日本門脈圧亢進症学会雑誌
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18 巻, 4 号
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Editorial
臨床研究
  • 新井 弘隆, 豊田 満夫, 高山 尚, 阿部 毅彦
    2012 年 18 巻 4 号 p. 173-176
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    今回我々は出血をきたした門脈圧亢進症性胃症(portal hypertensive gastropathy:PHG)症例に対する部分的脾動脈塞栓術(partial splenic arterial embolization:PSE)の有用性について検討した.severe PHGからの出血例に対してPSEを行った5例を対象とした.全例とも出血は,門脈側副血行路に対する治療後1年以内にみられた.PSEによる脾臓の塞栓率は60~88%,平均76%で,肝静脈圧較差(hepatic venous pressure gradient:HVPG)はPSE後に57 mmH2O減少し,出血は全例でコントロールされた.PSE施行6か月後にはPHGの改善がみられ1年後も効果は持続した.食道静脈瘤の改善も2例にみとめられた.HbはPSE6か月後に,PLTは1か月後と6か月後に有意な増加をみとめた.発熱,腹痛が全例でみられ,Grade 3の腹痛が1例でみられた.PSEはsevere PHGからの出血例に対して,有用な治療法と考えられた.
症例報告
  • 佐上 晋太郎, 橋本 義政, 天野 始
    2012 年 18 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.原発性胆汁性肝硬変にて当科で加療中である.吐血にて当科受診.上部消化管内視鏡にて出血源は特定できなかったが,Dynamic CTにて十二指腸上行脚に静脈瘤を認めた.門脈血行動態評価のため経皮経肝門脈造影を施行し,供血路は上腸間膜静脈で排血路は左腎静脈であった.B-RTOを行う方針とし,排血路をバルーン閉塞後5% EOIを注入したところ,静脈瘤は再破裂.B-RTO単独では治療不能と判断し,供血路をバルーン閉塞し5% EOIを注入.注入後,硬化剤の停滞良好にて治療を終了.術後,ダブルバルーン内視鏡にて十二指腸上行脚に血栓化された静脈瘤を確認.以後,吐下血なく軽快退院となった.本例は通常内視鏡では到達不可能な十二指腸上行脚の静脈瘤に対して,B-RTO単独では治療不能であったがPTOを併用することで治療を完遂できた症例である.
  • 藤山 俊一郎, 工藤 康一, 上川 健太郎, 丸岡 公生
    2012 年 18 巻 4 号 p. 183-188
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性,C型肝硬変.自宅にて下血し,大腸内視鏡検査で直腸静脈瘤を指摘された.瘤は直腸Rbに全周性に存在し,肉眼形態はF2,Cb,RC2であった.造影CT検査で瘤の血行動態を精査すると,流入路は下腸間膜静脈,流出路は両側内腸骨静脈であった.瘤の大きさから内視鏡的硬化療法は可能と予想されたが,血流停滞を得るのに特殊な工夫が必要であり,IVRによる血流制御を併用する方針とした.流入路である下腸間膜静脈をバルーンカテーテルで閉塞し,血流の停滞を確認後,5% EO 10 mlで内視鏡的硬化療法を施行した.治療12か月後の大腸内視鏡検査では再発を認めなかった.本法のようなIVRと内視鏡の両特徴を生かしたハイブリッド治療は過去に報告例がなく,治療を安全かつ根治的に行うための1方法になりうると考えられた.
  • 上嶋 昌和, 梅本 典江, 小島 邦行, 瓦谷 英人, 武山 真也, 福井 博, 松村 雅彦
    2012 年 18 巻 4 号 p. 189-193
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)は食道静脈瘤治療の第1選択として確立した治療方法である.しかし静脈瘤内注入には熟練を要し,特にF1以下の静脈瘤穿刺は上級者でもしばしば困難である.そこでわれわれは,F1以下の静脈瘤に対する静脈瘤内注入を容易にする目的で独自のフード法を考案し,2002年からこの使用を開始した.従来の方法と比較検討した結果,良好な成績が得られたため報告する.対象症例はEISを行ったF1以下の静脈瘤66例で,通常の方法34例(通常群)とフードを用いた32例(フード群)の2群間で検討を行った.静脈瘤内注入率は通常群70.6%に対してフード群93.8%,供血路造影率は通常群55.9%に対してフード群84.4%と,どちらも後者で有意に高率(p<0.05)であった.フード法を用いるEISは食道静脈瘤治療における標準手技として有用な方法であると考える.
