日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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5 巻, 4 号
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  • 河田 則文, 黒木 哲夫
    1999 年5 巻4 号 p. 245-246
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝細胞に密接する類洞は他臓器の毛細血管床に相当し, 肝微小循環系において最大の面積を占める.類洞内皮細胞を肝細胞側より被覆するように星細胞が配置し, その収縮性を制御する液性因子や神経系の解析が進んできた.星細胞活性化に伴う本細胞の血管平滑筋細胞様への形質転換により生じた過剰な収縮力の増加や肝小葉の門脈域側における細胞外マトリックス沈着による門脈終末枝の狭窄が門脈圧充進症を誘因する可能性が示唆されている.
  • 特に定型例と非定型例の問題解決のために
    近藤 福雄
    1999 年5 巻4 号 p. 247-256
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    非硬変性門脈圧亢進症や肝内血行異常を示す肝内にみられるさまざまな結節性病変について, 病理学的に病態と成因の考察を行った.限局性結節性過形成 (FNH), 結節性再生性過形成 (NRH), 特発性門脈圧亢進症 (IPH) は先天異常による肝内血行異常という共通の成因が関与している可能性が示唆された.また, これらFNH, NRH, IPHの定型例といえない非定型例すなわちIPHに伴う結節性病変, 非硬変性の大型再生結節 (LRN), 肝細胞腺腫 (HA) 類似の過形成結節や部分的結節化 (PNT) も同様の成因に基づく過形成病変と考えられ, これらは上記の定型例の中間型・不全型とも考えられた.また, これまで病因として推測されてきたさまざまな併存疾患は, 単なる併存や二次的増悪因子である可能性が示唆された.
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 豊田 成司, 狩野 吉康, 大村 卓味, 須賀 俊博
    1999 年5 巻4 号 p. 257-261
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    胃静脈瘤77例に内視鏡的超音波カラードプラ法 (ECDUS) を施行し, 血行動態を検討した.胃静脈瘤の形態はF265例, F312例で占居部位別にはLg-cf39例, Lg-f32例, Lg-c6例であった.ECDUSで胃静脈瘤の血流信号のカラー表示と血流速度の計測を行った.胃壁内静脈瘤の血流信号は77例全例に検出された.形態別にはF3静脈瘤はF2に比し, 有意に血流速度は速かったが, 占居部位別には有意差はなかった.胃壁内静脈瘤と胃壁外の側副路のカラー表示の多寡を比較し, 3つのタイプに分類した.すなわち, type1は胃壁内血流優位型, type2は胃壁内外血流増加型, type3は胃壁外血流優位型である.この分類により血流速度を検討するとtype2静脈瘤はtype1とtype3に比し, それぞれに有意に血流速度が速かった.ECDUSは胃静脈瘤の破裂の予測や治療法の選択に有用と期待される.
  • 中村 真一, 村田 洋子, 光永 篤, 鈴木 茂, 林 直諒
    1999 年5 巻4 号 p. 262-266
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    3次元超音波内視鏡検査 (3D-EUS) を用いて食道静脈瘤の血行動態を観察し, 内視鏡的治療法の選択と内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) の適応について検討した.3D-EUS所見から左胃静脈の前枝と後枝, 傍食道静脈, 穿通枝, 奇静脈などの構造を考慮し, 血行動態を1型 : 供血路が胃噴門側から連続して静脈瘤に流入するもので, 壁外に上行する傍食道静脈を認めないもの, 2型 : 供血路が胃噴門側から連続して静脈瘤に流入するもので, 壁外に上行する傍食道静脈を認めるが, 穿通枝を認めないもの, 3型 : 胃噴門側からの血行路は目立たず, 壁外に奇静脈系と交通する太い傍食道静脈を認め, その分枝が穿通枝として静脈瘤に流入するもの, 4型 : 胃噴門側からの供血路と傍食道静脈からの穿通枝との2つの血行路を併せもつもの, の4型に分類した.結果は食道静脈瘤32例 (100%) 中, 1型14例 (43.8%), 2型4例 (12.5%), 3型4例 (12.5%), 4型10例 (31.3%) であった.内視鏡的治療後の短期成績は1型では内視鏡的硬化療法 (EIS), EVLとも約3回の治療で静脈瘤は消失し, EV工は4例中3例 (75.0%), EISは10例中2例 (20.0%) に再発を認めた.3型ではEVLは2.0回の治療で, 3例とも再発を認めなかった.1型のように供血路から静脈瘤へ連続し, 他への側副血行路を有さない症例は供血路を確実に塞栓すべきで, EISの適応である.3型を典型とする静脈瘤に並列する側副血行路を有し, その血行路に血流を変行, 制御できる症例がEVLのよい適応である.
