土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
68 巻 , 5 号
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土木計画学研究・論文集 第29巻(特集)
  • 堤 盛人, 瀬谷 創
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_1-I_20
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    自然科学への応用から生まれた空間統計学(狭義には地球統計学)と地域科学・地理学における計量革命から派生した空間計量経済学は,これまで独自の発展を経てきたが,近年,社会経済データを用いた研究に後者だけでなく前者も応用されることが増えるなど,相互の交流が盛んになってきている.本稿では,二つの学問の土木計画学分野での実用化と応用の促進に寄与することを目的に,これらの分野における実証研究とそこでの課題について最新の研究動向も踏まえながら整理を行い,土木計画における「応用空間統計学(applied spatial statistics)」の可能性について論じるものである.
  • 山口 敬太
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_21-I_33
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,地域住民を主体とした景観の計画・運営のための実践理論を基礎づけることを目的とする.本論では,ベルクの風土論を基礎として風景の持続性の概念とその意義を示した上で,木岡による風景認識の構造論的な把握と動態論に基づき,「語り」による風景価値の発現と共有,実践へと展開する景観の計画・運営の理論的枠組みと方法を示した.また,風景の持続性の根拠となる通態的関係(風景の見方と構築環境の相互関係)を取り上げ,いくつかの具体的な歴史上の風景の価値づけと造景表現の関わりを示すとともに,暗黙的実践のなかからの風景の表象化の可能性について論じ,風景の持続性を支える景観研究のアプローチと課題を示した.
  • 新目 真紀, 秀島 栄三, 神田 幸治
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_35-I_43
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    幼い頃からの安全教育は生涯にわたり安全意識を身に付けさせ,非常時に対応行動を実践させるように仕向けるものである.しかしながら,教育方法や教材の不十分によりこうした教育が小中学校で十分に実施されているとは必ずしもいえない.本研究では,東京都内公立中学校の教師と生徒の協力を得て,中学校のインターネット安全教育に参加型学習を導入し,動画教材による足場がけの効果を検証した.検証によって,動画教材の活用は,インターネット上の安全に対するプリペアドネスを高めるための足場がけに寄与し,将来の安全教育への参加意識も高める可能性が示唆された.
  • 宮木 祐任, 谷口 守
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_45-I_54
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    地方分権化が進み,同時に諸政策に対してPDCAで対応することが一般化しつつある.すなわち,自治体にとって各種多様な政策分野に対し,自分で目標を定め,そして自分でそれを評価するという新たな状況が生まれている.このような自己評価によるPDCAの蓄積が果たして適切な諸政策の実施に広くつながるかどうかの吟味は不十分である.本論文ではまちづくりの多分野にわたって広く全国で活用され,PDCAをその要件とするまちづくり交付金を取り上げ,自治体の自己評価の傾向を網羅的に見ることでこの課題に応えることを試みる.評価時点における実際の評価値と目標値の差を乖離係数として新たに定義して分析を行った結果,政策分野によって評価指標の採用状況や達成状況に特徴的な傾向と課題が見られることが初めて示された.
  • 小池 淳司, 伊藤 佳祐, 中尾 拓也
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_55-I_61
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    空間的応用一般均衡(SCGE)モデルは社会資本整備の社会経済に与える波及的影響を地域別に把握できるモデルであり,実務的にも数多くの適用事例が報告されてきている.一方で,SCGEモデルは各種代替弾力性の設定に結果が依存し,特に,地域間交易の代替弾力性の設定は地域別の効果に非常に大きく影響することが知られている.しかし,その設定値は,日本をはじめ国内の地域間交易の代替弾力性について分析された事例はほとんど無く,通常は分析者が任意に設定している.そこで,本研究では各種代替弾力性に関する国内外の既往研究のレビューを行い,推定のためのデータと推定方法について検討を行う.そして,日本国内における各種代替弾力性の推定を行い,推定した代替弾力を用いたSCGEモデルでの実証分析から影響の度合いについて考察する.
  • 照本 清峰
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_63-I_74
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    海溝型地震の発生が切迫している現在,津波避難対策を検討することは,沿岸部地域にとって喫緊の課題である.地域の津波避難計画を策定するとともに,津波の危険性と避難の課題に対する地域住民の認識をより高めるためには,実践的な訓練に基づくことが求められる.本研究では,被災状況を考慮した実践的な津波避難訓練を計画・実施することによって見いだされる地域の現況の避難対策の課題,及び訓練参加者の危険性に関する認識の傾向を示し,実践的避難訓練の有効性を検討することを目的とする.本避難訓練では,道路や避難場所の一部は使用できないこと等を想定して実施し,訓練結果からは地域の避難対策の課題が導出された.また避難訓練後に実施した調査結果から,訓練の実施によって津波避難対策の必要性の認識が高まること等が示された.
  • 紀伊 雅敦, 土井 健司
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_75-I_85
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,人口減少が進む広域地方圏における持続可能な都市・交通戦略を検討する手法として,戦略代替案を俯瞰的に分析し政策統合の方向性を検討するクロスアセスメント手法を構築した.都市圏交通に加え都市間交通を考慮した新たなクロスアセスメントモデルを四国圏に適用し,中長期的視点から2035年までの期間における公共交通戦略と都市のコンパクト化のアウトカム評価と,その地域間比較を行った.