  • 堂地 大輔, 鈴木 正徳, 竹内 丙午, 力山 敏樹, 片寄 友, 海野 倫明
    2012 年 18 巻 4 号 p. 194-199
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性.2008年6月に近医で汎血球減少を指摘され,当科外来紹介となった.上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤(LmF3CbRC2)を認め,EVLを施行.精査の結果,特発性門脈圧亢進症の診断となり,待機的にHassab手術を行った.食道静脈瘤は一時,消退したが,半年後の上部消化管内視鏡検査で再増悪所見を認め,EVLを施行した.CTで門脈本幹の狭窄と器質化門脈血栓を認めたことより,直達手術の遠隔期に生じた門脈血栓に起因する門脈圧亢進症の再燃が,遠肝性側副血行路としての静脈瘤の悪化の原因であると判断した.すでに血栓溶解療法の時期を逸しており経過観察していたが,その後の吐血と肝性脳症などが臨床上問題となった.本症例に対して門脈圧の確実な減圧を目的に2011年4月に上腸間膜静脈—右卵巣静脈短絡術を施行した.術後の検査で食道静脈瘤の退縮が確認された.自験例のような門脈—下大静脈短絡術はサルベージ手術の一環としても有用と考えられたので報告する.
  • 綾田 穣, 堀田 直樹, 黒川 剛
    2012 年 18 巻 4 号 p. 200-207
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.平成11年に他院で自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)と診断された.平成14年より当院へ転院となり,肝硬変に伴う胸腹水貯留のため入退院を繰りかえしていた.平成21年1月,胸水の増加による呼吸困難のため再入院となった.治療に対し増悪と寛解を繰り返し,同年5月13日,門脈圧亢進症の増悪による,胸水,腹水の増加に伴う呼吸不全により死亡した.Necropsy所見ではCH(F1/A1)相当である他に,小葉全体に褐色色素の肝細胞内への沈着が目立ち,褐色色素はKupffer cellにも貪食されており,hemosiderinの色素沈着と考えられた.褐色色素がBerlinblue染色陽性であったことより,本症例は鉄過剰症と診断された.網内系のみならず肝実質細胞内への鉄沈着が認められておりヘモクロマトーシスと考えられた.遺伝子検査は行っていないが,家族歴を認めず,皮膚色素沈着,糖尿病,関節痛なども欠くため,肝疾患に伴う二次性のヘモクロマトーシスと考えられた.肝障害の進行に鉄過剰症の関与が示唆された.
  • 瑞木 亨, 俵藤 正信, 丸山 博行, 笹沼 英紀, 清水 敦, 佐久間 康成, 佐田 尚宏, 安田 是和
    2012 年 18 巻 4 号 p. 208-214
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性,日系ブラジル人.左季肋部鈍痛の精査で高度の血小板減少と脾腫を指摘された.腹部血管造影所見から特発性門脈圧亢進症と考えられ,最大径40 mmの多発脾動脈瘤を合併していた.肝容積を上回る著明な脾腫と瘤径の大きな多発脾動脈瘤に対して,2回のコイルによる脾動脈瘤塞栓術にて脾動脈本幹の血流を遮断し,待期的に脾摘術と脾動脈瘤切除術を施行した.術中超音波で肝外門脈に壁在血栓を認めた.脾重量は900 gで,肝生検の病理所見では特発性門脈圧亢進症による変化と診断された.術後は門脈血栓増悪を予防するためAT-III製剤,抗Xa活性阻害剤投与による抗凝固療法を行い,ワーファリン内服を開始した.経過良好で術後第11病日に退院した.外来経過観察中のCT検査で門脈血栓の増大が認められたが,ワーファリン内服の継続により消失した.門脈・脾静脈血栓発生の危険の大きい巨脾に多発脾動脈瘤を伴う特発性門脈圧亢進症の治療に対して,一連の治療戦略は安全に機能した.
テクニカルレポート
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