適正な公共インフラ政策についての世論形成やそれに基づく政策判断を促すためには,公衆一人一人の事実情報の認識形成のプロセスについての知見が重要な基礎的知見となる.本研究ではこうした認識に基づき,「公共政策におけるキッチュ」の存在についての心理実証実験を行った.これは,「明らかな危険性を含んだ公共政策を,崇高にして達成可能な美しい理想のごとく絶対化し,そのような姿勢をとるうえで都合の悪い一切の事柄を,汚物のごとく見なして排除したがる態度」という,特定事実を無視する不合理かつ不条理な態度を意味する.本研究では「公共事業の縮小」「緊縮財政」「新自由主義的な改革推進」の三つの政策について「キッチュ」の存在を確認する心理学実験を行い,その存在を実証的に示した.
欧米を中心に,ワンウェイ型カーシェアリングは広く普及しており,それを導入する都市も拡大している.にもかかわらず,ステーションベースのカーシェアリングサービスの成功例として,一時,世界的に知られていたAutolib’は2018年7月末にサービスを中止した.本研究では,インタビューや文献調査,オープンデータの分析から,その原因について考察した.また,これらの分析結果を参考にしながら,利便性と収益性の視点から,ワンウェイ型ステーションベースのカーシェアリングサービスを我が国に導入する際のステーションの配置と適切な事業規模について検討を行うこと,料金政策による車両偏在問題の緩和の可能性について検討することを目的とする.
グローバル・サプライチェーンを構成する重要インフラである国際海上コンテナ輸送の遅れが大きくなってきている.2018年には,全コンテナ船の定時到着率が約2/3まで低下した月もあり,長距離の東西基幹航路はさらに定時性が低いと見られる.このような背景の下,本研究は,航路サービス別の定時性を詳細に把握し,その結果より,遅延を生じさせている要因について分析を行ったものである.その結果,基幹航路全体で定時到着率は7割を切っており,遅延の8割弱が中国及び欧米での港湾で発生していることが明らかになった.中国ではほとんどの遅延が着岸前に発生していた一方,欧米では主に着岸中に遅延が発生していた港湾や着岸前及び着岸中の両方で遅延が発生している港湾も見られた.