    その結果,1)現在の公共交通サービス水準を将来にわたり維持するためには公的な負担が大幅に増加すること,2)交通事業収支の改善とCO2削減は両立しうるが,便益向上と収支改善はトレードオフの関係にあること,3)都市のコンパクト化と鉄道高速化は便益向上と事業収支改善に効果があり,それらの間には相乗的な効果が見られること,を明らかにした.
  • Gaku INOUE
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_87-I_101
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    The central and local governments' incentives to invest in public infrastructure and compete for subsidies are determined by the trade-off between political benefits and economic costs, the latter depending on the extent of decentralization of fiscal authority. However, there has been a lack of attention to the role of labor mobility across jurisdictions, known to be particularly important when governments (center and local) cannot impose strict control on inter-regional migration. To analyze how the local governments determine their investment strategies to maximize the sum of welfare in the region in response to the possible policy regimes: fiscal centralization, complete decentralization and partial decentralization, I endogenize the relationship between the production labor inputs and public infrastructure provided by the central and local governments. I show that a simple model with labor mobility across regions suggests that complete fiscal decentralization and partial fiscal decentralization are not necessarily the best in terms of economic efficiency in the sense at least one local government or both local governments invest more in public infrastructure than under complete fiscal centralization. This implies that the central government is still needed to get involved in the entire process of decision making in public infrastructure provision.
  • 榎村 康史
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_103-I_110
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    洪水ハザードマップは,住民が洪水の危険性を認識し,水害時に速やかな避難を行うためのソフト対策として近年急速に普及が進んできたものの,住民の認知・理解は十分とは言い難い状況にある.洪水ハザードマップが効果を発揮するためには,住民がマップを認知・理解し,防災意識を高める必要がある.
    本研究では,洪水ハザードマップの住民認知・理解向上のための課題を整理するとともに,熊本県内市町村を対象としたアンケート調査及び洪水ハザードマップの内容分析に基づき,洪水ハザードマップの住民認知・理解向上のための取組みの実態と問題点を明らかにする.また,洪水ハザードマップ改善のための試みとして,人吉市温泉町・下林地区住民を対象とした洪水ハザードマップに対する住民評価の把握の検討を行う.
  • 小池 淳司, 右近 崇
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_111-I_119
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    東日本大震災により被災地が負った被害は甚大であるが,福島第1原発など発電所自体の被災を発端とする問題は,計画停電や電気使用制限令の発動など関東地方の電力供給不足という形で影響をもたらした.また,全国の定期点検中の原子炉を再稼動させる難しさが露呈される中で,全国的な電力不足の連鎖へと繋がることになり,日本のエネルギー政策上も難しい問題を含んでいる.
    本研究では,空間的応用一般均衡モデルを活用して,電力供給不足がどのような経済的被害を生むのかをシミュレートし,特に,本震災での被災地域である東北地方への間接被害はどの程度であるのか,あるいは,50Hz・60Hzの違い等による電力供給の地域間移動が制約されていることがどの程度の被害を生んでいるのかに着目し,定量的に把握することを目的とする.
  • 加藤 裕人, 宮城 俊彦
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_121-I_130
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,過去に実施された累次の財政政策の効果を検証し,いかなる条件の下に公共投資の効果が有効に発現するのかを分析する.具体的には,経済政策の分析ツールとして発展している動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルに民間資本,社会資本の二つの資本を導入し,時系列データを取り込んでモデルのパラメータ推定を行う.モデルには,Time-to-buildラグを伴う公共投資や,毎期の可処分所得を全て消費に回す非リカード的家計を導入する.インパルス応答分析の結果,推定期間であるバブル崩壊以降において,公共投資は一定の景気刺激効果を有していたことがわかった.また,粒子フィルタを用いてパラメータを時変推定し,社会資本の生産弾力性の低下や,近視眼的な家計行動の傾向を観察した.
  • 松下 哲明, 秀島 栄三
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_131-I_139
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    防災事業は耐震化といった被害の低減に向けた事業や,物資の備蓄といった地震発生後に向けた事業など,複数の事業を組み合わせる事が必要である.被害の低減に向けて,これらの事業が保有する異なる便益の不確実性を考慮することは重要な視点と言える.そこで,本研究はこの視点から行政のPDCAサイクルを整理し,予算配分の検討過程の有効性について検討した.その結果,異なる不確実性の考慮は十分でなく,評価者の主観に大きく影響されている可能性が示された.この状況を改善するための一つの手法として,ポートフォリオ法を用い防災事業の予算配分を評価した.これにより,事業の期待収益率と不確実性を可視化し,予算配分の協議資料が得られることを示した.
