土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
72 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 浦田 淳司, 羽藤 英二, 柳沼 秀樹
    2016 年 72 巻 4 号 p. 261-277
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,時々刻々と変化する発災後の避難行動を記述することを目的として,将来効用に動学的異質性を導入した拡張型避難開始選択モデルを構築した.本来,避難行動は将来リスクの回避行動であることから,災害発生の稀少性ゆえに避難時における真の将来効用認知が困難であるという行動特性に着目し,これを表現するモデルを提案した.また,提案モデルに適用可能なMPEC型のパラメータ推定アルゴリズムを構築し,将来効用をパラメータと同様に扱うことで,動学的に異質な将来効用を現実的な計算コストで求解できることを示した.東日本大震災における陸前高田市の津波避難行動データを用いた実証分析により,動学的異質性に基づいた避難行動仮説の妥当性を示し,また時間や場所により将来効用認知の特徴が異なることを明らかにした.
  • 柳原 崇男, 井上 賢治, 柏瀬 光寿, 松田 雄二, 原 利明
    2016 年 72 巻 4 号 p. 278-287
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     視覚障がい者はその視覚機能の低下により,歩行パフォーマンスが低下する.しかし,視覚機能の低下がロービジョン者(弱視者)の日常生活活動に及ぼす影響やロービジョン者の取り巻く環境が,日常生活活動に及ぼす影響までは言及した研究はほとんどない.本研究はロービジョン者の視覚機能,歩行パフォーマンスや移動状況,日常生活活動と環境因子の関係について,その関係性について考察することを目的とする.その結果,視覚機能や歩行パフォーマンスではなく,公共交通の利用という活動が参加(日常生活活動)に影響を与えていることや公共交通の利用頻度には,公共交通機関までの距離が影響していることなどを定量的に示すことができた.
  • 小川 圭一
    2016 年 72 巻 4 号 p. 288-303
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,出発地・目的地間の自転車の車道横断回数を考慮して,自転車の通行方向を左側のみの一方向通行とする整備や規制をおこなった場合と,双方向通行とする整備をおこなった場合との,出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の比較をおこなう.具体的には,格子状の道路ネットワークをもつ京都市中心部と,非格子状の道路ネットワークをもつ京都市郊外の洛西ニュータウン付近とを対象として,出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない,格子状,非格子状といった道路ネットワーク形状に関する特性と,自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率との関係について比較をおこなう.
  • 中川 善典, 重本 愛美
    2016 年 72 巻 4 号 p. 304-323
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     高齢者による運転事故を予防するため,自動車運転免許の自主返納が推奨されている.免許返納によって高齢者は移動の不便を余儀なくされるが,その不便を引き受けて返納することが返納者にとってどのような意味を有するかを理解することは,返納者の支援策を検討する上での出発点である.本論文は,二名の免許返納者の人生史研究に基づき,返納者の人生史全体を参照しない限り返納者にとっての返納の意味が理解できないケースが存在することを例証した.さらに,これら二名にとっての返納の意味の共通部分を抽出することで【自分の信念を貫いて人生を完結するための決意表明】としての免許返納という概念が構築された.最後に,運転免許の返納を検討する高齢者の家族が,どのような姿勢で高齢者に接する必要があるか等の実践的含意について論じた.
  • 日高 健, 大野 宏司, 志賀 孝広
    2016 年 72 巻 4 号 p. 324-343
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     位置情報を活用したサービスは大きな可能性を期待される一方,プライバシー保護の問題のために限定的な普及に留まっている.他方,携帯電話のネットワークなどを利用して作られる人口統計情報は,上記の課題解決のためにエリア毎に集計されており,移動に関する情報が失われている.そのような状況のなか,我々は個人情報を含まない集計データを統合することにより上記の課題を回避しつつ,個人の移動情報と同等な情報を統計的に生成する手法を開発した.生成したデータを携帯電話のネットワークから作られる1時間ごとの人口統計と比較検証した結果,性別・年齢層別の人口に対しても高い精度の再現性を持つことが明らかになった.
  • 宮川 愛由, 田中 謙士朗, 藤井 聡
    2016 年 72 巻 4 号 p. 344-355
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
  • 田中 優子, 上原 邦昭
    2016 年 72 巻 4 号 p. 356-367
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     近年,様々な分野において,都市における人の行動把握の必要性が高まっている.しかし,位置情報データを用いた行動分析では,データに移動手段や滞在場所のような軌跡の意味情報が付いていないという問題がある.また,プライバシー保護のために,人の個人属性も得ることができないことが多い.そこで本研究では,位置情報データからこれらの意味情報を推定する手法を提案する.具体的には,位置情報から得られる特徴量のみを用いて,機械学習で推定する.その際に,教師なし学習のみ用いて,正解ラベル付きデータを必要としない推定を行う.最終的に,東京都市圏の人の流れデータを用いた実験を行い,本手法の有効性を考察する.
  • 塩見 康博, 渡部 数樹, 中村 英樹, 赤羽 弘和
    2016 年 72 巻 4 号 p. 368-379
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     一般道で発生する交通事故の半数以上は交差点,および交差点付近で発生している.交通安全性を向上させるためには,交差点における交通事故リスク要因を定量化し,適切な交差点改良,あるいは交通運用を図ることが求められる.しかしながら,交差点毎にその幾何構造的特徴を数値化したデータベースはこれまでに整備されておらず,交通事故リスク要因の定量化がなされていないのが現状である.そこで,本研究ではGoogle Earthを用い,停止線間距離やアプローチの交差角度,ガードレールの有無や縁石の有無,車線運用や路面標示状況,沿道土地利用状況などのデータを数値化し,類型毎の事故リスクとの関係をポアソン回帰モデルにより分析した.その結果,交差点のコンパクト化が事故リスクの軽減に極めて有効であることなどが明らかとされた.
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