土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
75 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
和文論文
  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 中川 大, 立花 拓也
    2019 年 75 巻 4 号 p. 202-211
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,日本・ドイツ・フランスの地方都市を対象として,都市中心部の歩行者空間の整備状況,鉄軌道の利便性,鉄軌道駅と歩行者空間との近接性を国際間で比較分析し,日本と比較してドイツ・フランスにおいては,都市内の鉄軌道の利便性が高く,歩行者空間の面積が広く,歩行者空間と鉄軌道駅との近接性が高い都市が多いことを定量的に明らかにした.さらに,鉄軌道の利便性ならびに鉄軌道駅と歩行者空間との近接性と人口分布」との関連性を分析した結果,軌道系都市内交通の有無が都市全体の人口分布と関係していること,都市中心部では鉄軌道駅の利便性と鉄軌道駅周辺への人口集約度に相関があること,都市郊外部では鉄軌道駅周辺の人口密度は都市郊外部全体の人口密度より高い都市が多いことを明らかにした.

  • 和氣 悠, 水野 彩加, 氏原 岳人, 阿部 宏史
    2019 年 75 巻 4 号 p. 212-220
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     わが国において,空き家の数は増加の一途をたどっており,空き家の市場流通化の促進が必要となる.そこで本研究では,空き家所有者と空き家非所有者の意識的な実態を把握・分析し,それに基づいた空き家対策のアプローチ手法を検討した.分析結果から,空き家に対する意向は,所有者の年齢や空き家年数によって異なる.例えば,賃貸・売却意向や行政制度利用意向は年齢が若いほど高くなっているため,若年層にはそれらを周知することが効果的である.また,空き家年数が20年を経過すると空き家所有者の管理頻度は著しく低下し,不動産価値が棄損される.さらに,所有者が高齢の場合,賃貸・売却意向や制度利用意向が低くなり,アプローチ手段がなくなる.このため,市場流通化に向けた迅速な空き家対策が必要である.

  • 駒沢 行賓, 原田 昇, 髙見 淳史, Giancarlos TRONCOSO PARADY
    2019 年 75 巻 4 号 p. 221-232
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,歩行機能の低下などの加齢状況において,自動車利用可能性が外出活動低下を緩和するか,について,2015年実施の全国都市交通特性調査データを用いて分析した.ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析では,買物目的では,「専用自動車利用可能」な場合,加齢状況に応じた外出活動低下の緩和が示唆された.「共有自動車利用可能」な場合や「同乗利用可能」な場合に関しては,一貫した傾向は見られなかったものの,一部のケースでは,緩和効果が示唆された.日常生活圏内での食事・社交・娯楽目的の外出活動については,「専用自動車利用可能」性の緩和効果について,女性において認められた一方,男性においては認められなかった.総じて,自動車利用可能性による外出活動低下の緩和効果については,活動目的別の差異及び男女差が示唆された.

  • 小林 潔司, 貝戸 清之, 水谷 大二郎, 坂井 康人
    2019 年 75 巻 4 号 p. 233-249
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

     土木構造物の劣化過程において,外的要因の作用が直ちに構造物の劣化現象として顕在化することはそれほど多くない.むしろ,外的要因の作用が蓄積されることにより,タイムラグを経て劣化現象として発現することが多い.本研究では,リアルタイムの計測値に基づいて,構造物の長期的な劣化過程をモデリングし,予防的に異常検知を行うための方法論を提案する.具体的には,モニタリングデータに基づいて,構造物に作用する外的要因がもたらす影響に関する長期的記憶を考慮したARFIMAX-FIGARCHモデルを提案し,タイムラグを伴う構造物の劣化過程のモデル化を試みる.さらに,提案した方法論を実際の高速道路高架橋のジョイントに対するモニタリングデータに適用し,その有用性を議論する.

  • 嵐田 涼子, 小澤 一雅
    2019 年 75 巻 4 号 p. 250-261
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

     首都直下地震からの都市復興では,土地の過剰供給による需要格差の助長と,低需要地の空地化が懸念される.本研究では,直近の大都市災害である阪神淡路大震災に着目し,阪神間被災地の法定事業地区外における1995年から5年間で土地取引された,または空地化した敷地のデータを収集し,発災5年後の空地化/取引地化を判定するモデルを機械学習手法を用いて構築した.また,モデルの分析から,空地率を低減するための2施策を考案した.最後に,東京都の対象地域にモデルを適用することで,具体的な対象地域における政策効果検証の手法を示した.なお,当該地域においては両施策を導入した場合に空地化した敷地が30%減少することが推計された.

  • 恩田 幹久, 村上 大輔, 大澤 実, 高山 雄貴, 池田 清宏
    2019 年 75 巻 4 号 p. 262-272
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

     本稿では,恩田ら1)以降開発されてきた中心地理論の群論的スペクトル解析手法1),2),3)を高度化することで,都市への人口分布に内在する“階層”の深さを統計的に明らかにする手法を提案する.具体的には,多数のスペクトルの中からの効果識別のためにLasso回帰とVariation partitioningを組み合わせ,さらに抽出された効果の有意性評価のために並び替え検定を導入した,これにより,既存手法1),2),3)では困難であった階層毎の影響評価を可能とした.更に,実人口分布データに対して提案手法を適用し,都市の空間分布の背後に潜む階層深さとその影響力が都市・地域によって大きく異なることを示した.

  • 小林 渉, 岩倉 成志
    2019 年 75 巻 4 号 p. 273-288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     朝ラッシュ時間帯の慢性的な混雑・遅延問題の解決は急務である.本研究ではまず朝ラッシュ時間帯の列車1本1本の駅間走行と,旅客1人1人の乗降行動を再現するマルチエージェントシミュレーションシステムを開発した.次に遅延対策の取組みを整理するため,東京圏の大手鉄道11事業者を対象に列車遅延対策に関するインタビュー調査を実施した.これらを組合せ様々な列車遅延対策を複合的におこなった場合の遅延対策評価をおこなった.遅延対策案として移動閉そくシステム,秒単位での発車時刻調整,列車の加速性能向上などの7案を検討し,各案を単独で実施した場合には渋谷駅断面で最大60%の遅延減少,3案同時に実施した場合の遅延は67%減少する推計結果となった.開発したシステムは,この他の多彩な遅延対策案も検討可能であることを示した.

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