  • 大平 雅一, 堀 武治, 清水 貞利, 山下 好人, 山田 靖哉, 八代 正和, 澤田 鉄二, 西野 裕二, 吉川 和彦, 平川 弘聖
    1999 年5 巻4 号 p. 267-271
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    最近5年間に教室で内視鏡的食道静脈瘤結紮術 (EV正) 単独およびEV正, 内視鏡的食道静脈瘤硬化療法 (EIS) 併用治療を行った食道静脈瘤症例のうち, 治療前に食道静脈瘤圧 (EVP) を測定した13例を対象として, EVPからみたEV正治療後の静脈瘤再発について再発群6例と非再発群7例に分けて検討した.その結果, EVP15mmHg以上の高値例では低値例に比し有意に再発が多く (p=0.026), またF0, RC (-) まで治療できた症例は, F1, RC (-) にとどまった症例に比し再発が少なかった (p=0.013).EVP高値例 (EVP≧15mmHg) では9例中6例に静脈瘤再発がみられたが, とくに再発例ではF1, RC (-) にとどまった症例が多く (5/6;83.3%), 高値例における静脈瘤再発の-因と考えられた.EVP低値例ではF1, RC (-) にとどまった症例も含め静脈瘤再発は1例も認めなかったことから, 本治療法の良い適応であると考えられた.またEVPの測定は静脈瘤再発の予知および治療最終目標の決定に有用であることが示唆された.
  • 真田 淳, 武田 一弥, 篠原 靖, 大柳 裕登, 平原 美孝, 堀口 潤, 石川 勉, 中村 和人, 糸井 隆夫, 荻原 正示, 武井 和 ...
    1999 年5 巻4 号 p. 272-276
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    カテーテル留置法を用いた経静脈的塞栓術 (TOPS) を施行した孤立性胃静脈瘤 (GV) 症例の長期予後について内視鏡的静脈瘤硬化療法 (EIS) 施行例と比較検討した.対象は肝癌非合併肝硬変例とし, 緊急例を除外したTOPS施行群20例, EIS施行群15例である.TOPS群の最長観察期間は76カ月, 平均観察期間36.1カ月, EIS群は同42カ月, 23.7カ月であった.TOPS群の観察期間中のGV再発率は0%であったが, EIS群では24カ月で22%, 41カ月で43%にGV再発を認めた.食道静脈瘤の再発率は36カ月でTOPS群は26%, EIS群で38%と有意差を認めなかったが, 再出血率ではTOPS群で76カ月間で5%, EIS群で41カ月間に66%と有意にTOPS群が低率であった.生存率では両群に差を認めなかった.以上よりTOPSはEISと比べ生存率の差はないが, GV再発率, 再出血率は極めて低率でありTOPSはGV症例においてQOLの点で優れた治療法と考えられた.
  • 松崎 一江, 松崎 浩司
    1999 年5 巻4 号 p. 277-281
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    孤立性胃静脈瘤の37例に対し, 供血路, 胃静脈瘤および排血路を経動脈性門脈造影像 (AP) または経皮経肝門脈造影像 (PTP) およびバルーン下逆行性静脈瘤造影像 (BRTV) から検討した.供血路の検討では, BRTVでは33例中17例 (51.5%) で不明であり, APまたはPTPとBRTVの比較では31症例中17例 (54.8%) で供給路が一致しなかった.排血路の検討では, APまたはPTPからの検討では, 排血路が胃腎短絡路 (g-rs) 単独が54.3%と多くを占めていたが, BRTVでは, g-rs単独は22.2%で, APまたはPTPに比して半分以下の結果であった.APまたはPTPとBRTVの排血路が一致していた症例は32症例中8例 (25.0%) のみであった.胃静脈瘤内の造影では, BRTVを施行した33例中13例 (39.4%) で静脈瘤内に造影剤が停滞し, 11例 (33.3%) で造影されるのみで停滞せず, 9例 (27.3%) で造影されなかった.副排血路の血流遮断では, 14例に対し副排血路の遮断を試み, 11例 (78.6%) では施行後にBRTVで胃静脈瘤内に造影剤が停滞し, 3例 (14.3%) では胃静脈瘤は造影されるのみであった.バルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) での胃静脈瘤を治療を考慮するときの血行の検討は, APまたはPTPからのみならずBRTVからも重要であると考えられた.
