本研究では,ドライバーの譲り挙動を考慮した交通流シミュレーションを用いて,交通状況,道路階層,沿道立地に応じた単路部二段階横断施設の設置間隔の分析を行うことで,横断者の横断機会を増やし,かつ自動車交通の円滑性を阻害しない同施設の設置条件を検討した.その結果,幹線道路では,自動車交通量が100台/時/方向以下や,横断歩行者交通量が100人/時/方向以下であれば,二段階横断施設を50mの間隔で設置可能であるなど,従来の横断歩道の設置条件の目安値よりも短い間隔で横断施設の設置可能性を有することを示した.また,制限速度が低い非幹線道路では設置間隔が50mでも幅広い交通量条件で適用できることを確認した.さらに,横断需要が集中するバス停付近に二段階横断施設を設置する場合,100mの設置間隔が望ましいことを示した.
道路ネットワークの性能評価においてFundamental Diagram (FD)は重要な役割を果たす.FDは原理的に場所ごとに異なるため,実データに基づいた任意地点でのFD推定が望まれる.そこで本研究では,全車両軌跡データを前提として,相互に異なるFDに従う区間を特定したうえで,各区間のFDを推定する.具体的には,軌跡データが与えられた連続空間に対して,スパースモデリングを用いることで区間分割とFD推定とを同時に実行できるモデルを定式化した.これにより,分析者の先験的な知識を必要とせず,統計的もしくは実用的に適した区間数を設定可能とした.提案手法を阪神高速道路における実データに適用し,推定結果の妥当性を示した.
「居心地が良く歩きたくなるまちなか」形成に向けて,都市公園は交流・滞在拠点としての役割が求められており,その都市公園の整備・管理にあたっては,都市再生推進法人が担い手のひとつとして期待されている.そこで本研究は,全国に先駆けて,都市再生推進法人等がPark-PFI制度を活用して都市公園の整備・管理を実践する和歌山市本町公園を対象とし,和歌山市に奉職した筆者による経験,文献調査及びヒアリング調査に基づき,本町公園を核とした官民連携まちづくりの展開実態,課題及び今後の方策を明らかにした.具体的には,1)筆者を中心とした“ウォーカブルなまちづくり”のための統合的戦略の企画・推進,2)まちづくり計画区域立案に込めた行政の意図,3)まちなか回遊性向上,賑わい創出等に資する官民連携体制構築の実態や工夫点を示した.