  • 溝上 章志, 川島 英敏, 大森 久光, 永田 千鶴, 野尻 晋一, 矢口 忠博
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_141-I_153
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    高齢者・障害者が地域で暮らしていくにあたり,できるだけ高いQOLを維持できるようにクリーンエネルギーを活用した充電装置等のインフラ整備や課金システムの構築,シェアリング等による電動バイク・電動車いす等の新たな活用法を検討することを目的として,日本赤十字社熊本健康管理センターが調査研究代表団体となって実施した総務省緑の分権改革推進事業「ソーラーを活用した充電装置の整備及び電動バイク・電動車いす等の新たな活用法に関する実証調査」,その中でも種々の実証フィールドで高齢者等を対象として実施した電動車いす活用によるQOL評価に関する実証調査の成果を報告する.
  • 玉置 哲也, 多々納 裕一, 今井 瑛介
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_155-I_166
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,重要インフラの一つである港湾に着目し,港湾における防災投資行動の分析を行う.一般に防災投資は,私的動機に基づいた自発的なものである.しかし,ネットワーク全体からみれば,取引相手港への影響も考慮した防災投資を行うことが最適となり,その間には乖離が生じてしまう.また,この港湾ネットワークにて防災投資を行うときには相互補完性が生じ,防災投資に関する意思決定のナッシュ均衡解が複数存在することがある.本研究では,災害債権を導入することで,私的動機に基づく防災投資とネットワーク全体からみた最適な防災投資との間に生じる乖離を改善できることを示した.
  • 伊地知 恭右, 原 文宏, 藤井 聡
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_167-I_174
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    先行研究においては,土木計画学における合意形成問題や景観問題をはじめ,多くの社会問題に対して否定的な影響を及ぼしている可能性のある個人の大衆性について,その低減を図る態度行動変容施策の一つである「良書の通読」が,一定の効果を有することが実証的に検証された.
    本研究では,大衆性低減施策を検討するうえでのより実践的な示唆を得るために,良書の通読という個人完結型の行為ではなく,社会的な「実践行為」に着目し,大学生を対象としたアンケート調査を実施した.その結果,利他的行動として捉えられるボランティア活動の経験が,個人の大衆性を低減させる傾向が確認された一方で,大衆性の高い個人においては,むしろより一層大衆性を高めてしまう可能性があることが示された.
  • 柿本 竜治, 榎村 康史
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_175-I_183
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,水害リスクの認知や洪水への備えを促す水害リスク情報の表現方法を検討することを目的としている.そこで,まず,水害リスクの高い地域を対象に水害に関する意識調査を行い,「水害への意識」と「洪水への備え」に関する因果構造分析と洪水ハザードマップの評価を行った.それらの結果を考慮して,「洪水ハザードマップ」,「30年確率表記」および「リスクのモノサシ」の3種類の水害リスク情報を作成し,住民に提示した.その結果,各提示情報の特性に応じて水害リスク認知や備えが促されることが分かった.さらに,各表現方法の特徴が活かすために,「洪水ハザードマップ」に「30年確率表記」と「リスクのモノサシ」を付加することで,洪水ハザードマップの理解度と信頼性が向上した.
  • 中村 俊之, 藤井 聡, 矢部 努, 萩原 剛, 牧村 和彦
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_185-I_196
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    モビリティ・マネジメントは「自主的」な行動変容を基本とするコミュニケーションを中心とした交通政策である.その中で職場を対象に実施される職場モビリティ・マネジメントは,個人の行動変容だけでなく,企業の行動変容を促すもの,さらには,「MM政策実施者が企業の行動変容を促していくことを促す」という,より高次の行動変容の促進も重要となる.こうした様々な次元の行動変容を促すMMの展開において,「政府」は重要な役割を担い得る存在である.本稿では,政府による職場モビリティ・マネジメントの促進の取り組みを通して,日本全国の職場モビリティ・マネジメントの全国展開において政府が果たしてきた役割を明らかにする.
  • 松村 暢彦, 尾田 洋平
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_197-I_206
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,行政職員のパーソナルネットワークとまちづくり基礎力との関連性を把握することを目的とする.そのために基礎自治体に勤務する行政職員に対してアンケート調査を実施したところ,行政職員の弱い紐帯のパーソナルネットワークは少数型,勤務地外居住地型,市民団体勤務地外行政型,勤務地内地縁型の4形態に分類できることがわかった.次に,まちづくり基礎力の要因分析を行ったところ,まちづくり経験,地域に対する関心,地域に対する感情,パーソナルネットワークが要因となっていることが示された.このことから,まちづくり基礎力向上のためには,勤務地内や勤務地外の多様な人々とのネットワークを増やすことが効果的であることが示唆された.
  • 山下 和哉, 塚井 誠人, 桑野 将司, 増田 裕元
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_207-I_221
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    過疎地域の交通支援政策に関する意識調査において,質問項目の違いが回答結果に及ぼす影響を明らかにする.具体的には,回答者の経験や認知に関する設問により,1)政策の理解が高まる,2)WTPの期待値が上昇する,という2点の研究仮説を検証する.前者については,政策への認知や経験の喚起,政策の理解などを潜在変数として共分散構造モデルを推定し,その因果構造を明らかにする.後者については,WTPモデルを構築し,4種類の調査票ごとにWTP分布を推定した上で,それらの比較により,質問項目の違いがWTPに及ぼす影響を定量的に把握する.また,回答者属性がWTPに直接的に及ぼす影響と,回答者属性が経験や認知を喚起する質問項目への回答を介してWTPに及ぼす間接的な影響を識別するために,傾向スコア法を用いる.
