脳機能データの分析から聴覚情報による認知効果の向上が確認され,トンネル内におけるスピーカーを用いた音声による注意喚起システムが開発された.今回,このシステムを用いて従来視覚情報で行っていた渋滞時の速度回復情報提供を,国内で初めてスピーカーを用いた音声案内で実施した.本研究では,システムの概要と小仏トンネルへの適用方法を示すと共に,車両感知器によるデータとETC2.0プローブデータによる走行履歴データを用いて音声情報の有無による効果を検証した.その結果,例えば音声情報が有ることによりボトルネックの渋滞発生時交通量が約8%増加し,渋滞中の平均速度が約10%高くなることや,渋滞発生確率が低下すること等を明らかにした.また音声案内によるボトルネック付近の速度上昇効果が上流側にも及んでいることが推察された.
本研究では,熊本都市圏を対象に,2回のパーソントリップ調査データからクルマの移動と駐車時間,ゾーン別の流入・流出台数の実態,およびその経年変化を明らかにした.また,熊本市都心部における適正な駐車容量を,独自に開発した駐車シミュレーションモデルと待ち行列理論により算出した.さらに,駐車時間が大幅に減少するであろう自動運転カーシェアリングサービスSAVs(Shared Autonomous Vehicles service)が普及した後の自動車類による適正な駐車容量を試算した.その結果,熊本市の多くのゾーンで駐車台数は減少していること,現在でさえ,都心部では駐車容量は供給過剰であり,SAVsの普及によりさらに過剰になることが明らかになった.これらの成果は量的供給量だけでなく,その位置や場所の適正化を図る今後の駐車場施策に有用な示唆を与える.
交通円滑化対策の評価などのための時間帯別交通量推計モデルを実ネットワークへ適用するに当たっては,これに入力する精度の高い時間帯別OD交通量の予測が不可欠である.このために先行研究においては,観測リンク交通量からの地域別方向別の時間変動係数逆推定モデルが開発されている.しかしこのモデルは発時刻ベースで時間帯別OD交通量を直接的に推定できないことや,部分的に過剰な時間変動がみられることなどの課題が挙げられた.よって本研究では,これらの課題に対応して時間帯別OD交通量を予測可能なモデルを構築した.適用計算の結果,日OD交通量の少ない地域ペアで部分的に生じていた時間変動パターンの過剰な変動を,重み係数の導入によって適度に抑制することができ,さらにリンク交通量の推定精度を改善できることがわかった.
熊本市中心部にあるバスターミナルと商業施設,ホテル,大規模ホールから成る大規模複合施設SAKURA MACHI Kumamotoの2019年9月14日のグランドオープンにあわせて,「熊本県内バス・電車無料の日」という,県内の公共交通を終日無料化する交通社会実験が行われた.本論では,この社会実験に合わせて産・官・学によって組織されたSAKURA MACHI DATA Projectにより,公共交通利用者数の変化,商業施設や市街地への回遊行動の拡大,道路交通混雑の緩和,地域経済への波及効果などの種々のインパクトを,様々なデータソースを活用して計測・推計し,それらを分析した結果を報告する.
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