日本門脈圧亢進症学会雑誌
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21 巻, 1 号
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Editorial
総説
  • 角谷 宏
    2015 年21 巻1 号 p. 16-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症におけるRCTの進め方について概説した.まず,詳細な計画書を書く必要があり,この計画書に研究デザイン全てを記載する.その内容は,題名に続いて研究の要旨,研究の経緯・背景,研究の意義,研究の目的(Primary,Secondary endpoint),研究デザイン(デザイン,症例数計算,患者選択,Inclusion,Exclusion Criteria,症例のリクルート,治療手技の手順,症例の逸脱,研究参加の撤回に関する指針),合併症の管理(合併症の回避,合併症報告,研究中止指針),データモニタリング(データモニタリングの計画,早期終了の基準,研究延長の基準),データ解析(プロトコール非遵守例の取り扱い,統計解析),目標症例数および予定期間,実施場所,利益相反,プライバシー保護に関する配慮,参考文献,など.また,別に患者への説明用紙には参加の自由,利益・不利益,他の治療法,費用,補償,研究結果の扱い,などを書く必要がある.多施設で行う場合にどのような点に注意が必要なのか,なぜ失敗するのか,RCTの肝などについて記述した.
  • 松井 繁長, 樫田 博史, 工藤 正俊
    2015 年21 巻1 号 p. 19-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    当院で診断した十二指腸静脈瘤17例の病態と治療方針を検討した.出血群においてびらん,食道静脈瘤治療歴が有意に多く認められ,RC signは陰性のことが多かった.出血例に対する緊急止血法は,α-cyanoacrylate monomerを使用した内視鏡的硬化療法(EIS)などの内視鏡治療を第一選択とすべきである.血行動態の把握は,Multi detector CT(MDCT)やMagnetic Resonance Angiography(MRA)などによる画像診断が有用である.出血危険因子は,胃静脈瘤と同様で,急速増大例,びらんやRC signを有する症例,F2以上の緊満例がRisky varicesとしてあげられた.肝外門脈閉塞症,高度肝障害例を除く,Risky varicesは積極的に予防的治療を行うべきであると考える.
原著
  • 林 学, 阿部 和道, 渡辺 晃, 高橋 敦史, 菅野 有紀子, 岡井 研, 今泉 博道, 高木 忠之, 引地 拓人, 小原 勝敏, 渡辺 ...
    2015 年21 巻1 号 p. 26-31
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    近年,部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)の安全性が確立され,血小板減少や食道胃静脈瘤などの改善が期待されている.今回我々は,慢性肝疾患に伴う門脈圧亢進症に対して行ったPSEの効果と合併症について検討した.対象は,当院でPSEを施行された慢性肝疾患の22例.対象患者は平均年齢60.9歳,男:女15:7であり,肝癌合併9例,食道胃静脈瘤合併15例.Child A/B/Cは6/15/1であった.方法は,PSE施行前,2週間後,24週間後の血球数,肝機能,上部消化管内視鏡所見,合併症について検討した.白血球数と血小板数は,治療前と比較して2週間後,24週間後で有意に上昇した(p<0.05).食道胃静脈瘤合併例でPSEを行った9例中8例は内視鏡的静脈瘤硬化療法後再発を認めなかった.重篤な合併症は,DICを2例で認め,TATが鑑別に有用であった.
臨床研究
  • 児玉 英章, 相方 浩, 苗代 典昭, 小林 知樹, 柾木 慶一, 宮木 大輔, 河岡 友和, 平松 憲, 今村 道雄, 山上 卓士, 茶山 ...
    2015 年21 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    高度門脈腫瘍栓(Vp3/4)合併肝細胞癌(肝癌)に対して肝動注化学療法(HAIC)を施行した73症例において,食道静脈瘤の臨床経過および予後を後方視的に解析した.経過中の食道静脈瘤増悪率は12か月36%,24か月60%,出血率は12か月25%,24か月36%,生存率は12か月38%,24か月24%であった.HAIC奏功例と非奏功例の12, 24か月の出血率は,それぞれ奏功例7%,7%,非奏功例30%,36%であり,HAIC奏功例の出血率は有意に低率であった.また出血例の生存率は12か月31%,24か月10%,非出血例の生存率は12か月41%,24か月28%であった.RC sign陽性,F因子2または3, HAIC非奏功のいずれかを有する出血高リスク症例における門脈腫瘍栓への放射線治療併用例では,非併用例に比較して有意に静脈瘤出血率は低率であった.
症例報告
  • 横山 圭二, 平野 玄竜, 田中 崇, 阿南 章, 入江 真, 向坂 彰太郎
    2015 年21 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は35歳女性.16歳時より尿潜血が持続.全身倦怠感,蛋白尿を指摘され,当院腎臓内科入院.腎生検にてメサンギウム増殖性糸球体腎炎(MesGN)と診断された.その際,腹部造影CTにて巨大な脾腎シャントと肝内に流入する門脈血流の低下を認めた.各種慢性肝疾患や肝線維化を示唆する所見に乏しく,脾腎シャントの原因精査目的で腹腔鏡下肝生検を施行,特発性門脈圧亢進症(IPH)に合致する所見が得られた.肝内門脈血流の回復を目的としてバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行し,脾腎シャントの良好な閉塞と肝内門脈血流の改善を認めた.B-RTO後,全身倦怠感は消失,肝予備能も改善し,以後3年にわたり経過良好である.一方,尿蛋白の改善は緩徐であり,糸球体腎炎発症の原因として,門脈-大循環シャントに起因する肝網内機能の低下が考えられた.
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