  • 成高 義彦, 小川 健治, 我妻 美久, 島川 武, 山口 健太郎, 島尾 一也, 勝部 隆男, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎, 岩井 恵理子, ...
    1999 年5 巻4 号 p. 282-286
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術 (transjugular intrahepatic portosystemic shunt;TIPS) の長期的予後をより明らかにすべく, 当科での治療成績について検討を加えたので報告する.難治性腹水症例7例, 難治性食道胃静脈瘤4例, 小腸静脈瘤出血1例に対してTIPSを行い, 有意な門脈圧減圧が得られた.臨床的にはシャントが開存している限り静脈瘤の縮小, 消失や腹水の著明な減少など優れた効果が長期にわたって持続した.シャントの機能不全は6例 (50.0%) に認めたが, 3例はpercutaneous transluminal angioplasty (PTA) にて回復した.長期的予後は, 最長5年2カ月をはじめ5例が生存中であり, 累積生存率は1年66.4%, 3年48.6%, 5年39.8%であった.本治療法は, 難治性静脈瘤や難治性腹水, 門脈圧亢進による消化管出血の有効な治療手段の-つと考えるが, 施行後はシャント機能不全の発生を常に念頭におき, その早期発見に努めることが重要である.
  • 林 星舟, 佐伯 俊一
    1999 年5 巻4 号 p. 287-290
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    バルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) を施行した胃穹窿部静脈瘤症例39例 (平均観察期間33.3カ月, 最長85カ月) を対象に, その長期予後について検討した.1) 胃穹窿部静脈瘤の再発率および治療対象とした短絡路の再疎通率はいずれも0%であった.2) 治療前の上腸間膜動脈造影にて遠肝性血流を認めた18例のうち, 7例では治療後に遠肝性血流の消失を認めた.また治療した短絡路以外の側副血行路を認めなかった8例のうち, 3例でB-RTO施行後に新しい側副血行路の出現を認めた.3) B-RTO症例におけるRC陽性食道静脈瘤の累積出現率は治療前25.6%, 3年47.2%, 5年61.3%であった.4) 基礎疾患がウイルス性肝硬変であるB-RTO症例19例での肝細胞癌累積出現率 (3年16.1%, 5年47.6%) と胃穹窿部静脈瘤を認めないウイルス性肝硬変524例での出現率 (3年16.7%, 5年29.9%) の比較では有意差を認めなかった.5) B-RTO症例の累積生存率は3年70.8%, 5年64.4%であり, 死亡症例のうち, B-RTO施行が直接死亡につながった症例はなかった.
  • -初回治療の重要性-
    菊地 徹, 齊藤 道也, 齋藤 行世, 佐藤 勝久, 遠藤 高
    1999 年5 巻4 号 p. 291-294
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝癌非合併食道静脈瘤症例において, 適切な内視鏡的硬化療法 (EIS) とはいかなるものか, 内視鏡的食道静脈瘤造影 (EVIS) によるethanolamine oleate (EO) 血管内注入の状況と治療に要した医療費ならびに在院日数から評価した.初回入院治療時に十分量の硬化剤注入で治療された症例では, 初回治療時の医療費の増加と在院日数の遷延を来したものの, 再治療時の在院日数は短縮し, それにともない医療費は抑制された.すなわち初回治療時における固有供血路を閉塞させ静脈瘤を荒廃させる質の高い治療手技は, 初回治療時の医療費ならびに在院日数の観点からは問題点もあるものの, 再発が少なく, たとえ再発を来しても再治療期間が短縮でき, 再治療時の医療費の減少につながる有効な治療法であった.