  • 西野 仁, 平田 晋一, 中野 敦, 原田 知可子
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_223-I_230
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    交通行動特性の変化をより正確に把握するには,同一個人に継続的な調査を行うパネル調査手法が有用である.本研究では,全国都市交通特性調査を対象に,パネル調査手法に変更した場合の影響や調査の継続性について検証した.その結果,パネルデータを活用することで交通行動特性や意識・習慣の経年変化をより精度高く把握できる可能性が改めて示された.また,意識・習慣については,全国都市交通特性調査と同様の傾向となることが示されたが,交通特性については,サンプル消耗に伴う個人属性の偏りがパネルデータに生じたことで,全国都市交通特性調査と異なる傾向となった.なお,調査項目の多さが2回目調査への参加意向や回収率に影響しないことや,参加意向が確認された場合は約90%のサンプルから住所・氏名を収集できることが明らかとなった.
  • 羽鳥 剛史, 梶原 一慶
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_231-I_239
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    公共事業に関わる意思決定問題において,他の価値とのトレード・オフを忌避する「保護価値」が介在する場合,異なる価値間の比較衡量が出来ず,適切な判断を行うことが困難となる可能性がある.本研究では,公共事業における保護価値の問題に着目し,保護価値の心的特徴を明らかにするとともに,公共事業の意思決定方式と保護価値保持者の受容意識との関連について実証的に検討することを目的とした.アンケート調査より,保護価値が非帰結主義的な義務論的ルールと関連していることを示す結果が得られた.また,保護価値保持者においては,費用便益分析によって事業が採択された場合に,その他の方法に比べて,当該事業に対する受容意識が低い傾向が見られた.最後に,本研究の結果が公共事業に関わる合意形成問題に示唆する点について考察した.
  • 永田 泰浩, 萩原 亨, 滝谷 克幸, 金田 安弘
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_241-I_250
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    著者らは道路監視用CCTVカメラの画像に画像処理を行い,視界情報として視界不良の状況を推定する視界情報提供システムを構築してきた.既存研究では,気温が0℃未満の条件においては風速,降雪量が視界情報に大きな影響を及ぼすことを確認している.本研究の目的は視界情報とこれらの気象要素の予測データを用いた視界状況の予測である.予測モデルとしては,重回帰モデルとカルマンフィルターを用いた.2010年冬期に吹雪の頻発する稚内開発建設部で蓄積した視界情報提供システムの視界に関する情報と,同期間の風速,降雪量,気温の実況データ,予測データを用いた分析の結果,1時間前の視界情報と風速,気温,降雪量の気象予測データを用いたカルマンフィルターによる予測が変化する視界情報に対する追従性が高いことが確認できた.
  • 二神 透, 池田 達朗
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_251-I_257
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,松山市消防局の救急搬送記録データの時刻の信頼性に着目し,プローブデータと救急搬送記録データの時刻を比較することによって,救急搬送記録データの時刻の信頼性を検証した.検証の結果,救急搬送記録データの信頼性が示され,救急搬送記録データを用いて種々の分析が可能であることが明らかになった.次に,処置時間に影響を及ぼす要因を,処置項目,症例項目に着目し,分析を試みた.それらの結果,傷病程度,意識障害レベル,固定処置の有無が影響していることを統計的に示すことができた.
  • 田中 晃代
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_259-I_265
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,市議会議員の「まちづくり活動」に着目し,まちづくり活動に関する活動実態と思考パターンをもとに「参加型まちづくり」における市議会議員の役割を提示するものである.議員の活動実態については,「都市」「福祉・保健」「環境」「防災・防犯」の分野が多く,7割が地域活動や市民活動に従事していた.また,行政が設置するフォーラムや協議会にも出向くなどして「参加型まちづくり」に関わりを持っている議員も3割存在していることがわかった.さらに,議員の思考パターンを分析したところ,6つの因子(地域性,開示性,専門性,市民力,用語性,合議制)を見出した.以上のことから,市議会議員は,市民の活動を育て,現場の経験を活かして議会に役立てる等の役割があることがわかった.
  • 西村 泰紀, 梶谷 義雄, 多々納 裕一
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_267-I_276
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    大地震等の自然災害では,サービスの供給停止に加え,消費者の需要減少によっても産業部門に被害が生じる.特に観光産業では,直接的な被害が比較的少ない地域においても需要が減少することもあり,需要減少の影響が大きいとされる産業である.このような需要減少の背景には,被災地におけるサービス水準に関する情報の不確実性や娯楽を回避する心理的要素など様々な要因が考えられるが,そもそもこうした需要減少の規模や実態自体が十分に把握されていない.そこで,本研究では,観光需要の減少の時間的継続性や影響範囲の空間的な拡がりを定量的に把握するための分析フレームを検討し,既往災害における観光入込客数の変化を対象に実証分析を行う.
