土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
72 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 井上 亮, 杉浦 綾子, 米山 重昭, 中西 航
    2016 年 72 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/20
    ジャーナル フリー
     不動産市場の透明性向上を実現すべく価格情報の更なる整備と公開の必要性が叫ばれ,国により新たな情報提供施策が推進されてきた.しかし,現在公表されている公示地価をはじめとする公的地価指標や不動産取引価格情報から,一般の市場参加者が市場動向を把握することは容易ではない.
     本研究では,空間統計手法に基づく任意時点・地点の公的地価指標内挿値の算出,得られた公的地価指標内挿値と市場取引価格の比較による取引価格水準情報の作成,および,その分析結果を情報提供するWebサービス試行版の構築を通し,新しい地価情報の提供手法を例示する.本研究の提案手法は,不動産の専門家ではない一般市民に対しても分かりやすく不動産市場動向を伝えることができると期待され,より透明性の高い健全な不動産市場の構築に寄与できると考えている.
  • 上野 靖晃, 吉田 護, 北園 芳人, 柿本 竜治, 星出 和祐
    2016 年 72 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,熊本県内の自主防災組織の代表者に質問紙調査を実施し,ロジスティック回帰分析や共分散構造分析を用いて組織活動を構造化し,組織活動を充実させるための適切な組織ガバナンスについて政策的示唆を得ることを試みる.なお,質問紙調査においては,組織活動に積極的な主要メンバー数や地域減災活動の実施状況,緊急時の活動マニュアルの作成状況,活動責任者の選定状況などについて尋ねている.結果として,主要メンバー数が多い自主防災組織ほど活動責任者を選定していることが示された.さらに,活動責任者を選定している自主防災組織ほど地域減災活動を実施し,緊急時の活動マニュアルの作成を行っていることが示された.
  • 紀伊 雅敦, 中村 一樹
    2016 年 72 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/20
    ジャーナル フリー
     都市拡大は生物多様性や地球温暖化を含む環境問題に多大な影響をもたらすと考えられている.本研究ではAlonsoの単一中心都市モデルに住宅開発部門を導入した都市モデルを作成し,これを世界約3600都市に適用する.本モデルは土地市場と床市場を分離することで建築生産性の分析を可能としている.このモデルを用い,まず2000年の市街化データと整合的な都市別の交通コストを逆推計した.次に将来の社会経済シナリオ,およびそれと整合的な交通コストシナリオを設定し,2050年までの都市面積を推計した.また,建築生産性向上と交通コスト低減シナリオを設定し感度分析を行った.その結果,人口増加と経済成長は都市拡大に多大な影響をもたらすことが示され,また建築生産性の向上は都市拡大を抑制し,交通コストの削減は都市拡大を促進することを示した.
  • 水谷 大二郎, 小濱 健吾, 貝戸 清之, 小林 潔司
    2016 年 72 巻 1 号 p. 34-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設の劣化状態は,複数の劣化事象に着目して多元的に評価される.さらに,複数の劣化事象の間には相互作用が存在する可能性がある.本研究では,複数の劣化事象間の相関関係を考慮した社会基盤施設の多元的劣化過程モデルを提案する.具体的には,個別劣化事象の進展過程を異質性パラメータを導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを用いて記述する.さらに,個別劣化事象の劣化速度の異質性をガンマ分布により表現するとともに,劣化事象間の異質性相関構造をアルキメディアン・コピュラを用いて表現した多元的劣化過程モデルとそのベイズ推定の方法論を提案する.最後に,高速道路のジョイント部材に対する実点検データを用いた適用事例を通して本研究で提案する手法の有用性について考察する.
  • 溝上 章志, 藤見 俊夫, 梶原 康至
    2016 年 72 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
     バス事業者と利用者が新たなサービス改善の取組による採算ラインを予め設定し,それを下回った場合には事業者はその取組を止めるという契約に基づき,バス料金の値下げや路線新設などを行うバストリガー制が注目されている.本研究では,金沢大学と北陸鉄道とで結ばれたバストリガー契約を,両者がこの契約に協力するか協力を放棄するかという長期間のゲームと捉え,1) 無限繰り返しゲームに準じたシミュレーション技法を用いて,金沢バストリガー契約に対する両者の最適な戦略と実際の戦略との関係について考察を行うこと,2) バストリガー制度を長期に渡って継続させていくための適切な運賃水準と目標収支の設定を行い,バストリガー制の導入,維持可能性を検討することを目的とする.
  • 氏原 岳人, 阿部 宏史, 村田 直輝, 鷲尾 直紘
    2016 年 72 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市内部に空き地や空き家が多孔質状に発生する都市スポンジ化の実態を,人口が減少する地方都市の全域及び都市整備手法に着目して把握した.主な分析の結果,1)人口が減少する一方で,都市全体でみると郊外化が進んでいる,2)地方都市の中心部と郊外縁辺部で都市スポンジ化が相対的に高く発生している,3)わが国の多くを占めるスプロール市街地は,相対的に世帯が減少しやすく,都市スポンジ化が顕在化する可能性が高い.特に,利用意向もなく空き家を放置する形で衰退する特徴がある(使い捨て市街地),その一方で,4)土地区画整理事業の実施地域は,土地の流動性が高く,循環しながら活用される傾向にあること(リサイクル市街地)等が,統計分析や現地調査から明らかになった.
  • 石倉 智樹, 木村 祐太
    2016 年 72 巻 1 号 p. 73-87
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,港湾や国際空港が立地する地域と,その後背地域の産業構造の異質性を明示的に考慮し,国際交通政策と国内交通政策の両方を同時に評価可能な空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを構築した.本モデルでは,輸出入に関連する産業が,港湾や国際空港に近接するという立地特性を明示的に考慮されるとともに,国内の地域間輸送における輸送コストも扱われている.また,実際の産業連関表から,本モデルのキャリブレーションが可能な基準均衡データを作成する方法例についても提示し,東京都産業連関表を用いた数値シミュレーションにより,モデル出力の挙動について分析した.
  • 谷本 圭志, 土屋 哲
    2016 年 72 巻 1 号 p. 88-98
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,地方ではモータリゼーションの進展や人口減少の影響により,公共交通や医療機関,商業施設が供給するサービスの縮小が相次いでいる.これに伴い,活動する際に住民が選択できる時間や目的地が減少しており,活動の機会への制限がより厳しくなっている.このような地域では,住民の活動機会を確保するための政策・事業を講じることが自治体の重要な課題となっている.具体的な政策等を検討するに際しては,どれだけの活動機会を確保しうるのかを定量的に把握することができれば,その目標の設定や効果の評価に有用である.そこで本研究では,各地域に確保されている活動機会を時間と目的地の観点から評価するアクセシビリティの指標を開発するとともに,その有効性を確認する.
  • 織田澤 利守, 中村 優太, 鳥尾 健太, 小池 淳司
    2016 年 72 巻 1 号 p. 99-112
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,被災による企業の撤退を明示的に考慮した産業集積モデルを構築し,均衡における産業立地構造の性質ならびに交通インフラの減災施策が及ぼす影響について分析を行う.数値分析を通じて,均衡における産業立地構造が過剰集積となり,災害に対して脆弱であることを明らかにする.また,交通インフラの減災施策が(功利主義的な)社会的厚生を改善するものの,必ずしも災害脆弱性の低減に寄与するとは限らないことを示す.さらに,分析より得られた知見として,交通インフラ減災施策の便益評価に際して留意すべき点について述べる.
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