを強庄的に従わせる,自己の視点に焦点化した対応(怒る,突き放す,叩く等)をとることがあると答えた。しかしそれらの対応は母親に,視点の揺れ(子どもの視点から自身の対応や子どもの行動を捉え直すこと)を生じさせることがあった。母親は,以下のことを通じて子どもの反抗や自己主張に適応していったと考えられた:①理解力の向上や興味・関心の拡大といった子どもの発達的変化を利用しながら,互いの理解や譲歩に基づく対立の解決方法を試行錯誤を経て見出すこと,②子どもへの期待や対応を我が子の発達の実情や個性に合うよう修正することで,自己の視点に焦点化した状態から脱すること,③環境に工夫を図ることや自身の苛立ちを統制する方法を見出すことで,自己の視点に焦点化した状態が生じるのを抑制すること。以上の結果より,子どもが反抗期を迎えた時の母親の中心的経験とは,親である自己の視点と子どもの視点の調整を図ることであった,と結論づけられた。
  • 小泉 智恵, 菅原 ますみ, 前川 暁子, 北村 俊則
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 272-283
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    働く母親における仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが母親自身の抑うつ傾向にどのような過程を経て影響を及ぼすのか,そのメカニズムを検討することを目的とした。仮説として仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーの抑うつ傾向に対する直接的影響と,仕事ストレツサー,労働時間,子どもの教育・育児役割負担によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが子育てストレス,夫婦関係を介して抑うつ傾向に及ぼすという間接的影響が提出された。方法は,小学校高学年の子どもをもつ有職の母親で配偶者のある者(246名)と同学年の子どもをもつ無職の母親で配偶者のある者(131名)を対象として質問紙調査をおこなった。有職母親群の分析結果で,分散分析により仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると抑うつ傾向が高くなるという直接的影響がみとめられた。パス解析により仕事ストレツサー,労働時間の増加によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると,夫婦間の意見の一致を減少させ,子育てストレスを高めることを介して抑うつ傾向を上昇させるという間接的影響がみとめられた。考察では仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが抑うつ傾向に影響しないようにするには,夫婦関係と子育てに関して介入,支援をおこなうこと,仕事ストレツサーの低減と労働時間の短縮が有効である可能性が論じられた。
  • 畠山 美穂, 山崎 晃
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 284-293
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,以下に示す4つの点を検討することにある。1つめは,幼児期に見られる攻撃・拒否的行動が,いじめとしての3つの要素(①加害者の人数,②攻撃・拒否的行動の継続性,③被害者の精神的苦痛)をもつかどうかについて検討すること。 2つめは,いじめ場面に見られる幼児の仲間関係について検討すること。3つめは,いじめとしての性質をもつと判断された攻撃・拒否的行動のエピソードの記述からいじめの様態について検討すること。4つめは,いじめに対する保育者の対応について検討することである。観察対象児は,幼稚園年長児34名(男児16名・女児18名)であり,観察期間は1年間であった。観察方法は参与観察法が用いられ,分析方法はエピソード分析とネットワーク分析を採用した。その結果,特定の女児に対して行われた攻撃・拒否的行動が,いじめとしての3つの要素を満たしたことから,幼死期にもいじめとしての性質をもつ行動が見られることが明らかにされた。そして,いじめを発見するためには,保盲者が子どもの発する微妙なサインに対して敏感になる必要があることが示唆された。
  • 小松 孝至
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 294-303
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,子どもの幼稚園での経験に関する母子の会話内容とその特徴を検討する。検討にあたっては,子どもが園で出会う他者および他者との関係を含む子ども自身の経験に着目し,質問紙に対する母親の報告から検討した。協力者は幼稚園児の母親235名である。7月と11月に,15種類の話題について,それが取り上げられる頻度の評定,および会話における子どもの語り方の特徴(7項目)に関する評定を母親に求めた。検討の結果,園での遊びや子どもが有能さを感じた経験('できること'),肯定的な情動などの話題の頻度がもっとも高く,他者の特徴や他者との関係もしばしば話題となることが示された。また,この会話に子どもが積極的に参加していることも示唆された。さらに,友だちの性格を取り上げる頻度が7月から11月にかけて増加すること,'保育者にしてもらったこと'に関する話題や,ある話題を繰り返す,他者の真似をするといった語り方の特徴が3歳から5歳にかけ減少するなどの結果がみられた。以上の結果は,園での子どもの経験に関する会話に多く見られる内容や特徴を示すものであり,この会話が生活の中で成立・変化し,社会化の場として機能する様子を検討するための基礎資料を提供するものと考えられる。
  • 長谷川 真里
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 304-315
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,なぜ年少者は言論の自出をあまり支持しないのかということを検討することであった。研究1において,小学4年生,6年生,中学2年生,高校2年生,大学生(合計176人)は,言論の自由に対する法による制限の正当性を判断した。加齢と共に,推論の様式は,言論内容のみに注目するものから,言論内容と自由を比較考量する様式へ,あるいは聞き手の自由に注目する様式へと変化し,そのような推論の様式の差が自由を支持する程度と関係した。研究2(小学4年生,6年生,中学2年生,高校生,合計127人)では,加齢に伴い,言論の白山を社会的価値としてとらえ,聴衆への影響を低く見積もり,スピーチの中の行為をそれほど悪くないど考える傾向が示された。そして,このような評価が,自出を支持する程度に関係することが示唆された。そして,スピーチ内容の領域によって,それらは異なって関係していた。
  • 清水 武, 荘島 宏二郎
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 316-317
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
  • 西條 剛央
    原稿種別: 本文
    2003 年 14 巻 3 号 p. 318-320
    発行日: 2003/12/05
    公開日: 2017/07/24
    ジャーナル フリー
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