  • 和泉 才伸, 金谷 誠一郎, 松下 貴和, 小森 淳二, 猿丸 修平, 中原 由紀子, 和田 康雄, 大歳 雅洋
    1999 年5 巻4 号 p. 295-299
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    現在その有用性が報告されているいわゆる “地固め療法” は, 下部食道粘膜を線維組織で置き換えることにより, 静脈瘤の発生母地を完全に消滅させ, 内視鏡的硬化療法後の食道静脈瘤再発を予防しようとするものである.非接触での広く浅い凝固を特徴とするアルゴンプラズマ凝固法 (argon plasma coagulation;APC) は, アルゴンガスを媒体としているため, 側方向の凝固が可能で, 最近開発された消化管用のアプリケーターを用いることにより, 下部食道粘膜を容易にかつ均-に凝固することが可能である.今回, APCを食道静脈瘤地固め療法に応用し, 平均1.3回の施行で地固めを完了することができた.APCを用いた食道静脈瘤地固め療法は, 現在までに報告されている他の方法に比べ, 手技的に容易かつ安全に下部食道粘膜の均一な線維化を得ることができ, しかも治療回数の少ない優れた方法と考えられた
  • 高木 忠之, 入澤 篤志, 斎藤 文子, 宍戸 英夫, 渋川 悟朗, 雷 毅, 滝口 藤夫, 坂本 弘明, 小原 勝敏, 粕川 禮司
    1999 年5 巻4 号 p. 300-305
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対して食道静脈瘤結紮術を施行した後に, 急速に胃静脈瘤が出現した2症例を経験した.2症例とも胃静脈瘤治療前の超音波内視鏡検査において, 傍食道静脈の発達が認められず, 血管造影やCT検査にて門脈大循環系へのシャント血管も認められなかった.2症例とも内視鏡的胃静脈瘤硬化療法 (ethanolamine oleate/ethanol/cyanoacrylate併用法) にて完全治療が達成できた.2症例とも治療後に傍食道静脈の発達が認められ, また門脈下大静脈系シャントも形成された.これらのことから, 2例とも食道静脈瘤以外の門脈圧緩衝作用をもつシャント血管が発達していなかったことが胃静脈瘤出現に関与したと推測された.治療後には, 食道胃静脈瘤以外の門脈圧緩衝作用をもつシャント血管が発達したことから, 今後, 再発の可能性は低いものと考えられた
  • 前川 公男, 國分 茂博, 村上 幸太郎, 佐田 美和, 真玉 壽美生, 桑尾 定仁, 大部 誠
    1999 年5 巻4 号 p. 306-310
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性, 感冒症状を主訴に来院.血小板数3.4×104/μ1の著しい減少と腹部超音波検査で著しい脾腫を認めた.本症例は, 軽度のtransaminaseの上昇と血中アンモニア値の上昇を認めた.明らかな肝炎ウイルスの感染は認められず, 血液疾患の所見がないことから, 門脈-大循環短絡を伴う特発性門脈圧亢進症を考えた.閉塞肝静脈圧は190mmH2Oと軽度上昇.上腸間膜動脈造影で上腸間膜静脈から屈曲蛇行する血管を経て下大静脈が描出され, Retziusveinを介する短絡と診断した.脾動脈造影では拡張した脾静脈から肝内門脈枝の描出は良好で, 脾は23×10cmであった.部分的脾動脈塞栓術により血小板数を増加させた後, 肝生検を施行.肝組織所見は門脈域に隣接した異常血行路を認め, 特発性門脈圧亢進症と考えた
  • 中村 浩之, 板倉 勝, 植田 充, 小林 文徳, 西崎 泰弘, 松崎 松平
    1999 年5 巻4 号 p. 311-313
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    末梢血中エンドセリン-1 (ET-1) は強力な血管収縮作用を有し, 肝硬変の進行に従い増加することが知られているが, 病態への関与については不明な点が多い.非代償期肝硬変患者における腹水貯留とET-1の関係を検討するため, 肝硬変患者84例を対象に血中ET-1濃度を測定し, 大量腹水貯留例14例で穿刺排液療法の前後での変化を比較した.全例で末梢血中ET-1は増加しており, 腹水貯留の進展に伴ってさらに増加する傾向が認められた (非貯留群6.6±2.3, 大量貯留群8.1±3.5pg/ml, p?0.05).大量腹水貯留例では穿刺排液の直後からET-1値は低下する傾向を示し, 排液前に著明に増加していた群 (9.7±1.6pg/ml) では穿刺排液翌日に有意な低下 (7.5±1.6pg/ml, p<0.05) が認められ, 穿刺排液による全身循環動態, 門脈血行動態の改善が影響したものと推察された.
