本研究では,首都圏高速道路網における長期間観測データに基づき,渋滞パターン(空間分布・推移過程)に安定的な規則性が存在すること,およびその規則性がMacroscopic Fundamental Diagram (MFD)と対応付けられることを明らかにした.具体的には,時々刻々,道路網上で出現している渋滞空間分布は,年間を通して少数の典型的な分布タイプに限定され,その日内状態推移過程も,年間を通して少数の推移パターンに限定されることを示した.また,これらの推移パターンによってMFDの形状が異なること,およびMFD曲線上の各区間とその区間における渋滞空間分布タイプとの間に対応関係があることを明らかにした.
Fujita and Ogawa (1982)モデルは,複数都心が均衡状態として形成されることを示した都市経済学分野の代表的な集積経済モデルである.このモデルは複数均衡を持ち,中には実現不可能と考えられる不安定な均衡解も存在しうる.そのため,均衡解の安定性を吟味し尤もらしい解を選択する必要があるが,解の安定性を検証した研究は従来存在しない.本研究では,ポテンシャル・ゲームと確率安定性概念を用いて,Fujita and Ogawaモデルの安定均衡解の特性を明らかにする.空間設定を線分都市と円周都市として分析した結果,本モデルは以下の3つの特徴を持つことが示される: 1) 複数都心パターンが安定均衡解として創発する,2) 交通費用パラメータを減少させるにつれて安定解の都心数が単調減少する,3) 上記の2つは線分都市と円周都市に共通する性質である.