  • 岡村 健志, 那須 清吾
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_277-I_284
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    交通問題解決を目的として,ITSがどの程度問題を解決できたか,その評価を可能とするプロセスとして,地域の意識に基づいたロジックモデルの導出とそれを用いた効果計測のプロセスを提案した.また,トンネル歩行者問題を例に取り,その有効性を検証した.その結果,地域の意識を元にロジックモデルを導出することで,地域が解決したい問題の構造とITSの効果の発現対象を論理的に示せた.また,ロジックモデルに従って,地域の意識を計測することで,定量的にITSの効果を量る可能性を示した.
  • 森本 涼子, 伊藤 圭, 山本 充洋, 加藤 博和, 柴原 尚希
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_285-I_290
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    運輸部門における低炭素化を進めるための基礎情報として,低炭素な交通手段と言われる自転車および公共交通機関がどの程度のCO2削減効果を有するかを,Life Cycle Assessment (LCA)を用いて推計する方法を構築し,評価する.評価に際しては,各交通手段を車両とインフラから構成される一体的なシステムと捉え,各交通機関を既存道路上に導入した場合のCO2削減量を算出する.その際,車線数の減少による道路混雑の増加と,旅行速度の低下を考慮する.分析の結果,自転車のライフサイクルCO2は,乗用車に比べ人kmベースで8~9割低く,公共交通機関についても,利用者数の増加によって自転車と同等の排出量となった.しかし,道路区間全体の排出量を削減するためには,乗用車利用から約2割の転換が必要となることが示された.
  • 松本 俊輔, 上坂 克巳, 大脇 鉄也, 古川 誠, 門間 俊幸, 橋本 浩良, 水木 智英
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_291-I_303
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    全国の幹線道路における交通調査に用いられる調査区間は,調査の種類や年次により区間設定の方法が異なることが多く,調査結果の相互利用や比較分析に多大な労力を要している.また,従来の方法は,実務者による交通調査結果のネットワークレベルでの分析,区間データの効率的な更新には適していなかった.
    そこで,本論文では,これらの課題を解消すべく,各種交通調査・分析のニーズに適合し,普遍的で分かりやすく,長期安定性に優れ,データの更新も容易な交通調査基本区間標準,並びにそれから一義的に生成される基本交差点標準を提案し,その具体的内容を示した.なお,提案した交通調査基本区間標準は,平成22年度道路交通センサス一般交通量調査に適用しており,適用による調査の効率化,調査結果の分析の高度化・効率化の内容を併せて示す.
  • 尹 鍾進, 井上 恵介, 江守 昌弘, 郡 佑毅
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_305-I_313
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    海外では,自動車の交通機能を主とした道路計画から脱却し,歩行者や自転車,公共交通など様々な利用者や道路機能を活かしてリアロケーションなどの道路空間整備が進められている.一方国内では,道路空間再構築や自転車通行環境整備などについて一部検討されているが,その計画立案手法が未確立であり,道路利用者のニーズに応えることはできていない.本研究は,既往道路空間の再構築に向けた,日本における道路空間計画手法の立案を目指すものである.本論では,交通流動分析により,道路空間再構築を実施した場合の道路交通への影響検証を行い,実現可能性を考察した.その結果,今回の検討地域では,道路空間再構築により車道の走行性が低下した場合でも,TDMに伴い自動車交通が転換した場合には,大きな交通影響は発生しないことが予測された.
  • 森田 哲夫, 入澤 覚, 長塩 彩夏, 野村 和広, 塚田 伸也, 大塚 裕子, 杉田 浩
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_315-I_323
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    全国の自治体において市民アンケート調査が実施されており,調査票には自由記述欄が設けられている場合が多いが,これまで定量的な分析が十分行われているとはいえない.本研究は,自然言語処理分野で研究が進められているテキストマイニング手法により,自由記述データを定量的に分析し,都市のイメージを明らかにする方法を検討することを目的とする.
    前橋市の利根川左岸の居住者を対象とするアンケート調査データを用い,自由記述データとプリコードデータである生活質の満足度との関係を分析した結果,満足度に応じた自由記述内容の傾向を把握した.また,語と語の共起関係を分析することにより,居住者が抱く都市のイメージについて,自由記述データから定量的に把握する1つの方法を示した.
  • 澤崎 貴則, 藤井 聡, 羽鳥 剛史, 長谷川 大貴
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_325-I_337
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    まちづくりにおいて有益な知見を得る方法として,これまでは自然科学的な手法による定量的な分析が多く行われてきたが,まちづくりに関わる人々の思いを理解するためには,「物語」を解釈するという解釈学的な方法論を用いることが不可欠となる.本研究では,埼玉県川越市にて進められている「交通まちづくり」を対象として,交通問題の解決に向けた合意形成プロセスについて考察するため,関係者へのインタビューや会議傍聴等を行い,収集した個々人の語りからまちづくり全体の物語を構成し,その解釈を行った.その結果,町並み保全の取り組みからつながる交通に対する問題意識の共有化,あるいは交通問題の検討に向けて基本的な合意がなされていたことが,交通まちづくりを進展させていく重要な要素であることが示唆された.
