発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
31 巻, 1 号
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原著
  • 渡邉 賢二, 平石 賢二, 谷 伊織
    2020 年 31 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学5年生から中学3年生とその母親1612組を対象に,母子のペアデータを用いて,母子が認知する養育スキルと母子相互信頼感,子どもの心理的適応の関連について検討した。母親と子どもが認知する養育スキル尺度について,因子分析を実施した。その結果,母親と子どもの双方に理解尊重スキルと道徳性スキルの2因子を得ることができた。また子どもの学年別と性別による2要因分散分析の結果,母親は,道徳性スキルと母子相互信頼感において中学生より小学生の得点が高く,性別においては,理解尊重スキルと母子相互信頼感について男子より女子の得点の方が高かった。子どもは,すべての尺度で中学生より小学生の得点の方が高く,性別においては,理解尊重スキル,道徳性スキル,母子相互信頼感について男子より女子の得点の方が高く,自尊感情については女子より男子の得点の方が高かった。最後に多母集団同時分析を用いて媒介変数モデルを検討した結果,性別,小学生中学生に関わらず,母子が認知する理解尊重スキルは母子相互信頼感と子どもの心理的適応に影響を及ぼし,母子相互信頼感は子どもの心理的適応に影響を及ぼしていた。母子双方が認知する理解尊重スキルと母子相互信頼感,また媒介変数モデルの重要性が示唆された。

  • 直原 康光, 安藤 智子
    2020 年 31 巻 1 号 p. 12-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,別居・離婚後の父母葛藤や父母協力が,父母の別居・離婚に伴う心理的苦痛を媒介して,青年・成人の心理的適応に与える影響を明らかにすることであった。6歳から15歳までに父母が別居し,母親と同居することになった現在18歳から29歳までの男女275名を分析対象とした。別居・離婚後の父母葛藤や父母協力,父親との交流が,父母の別居・離婚に伴う心理的苦痛や現在の心理的適応に影響を及ぼすという仮説モデルに基づき,男女で多母集団同時分析を行った。分析の結果,別居・離婚後の父母葛藤は,子どもの葛藤受け止め,父母の別居・離婚に伴う心理的苦痛を表す「自己非難」や「子どもらしさの棄却」を媒介して,自尊感情や抑うつ・不安との関連が認められた。また,別居・離婚後の父母の協力は,「父との交流実感」や「母の情緒的サポート」を媒介して,「自己非難」や「子どもらしさの棄却」との負の関連が認められるとともに,自尊感情や抑うつ・不安との関連も認められた。最後に,男女で有意差が認められたパスについて,それぞれ考察を行った。

  • 畑野 快, 杉村 和美, 中間 玲子, 溝上 慎一, 都筑 学
    2020 年 31 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,青年前期,中期,後期及び成人初期にかけての大規模横断調査に基づき,アイデンティティの統合・混乱の感覚の発達傾向と人生満足感との関連を明らかにすることであった。調査対象者は,12–25歳の青年・成人14,428名(女性55.2%)であった(M age=20.55歳,SD age=4.13歳)。まず,年齢群を独立変数,アイデンティティの統合・混乱の感覚を従属変数とした多変量分散分析を行った結果,青年期前期・中期群は,青年期後期・成人期初期よりも統合の感覚が高く,混乱の感覚が低い傾向にあった。次に,アイデンティティの感覚に基づき青年・成人をクラスター分析によって類型化したところ,統合と混乱の高低から4群が抽出され,青年期前期・中期群は統合の感覚が高い群に,青年期後期,成人初期群は混乱の感覚が高い群に分類される傾向にあった。さらに,統合・混乱と人生満足感との相関係数を年齢群別に確認したところ,全ての年齢群において統合は人生満足感と正の関連を,混乱は負の関連を示した。最後に,アイデンティティの類型ごとに青年・成人の人生満足感の得点を分散分析によって比較したところ,統合の得点が高い群ほど人生満足感の得点が高いことが示された。以上を踏まえ,本研究の意義と今後の課題について検討を行った。

  • 高橋 登, 中村 知靖
    2020 年 31 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

    音韻意識は読み習得の前提であり,音韻意識の弱さがそのつまずきにつながることから,音韻意識の適切なアセスメントは読みの習得支援にとって重要な課題である。ところが日本では標準化された検査が存在せず,研究ごとに異なる課題が用いられてきたことから,本研究では,項目反応理論に基づく日本語音韻意識検査を作成することを目的とした(研究1)。問題はタッピング,抽出,逆唱,置き換え,特殊音節のタッピング(拗音,促音,長音)の7種類の課題からなる。幼稚園年少児~小学校1年生の計875名の結果から,問題ごとの困難度・識別力を算出し,計88項目を項目プールとし,既存の適応型言語能力検査(ATLAN)に実装した。次に,音韻意識と他の言語能力との関係を検討した。研究2では,幼稚園年中児~小学校1年生計163名を対象として横断的に,研究3では年中児25名を対象として縦断的に,音韻意識と平仮名の読み,および語彙・文法の能力との関係を分析した。その結果,これまでの研究同様,音韻意識は平仮名の読みを説明する要因であることが確認されたが,それだけでなく,語彙や文法のような他の言語能力との間にも関連があることが示唆された。さらに,縦断研究の結果から,音韻意識が後の語彙や文法発達を促進することが示唆され,音韻意識を身につけることによって高まったメタ言語能力がそれを可能にしていると考えられた。

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