土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
76 巻, 3 号
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和文論文
  • 柿田 公孝, 秀島 栄三
    2020 年 76 巻 3 号 p. 203-222
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,臨海部再開発に対する港湾計画制度の問題点,限界に着目し,その改善方針について考察を行った.具体的には文献調査および港湾管理者へのアンケート調査の結果をもとに過去の再開発の事例を様々な観点から分析するとともに,再開発前後の計画の整合性に関して分析し,採られてきた計画手法に対して制度的枠組からの問題点を明らかにした.結論として臨海部再開発は,開発規模80~100ha未満,事業費1,000億円未満であることが港湾計画の目標年次内に事業が完了する一つの目安として参考にできることが明らかとなった.加えて港湾計画制度の改善方針として,再開発を港湾計画に位置づける際には事業着手時期,完了時期,実施主体および計画の達成見込み等を計画事項に盛り込む仕組みづくりが重要であることを指摘した.

  • 清水 廉, 長江 剛志
    2020 年 76 巻 3 号 p. 223-235
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,企業と家計の相互作用によって複数都心の創発を説明するFujita and Ogawa (FO)モデルに対し,大規模な2次元空間にも適用可能な効率的解法を開発することである.まず,FOモデルが二次計画問題に帰着することを示し,これがBenders原理によって,(i) 企業立地パターンを求める“マスター問題”と (ii) 家計の立地・通勤パターンを求める“サブ問題”とに分解できることを明らかにする.次に,(本来ならば立地点数の二乗のオーダーの未知変数をもつ)サブ問題に対し,そのHitchcock型輸送問題との等価性を利用して,実質的な未知変数の次元が立地点数オーダーで済む効率的解法を開発する.最後に,数値計算により,提案手法が,立地点数が20,000を超えるような大規模な問題に対しても実用的な時間内に求解できることを明らかにする.

  • 小林 渉, 福田 大輔, 岩倉 成志
    2020 年 76 巻 3 号 p. 236-250
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,旅行時間信頼性評価の代表的アプローチの一つであるスケジューリングアプローチに立脚して,都市鉄道の列車遅延及び定時性の経済便益評価を行うための分析枠組を構築した.“旅行時間変動”と“運行ダイヤからの列車発着の乖離”を明示的に考慮してスケジューリングアプローチの拡張を行い,東京圏鉄道通勤者の実行動データと列車運行実績データを統合的に活用して鉄道乗車時刻選択モデルのパラメータ推定を行った上で,旅行時間変動価値を推計した.更に,ケーススタディとして通勤者の始業時刻分散施策の評価を行った.具体的には,鉄道乗車時刻選択モデルと列車運行シミュレーションを用いて行動変化予測を行い,既存研究を参考に時間価値を設定して施策の利用者便益を試算したところ,約23円/(人日)という試算結果が得られた.

  • 井上 亮, 石山 里穂子, 杉浦 綾子
    2020 年 76 巻 3 号 p. 251-263
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     不動産価格の形成要因やその評価は地域により異なるとされ,不動産市場は地理的に分割されていると考えられている.本研究は,マンション賃料データに基づき賃貸マンション市場の地理的区分の実態を把握することを目的に,場所によって異なる賃料形成を表現できるよう地域別のパラメータを設定した賃料モデルに対し,スパースモデリング(generalized fused lasso)による変数選択を通した分析アプローチを提案した.東京都区部を対象とした分析を通して,賃貸マンション市場は,区,および,鉄道沿線や駅勢圏,町丁目など,様々なスケールの空間領域によって異なる賃料形成が行われている実態を抽出し,提案したスパースモデリングを活用した分析アプローチの有効性を確認した.

  • 長江 剛志, 赤松 隆, 清水 廉, 符 皓然
    2020 年 76 巻 3 号 p. 264-281
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,経路と出発時刻を同時に選択する動的利用者均衡配分 (DUE-SDR: dynamic user equilibrium with simultaneous departure time and route choice)モデルの解法を開発する.具体的には,まず,一起点多終点もしくは多起点一終点の一般ネットワークを対象とし,待ち行列の物理的長さを捨象したpoint-queueモデルを用いて渋滞を表現する枠組を示す.この枠組の下で,DUE-SDRモデルを混合線形相補性問題として定式化する.次に,こうして定式化された問題が,適当な離散時点の枠組下で等価な二次計画問題に帰着することを明らかにし,これをFrank-Wolfe法を用いて解くアルゴリズムを開発する.最後に,提案解法をSioux-Fallsネットワークに適用し,未知変数が数万個に及ぶ問題に対しても,実用的な時間内に均衡解が求められることを示す.

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