  • 長尾 征洋, 青野 隆仁, 戸川 卓哉, 加藤 博和, 佐野 充
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_339-I_348
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    都市のコンパクト化を進める上で,都市的利用を中止する地区および集結する地区の選定を,QOL(Quality Of Life)指標および市街地維持費を評価値として選定し,遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を行った.新潟県旧上越市に適用した結果,QOL最大化の場合,郊外から郊外へ移転し,特に大型病院のある地区や緑地の豊富な地区への集結が最適であることが示された.一方,市街地維持費最小化の場合,地価が低く築年数が経過している住宅の多い地区から撤退し,鉄道駅周辺や商業施設の充実した幹線道路沿線へ集結することが最適であることが示された.さらに,QOLと市街地維持費を共に考慮する両立モデルでは,市街地維持費削減効果の大きい地区から先に撤退し,その後QOLの向上につながる移転を行うことが最適であることが分かった.
  • 小池 淳司, 佐藤 啓輔
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_349-I_361
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    地方部での観光行動は,自動車への依存度が高いことから,交通ネットワークの変化が観光行動,更には観光産業へ与える影響を計測することは,地方部における観光振興策の検討にあたって非常に重要である.本稿では交通ネットワークの整備レベルの変化が,基礎的自治体の観光産業へ与える影響を空間的応用一般均衡モデルを活用し空間的に把握することで,地方部における観光振興策の検討に資する基礎情報を提供することを目的とする.その際,我が国では基礎的自治体レベルで統一された観光統計が十分整備されていないことから,分析に必要な観光産業の付加価値額を推計しモデルにインプットすることで,観光産業を明示化した分析を行う.
  • 溝上 章志, 高松 誠治, 吉住 弥華, 星野 裕司
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_363-I_374
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,空間構成指標やアクセシビリティ指標,沿道土地利用指標,および来街者回遊行動などのデータを収集して管理し,これらを組み合わせて歩行者通行量を予測するモデルの構築や歩行者動線の改善施策が及ぼす効果を総合的に評価することができるGISを用いた分析フレームワークを提供した.また,上記の指標と歩行者通行量や入込者数との関係を明らかにした.その結果,街区や街路網の空間構成,主要な施設の適正配置,沿道床利用の適正化など,来街者による回遊行動の活発化に寄与する施策をデザインする必要性を提言した.
  • 有村 幹治, 猪股 亮平, 田村 亨
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_375-I_382
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,北海道の地方都市である帯広市を対象として,ゾーン別居住者の世代構成と建物の建築年齢分布状況から,2010年から2030年までのゾーン別将来人口分布と住宅居住人数の空間分布を推定することにある.そのために,「都市計画基礎調査」データと,帯広市が公開している「条・丁目・町別・男女別・年齢別人口」データを統合した.また,コーホート要因法を用いることで人口減少下にある将来都市人口と建物の各種空間分布の推計を行った.結果的に抽出された将来の帯広都市圏の人口減少地区の分布から,今後の都市のリノベーションの方向を考察した.
  • 戸川 卓哉, 加藤 博和, 林 良嗣
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_383-I_396
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    環境・経済・社会のトリプルボトムライン(TBL)の観点から都市・地域の持続可能性を評価するシステムを用いて,名古屋都市圏を対象に小学校区単位での分析を行った.その結果,今後2050年にかけてTBL各指標の都市圏全体平均値はいずれも悪化する方向に推移することが分かった.また,TBL各指標の空間分布を定量的に明らかにすることで都市圏全体の持続可能性を損なうリスク要因を分析した.分析結果からは,特に団塊の世代が多く居住する郊外住宅地区や農業地区・山林地区において経済・環境指標に顕著な悪化が生じ非効率化していくことが示された.さらに,経済・環境指標の小学校区間格差は拡大する方向に推移することが分かった.以上を踏まえて,都市空間構造改編に関するシナリオを設定し,TBLの各指標への影響を評価した.
  • 木梨 真知子, 金 利昭
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_397-I_406
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,アンケート調査を通して居住者がいかなる場面で住み替えを検討し,終の棲家の選択に際してどの程度の潜在的な住み替えニーズがあるか精査することを目的としている.茨城県日立市を事例とした分析から,近隣自治体と比較して生活利便性は低いものの住民の大半が定住志向であることを示した.しかしながら,これまでに住み替えの検討機会は度々あったことが確認され,介護・看護の享受を想定した際には将来的に住み替えを必要としない明確な定住意向者はわずか24.9%に過ぎないことが明らかとなった.一方,潜在的に住み替えニーズを有している世帯も多数存在するが,住み替えに伴う多様な制約要因を抱えているがゆえに終の棲家に対して妥協的な判断をせざるをえない状況にあり,住居選択の理想と現実の間に乖離があることを明らかにした.
  • 西村 卓也, 高松 誠治, 大口 敬
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_407-I_416
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    東京の街路構造は,そこで起きてきた歴史的イベントの影響を受けてその形を変えてきたと考えられる.本研究では,歴史的イベントとして明治維新,関東大震災,戦災と高度経済成長に着目し,各街路の空間機能的特性を位相幾何学的な観点から定量化できるSpace Syntax理論のAxial分析を用いて,東京の街路構造の変遷について分析し,考察するものである.
