肥満は様々な種類のがんを促進することが指摘されている.私たちは全身性の化学発がんマウスモデルを用いた研究により,高脂肪食摂取により肥満したマウスにおいて肝がんの発症が著しく促進されることを見出した.そして,二次胆汁酸であるデオキシコール酸(DCA)を産生するグラム陽性腸内細菌が高脂肪食摂取により増加することで,腸肝循環により肝臓に運ばれたDCAとグラム陽性菌の細胞壁成分リポタイコ酸(LTA)が,肝臓の間質に存在する肝星細胞の細胞老化と細胞老化随伴分泌現象(SASP, senescence-associated secretory phenotype)を協調的に誘導し,肝がん促進的ながん微小環境を形成することを見出した.LTAを介する経路により,プロスタグランジン(PG)の産生酵素,シクロオキシゲナーゼ2の発現も著しく上昇しており,PGE2が抗腫瘍免疫を抑制し,肝がんの進展に寄与することが明らかになった.この機構はヒトのNASH肝がんの一部でも認められ,ヒトでも同様の機構が働いている可能性が示唆された.
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