  • 米満 春美, 木村 孝, 香川 浩一, 津田 富康, 山田 康成, 清末 一路, 松本 俊郎, 森 宣
    1999 年5 巻4 号 p. 314-315
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例はDubin-Johnson症候群と診断されていた18歳女性で, 肝内結節性病変の精査目的で入院となった.結節は最大径5cm, 4cm, 1cmと多発性で, 99mTc-GSA肝シンチグラフィでは欠損像を示し, 超常磁性体酸化鉄使用MRIでは造影剤の取り込みはなかった.CT, MRIおよび血管造影の動脈優位相では, 結節部は濃染像を呈し, 後期相まで持続した.また門脈血流は上腸間膜静脈から異常血管を介して下大静脈へ短絡し, 門脈枝は低形成であった.結節は組織学的にはDubin-Johnson穎粒をもたない肝細胞の過形成像を示し, 類洞拡張を伴っていた.本例は先天性に存在した門脈下大静脈シャントにより門脈血流低下を来し, この血行動態の変動が結節形成に関与したものと推測された
  • 岩崎 隆雄, 田辺 暢一, 蒲 比呂子, 福島 耕治, 山川 暢, 山極 洋子, 鈴木 穰, 西岡 可奈, 下瀬川 徹, 豊田 隆謙
    1999 年5 巻4 号 p. 316-318
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    脾腎シャントによる肝性脳症に対する短絡路温存門脈-大循環分流術1) は, 有用な治療法であるが, 肝萎縮が進行し, 経皮経肝的な門脈穿刺が困難な症例には施行が困難である.このような症例に対し, 腎静脈側から逆行性にアプローチし, 脾静脈にコイルを留置する逆行性経静脈的脾静脈分流術Retrograde Transvenous Splenic vein Splitting (RTSS) を考案, 施行した.B-RTOと同様にアプローチし, B-RTV施行後, 脾腎シャント閉鎖前と閉鎖後の肝静脈圧較差を比較し, 圧上昇が10cmH20以上だった一例にRTSSを施行した.術後血中NH3値は下降し, 肝性脳症の著明な改善をみた.もう-例は, ガイドワイヤーは脾腎シャントから逆行性に門脈右枝まで挿入可能であり, 手技的にRTSSは十分に可能であったが, 圧上昇が10cmH20以下だったのでB-RTOを選択した.RTSSはシャント脳症に対する極めて有用な治療法となりうると考えられた
  • 西田 均, 馬場 俊之, 坂本 仁, 石井 誠, 本田 実, 三田村 圭二
    1999 年5 巻4 号 p. 319-321
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    経頸静脈的肝内門脈体循環短絡術 (TIPS) を非代償期肝硬変 (LC) に対し1992年より実施し, 長期経過観察を行っている.今回, TIPSの適応を検討する目的で良好な予後が得られた症例の臨床的特徴を検討した.当科でTIPSを実施した8例 (アルコール性LC2例, C型LC5例, B型LC1例, 男性6例, 女性2例, 平均年齢62.1歳) を対象とした.TIPs施行時のchild-Pugh分類はB : 1例, C : 7例である.TIPS実施の主病変は治療抵抗性食道静脈瘤 (EV) : 4例, 難治性腹水 (A) : 2例, A+EV : 1例, 胃静脈瘤 (Lg-f) : 1例であった.2例に肝細胞癌 (HCC) が合併していた.経過観察期間を長期 (36カ月以上), 中期 (6-36カ月), 短期 (6カ月未満) に分類し検討した.長期例は5例で, 2例は80, 69カ月現在生存中である.中期例は認められず, 短期例3例はいずれも難治性腹水がTIPS実施の主病変であった.HCC合併2例中EVがTIPS実施の主病変であった1例は69カ月現在生存中である.死因はいずれも肝不全であった.TIPS実施前の肝機能からは予後の推定は困難で, 難治性腹水例は予後不良であった.以上より長期生存例の特徴はHCCの有無にかかわらず, EVがTIPS実施の主病変であり, 種々の追加治療によりTIPS実施後6カ月以上肝機能が保持された例である
  • 平野 聡, 近藤 哲, 安保 義恭, 近江 亮, 奥芝 俊一, 加藤 紘之
    1999 年5 巻4 号 p. 322-324
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    選択的シャント手術の成績は原疾患によってさまざまな程度で制限を受ける.今回, 原疾患別に治療成績の比較を行うことでシャント手術の適応を再検討した.対象はシャント手術を施行した原因疾患が明らかな食道・胃静脈瘤54症例で, 原因疾患別にウイルス性肝硬変 (VC) 群, アルコール性肝硬変 (AL) 群, 特発性門脈圧亢進症 (IPH) 群の3群に分け, 各群の止血効果, 合併症, 予後などを検討した.その結果, IPH群に2例の門脈血栓を認めたほかに重大な術後合併症はなかった.再出血例は各群1例ずつあったが静脈瘤出血はIPH群の1例のみで, 他はPHGからの出血であった.術後経過中, VH群, AL群にいずれも28.6%の肝癌発生を認めたが, 全例に肝癌に対する治療を完遂できた.累積生存率の比較では各群間に有意な差はなかった.よって, 選択的シャント手術はIPH症例はもちろん, 肝硬変症例にも良い適応であると考えられた
  • 1999 年5 巻4 号 p. 325-338
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
  • 1999 年5 巻4 号 p. 339-354
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/09/24
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