    ここでは,街路そのものが造り変わった場合に比較が難しかったAxial分析結果について,メッシュ単位で集計することにより,指標値の定地比較を可能とする定地近接性変化指数を提案する.これを用いて,東京の歴史的イベントとその都市空間形成上の意味について考察し,明治期から昭和期にかけての街路のネットワーク化などの都市形成・発展過程を明らかにする.
  • 鈴木 雄, 木村 一裕, 日野 智, 南出 拓也
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_417-I_426
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,地方都市では中心市街地の衰退が大きな問題となっている.再び,人をひきつけ賑わいを取り戻すためには,中心市街地を訪れた歩行者にとって,快適で過ごしやすい環境を整える必要がある.そのためには,歩行空間の整備とともに,休憩空間の整備も不可欠である.快適な休憩空間を整備することは,利用者にとって休息や憩いの場になるだけでなく,その空間で飲食をすることや,休憩後また街歩きをすることなどから,滞在時間の増加や歩行範囲の拡大などの効果に期待できる.ただし,一概に快適な休憩空間と言っても,利用者により快適と感じる空間は様々である.本研究では各属性ごとに,街なかに長く滞在する歩行者の行動パターンや,街なかでの過ごし方に対する意識を把握し,それらの属性による休憩空間の選好の違いについて考察する.
  • 福本 潤也, 岡本 佳洋
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_427-I_436
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    機能地域区分問題とコミュニティ抽出問題は数学的構造が良く似ている.ネットワーク科学分野で開発されたコミュニティ抽出法を機能地域区分問題に援用することにより,新たな機能地域区分手法を提案することが可能になる.ただし,ネットワーク科学では一般に地理的近接性の影響を考慮しないネットワークを分析対象とするが,機能地域区分問題では地理的近接性の影響を無視できない.本研究では,代表的なコミュニティ抽出法の一つであるモジュラリティ最大化法と代表的な空間相互作用モデルの一つであるエントロピーモデルを組み合わせた機能地域区分手法を提案する.国勢調査の市区町村間通勤データを用いたケーススタディにより,提案手法の有効性を検証する.
  • 本橋 純一, 鈴木 美緒, 屋井 鉄雄
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_437-I_444
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方都市における公共交通が将来にわたって持続性を保っていくために,市民に必要な要素と考えられる長期的な視野と利他性の2点に着目して非協力ゲーム理論を用いた分析を行った.その結果,短期的,利己的に判断すると自動車利用が望ましい場合においても長期的視野,利他性の程度によって公共交通を選択する可能性があることを理論的に確認した.さらに,2点に着目した制度を導入することを想定してその効果を分析した結果,制度の導入により市民が公共交通を選択する可能性が高まり,持続性を高める可能性があることを示した.
  • 松村 暢彦, 三宅 直
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_445-I_452
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,来街者行動を視点として,店舗間移動を促す店舗間関係をネットワーク分析し,商店街全体の店舗間移動を定量的に評価することを目的とし,阪急茨木市駅西側商店街において来街者追跡調査を実施した.その結果,スーパーマーケットなどの大規模店舗には強い集客力がある一方,衣料品小売店や食料品小売店などの中小規模店舗は,来街者の店舗間移動を促す役割を持つ存在であることが示唆された.
  • 古市 英士, 藤田 素弘, 永田 史孝, 三田村 純
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_453-I_465
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,限られた範囲に訪問施設を複数有する観光地の事例として奈良公園とその周辺地域(奈良公園エリア)を取り上げ,当該観光地への交通アクセスとエリア内周遊行動特性の分析を通して,観光振興に向けた交通支援策について考察した.まず奈良公園エリアへの来訪者アンケート調査結果を集計し,交通手段選択モデルを構築することで,アクセス交通手段の選択特性を明らかにした.次に,周遊する施設パターンを分類・マッピングし,アクセス交通手段ごとや再来訪回数ごとの各施設への周遊特性を明らかにした.さらに再来訪意識を高めるには,交通アクセス改善のための渋滞対策も効果があることをモデル構築により示した.これらより周遊行動特性を考慮しつつ交通アクセスと再来訪支援等の観点から考えられる観光交通支援施策について考察を加えた.
  • 阿部 正太朗, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_467-I_477
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,地方都市中心部における低未利用地の土地利用転換の要因を定量的に明らかにすることを目的に,2005年10月時点の中核市37都市すべてを対象に,住宅地図を用いて低未利用地データベースをGIS上に構築した.また,1995年から2005年の低未利用地面積変化の状況とその要因について公共交通整備状況や用途地域指定状況などを考慮して分析した上で,居住用地への転換要因を区画単位で分析した.
    その結果,低未利用地について,面積変化の要因分析から,1995年に低未利用地が空間的に近接している都市や,都市中心部に鉄軌道駅が整備されている都市は面積が減少していること,さらに,居住用地への転換の要因分析により,低未利用地の中でも駐車場用地は居住用地への転換に負の影響を与えていることを明らかにした.
  • 市川 嘉一, 久保田 尚
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_479-I_490
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    サステイナブル(持続可能)都市の実現が日本でも重要な課題になり始めているが,問題はそうした都市づくりを促すための実践的な評価指標の作成の経験が乏しいことである.サステイナブル都市に向けた取り組みで先行する欧州では評価指標の作成でも10年以上の蓄積がある.本研究では,ヒアリング調査と文献調査に基づき,欧州を代表する実践的な評価指標を対象にその特徴を抽出するとともに,評価指標の有効性を確認するための手がかりとなる「自治体への貢献性」を明らかにした.その結果,指標の特徴では過度な車社会からの脱却を図るための交通関連の指標を重視していることが分かった.一方,「自治体への貢献性」では新規施策の形成や行動計画策定への誘導といった対象自治体の施策・行動への影響力などが一定程度あることが確認された.
  • 眞島 俊光, 川上 光彦, 埒 正浩, 片岸 将広
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_491-I_498
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,都道府県及び指定都市等を対象としたアンケート調査等を基に,3412条例の指定状況や指定内容等の分析を行っている.その結果,3412条例は手続きの迅速化や簡素化を図る「定型開発型」の指定が多いものの,地域の実情に沿った「特別区域型」の指定を行う自治体もみられた.「特別区域型」は,既存集落や地域産業の活性化等を目的とし,定量的な基準に基づく区域指定や,地域特性に応じた建築物の用途を定める等,調整区域での計画的な規制・誘導を図る効果的な制度であることを明らかにした.一方,指定内容によってはスプロールの懸念や隣接市町村との土地利用規制の格差を生じる可能性があり,広域的な整合性を確保した調整区域の土地利用計画を示したうえで,3412条例を適切に運用していく必要があることを考察した.
  • 鄭 蝦榮, 松島 格也, 小林 潔司
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_499-I_511
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    居住地や出身地に対するアイデンティティである地域アイデンティティの存在は,人々に地域への誇りや愛着を持たせ,地域の人たちにとって共に生きがいのある生活空間を作り出すための様々な活動を促進する役割を果たす.本研究では過疎中山間地域におけるおつきあい行動を分析し,地域アイデンティティの形成との関係を明らかにする.文献レビューを通じてアイデンティティ概念を整理するとともに,人々が形成している人的ネットワークとの関係を明らかにする.さらに,共分散構造モデルにより地域アイデンティティとおつきあい行動との関係を明らかにするとともに,過疎地域振興のためのアイデンティティ向上に関する政策を提言する.
  • 朴 東旭, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_513-I_521
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,世界の都市では,都心商業地区における自動車の流入抑制や歩行者空間の整備など,賑わいの創出を目指す取り組みが実施されている.しかし,この取り組みの影響や道路の空間要因と賑わいの関係は十分明らかにはされていない.本研究は,歩行者空間が整備されている歴史的都市の中でも,京都とソウル,そしてフィレンツェの都心商業地区の現地調査に基づいて,賑わいの要因構造を分析した.その結果,本研究で定義する賑わい度は,歩行空間に関する要素と正の関係,駐車駐輪に関する要素と負の関係にあることを明らかにした.また,賑わいの要因構造は,3都市全てで,歩行空間の状況を表す潜在変数が,賑わい度に正の影響を,駐車駐輪の存在を表す潜在変数に負の影響を及ぼしていることを明らかにした.
  • 中山 晶一朗
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_523-I_539
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    土木計画の対象は人間がかかわるシステムであることが大半である.したがって,人間の行動をどのように取り扱うのか,さらにはどのような人間行動を前提とするのかが決定的に重要となるであろう.サイモンの限定合理性の概念は人間行動の捉え方に大きな影響を与えてきた.本稿では,サイモンの限定合理性を解説し,それを土台に人間行動が集合したシステムの捉え方を考察する.そして,完全合理性の仮定からは状態記述的にシステムを捉えられることが導かれる一方,限定合理性の前提からはプロセス記述的に様々なシステムを捉える必要があることを明らかにする.また,サイモンが組織現象の研究などを通して解明した計画およびその性質について明らかにする.以上を踏まえ,土木計画へのインプリケーションとしてのプロセス記述について考察する.
  • 植田 拓磨, 山室 寛明, 谷口 守
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_541-I_550
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    ネットショッピングの市場規模は着実に拡大し,実スペースでの買い物行動を移行しつつある.このような流れは,買い物を目的とした都市の滞在者を奪っていくことで賑わいの低下に繋がることが問題視されている.そのために実スペースが受ける影響は大きいと考えられるが,その実態は十分に明らかにされていない.都市活性化の観点からは,ネットショッピングによる買い物行動の移行の実態を把握しておくことの意義は大きい.本研究では,まず(1)どのような人がネットショッピングを利用し,サイバースペースへと買い物行動を移行しているのかを明らかにする.加えて,実際に移行した買い物行動に着目することで,(2)商品の特徴による移行要因を明らかにすると伴に,(3)サイバースペースへと移行した買い物行動の実態と(4)その進展可能性を明らかにする.
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