日本門脈圧亢進症学会雑誌
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27 巻, 1 号
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特別寄稿
Editorial
総説
  • 近藤 礼一郎, 岩切 泰子
    2021 年 27 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    リンパ管は組織液の恒常性維持,免疫細胞の制御などの機能を有し,近年ではリンパ管新生が炎症性疾患における局所の炎症改善,組織の修復に関わることが報告されている.肝臓においても,多くの肝疾患で病態の背景に炎症による組織傷害があり,リンパ管新生が新たな治療戦略となるか注目されている.本稿では,肝疾患動物モデルを用いた最近の研究からリンパ管新生の肝臓病治療への可能性について概説する.

  • 小原 勝敏
    2021 年 27 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    食道・胃静脈瘤に対する治療法は,内視鏡治療の導入以来,非侵襲的で有用な治療法として長足の進歩を遂げた.これまでに安全性と有用性,そして患者のQOLを求め,多くの手技の開発や工夫がなされてきた.本稿では,本邦における内視鏡治療の変遷と私が38年間取り組んできた食道・胃静脈瘤に関する基礎的・臨床的研究の成果について述べた.基礎的研究としては治療薬剤(EO, AS, ET, cyanoacrylate系薬剤)の作用機序を解明し,臨床的研究としては基礎的データを基に,より安全かつ効果的な治療手技(EO・AS併用法,地固め法,CA・EO併用法,腎静脈閉塞下CA法など)を導入した.今や,食道・胃静脈瘤の内視鏡治療においては,患者の病態とEUSや3D-CTによる門脈血行動態の状況に応じた最適の治療法を選択することが重要である.

解説
原著
  • 稲福 斉, 國吉 幸男
    2021 年 27 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    Budd-Chiari症候群は,肝静脈流出路の部分的または完全閉塞による血流障害により,肝うっ血から門脈圧亢進症に至る.我々はこれまで71例のBudd-Chiari症候群に対して独自に開発した手術術式を用いて治療を行った.手術は右第6肋間開胸・上腹部正中開腹にて横隔膜を外側1/3部分で弧状に切開し,後方より肝部下大静脈を露出する.大腿動静脈による部分体外循環下に肝部下大静脈を上下で遮断し縦切開する.静脈壁および肝実質を切除し閉塞した肝静脈を可及的に再開通させる.その後肝部下大静脈を自己心膜にてパッチ拡大する.周術期死亡は2例(2.8%)であった.術後平均観察期間は9.7(0.04~29.8)年で,生存率は1年95.6%,5年88.3%,10年71.7%であった.Budd-Chiari症候群に対する我々の術式は,長期生存および術後の肝機能改善が期待される.

  • 菊池 奈穂子, 魚嶋 晴紀, 日高 央
    2021 年 27 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    【目的】慢性肝疾患患者において,サルコペニアとたんぱく質摂取量の関連を分析し,栄養学的介入の課題を明らかにする.【方法】慢性肝疾患患者122例のサルコペニア群と非サルコペニア群において,推奨されるたんぱく質摂取量の達成割合を比較検討した.また,たんぱく質摂取量と握力及び筋肉量との相関関係について検討を行った.【結果】サルコペニア群37例,非サルコペニア群85例.たんぱく質摂取量は,サルコペニア群47.4±13.0 g/日,非サルコペニア群54.4±16.2 g/日でサルコペニア群の方が少なかった(p=0.0103).たんぱく推奨量達成例は,サルコペニア群10例(27.0%),非サルコペニア群40例(47.1%)で,推奨量達成率はサルコペニア群で低かった(p=0.0386).【結論】サルコペニア合併慢性肝疾患患者では,たんぱく質摂取量が少なく,推奨量を達成する栄養学的介入が必要と考えられた.

  • 松井 哲平, 永井 英成, 天沼 誠, 吉峰 尚幸, 小林 康次郎, 荻野 悠, 向津 隆規, 松清 靖, 和久井 紀貴, 中野 茂, 五十 ...
    2021 年 27 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    近年,シャント脳症に対するバルーン閉塞下逆行性静脈塞栓術(BRTO)の有用性が多く報告されているが,一方でBRTOの不応例も存在している.本検討ではシャント脳症に対するBRTO有効/無効例の特徴を明らかにすることを目的とした.シャント脳症に対してBRTOを施行した19例を対象とし,BRTO術後12週未満にII度以上の顕性脳症を発症した群を無効群(n=6),術後12週以上でII度以上の顕性脳症の発症がなかった群を有効群(n=13)としてBRTO前後のChild-Pugh score(CPS),血清アンモニア値(NH3),肝静脈圧格差(HVPG)および骨格筋の指標となるSkeletal muscle index(SMI)を検討した.無効群では有効群に比し有意にBRTO前のHVPGは高値であり(19.0±5.5 mmHg vs 11.2±3.9 mmHg),SMIは有意に低値であった(46.0±9.0 cm2/m2 vs 35.9±5.0 cm2/m2).また施行前HVPGが12 mmHg以上の症例においては,有意差は認められなかったが再発率は高い傾向を認めた.HVPGを用いた治療効果予測の診断能はAUROC0.91(95%CI=0.77-1.04, p<0.001)と良好であり,SMIを用いた診断能はAUROC0.84(95%CI=0.65-1.03, p<0.001)と良好であった.以上より,HVPGおよびSMIはシャント脳症に対するBRTOの効果予測因子になりえると考えられた.

  • 永島 一憲, 入澤 篤志, 高木 優花, 小島原 駿介, 久野木 康人, 福士 耕, 阿部 圭一朗, 金森 瑛, 井澤 直哉, 山部 茜子, ...
    2021 年 27 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    食道静脈瘤に対しEISL単独治療が施行された103例を対象に,内視鏡的硬化結紮法(EISL)単独治療の予後に関する検討を行った.評価項目は,Red Color Sign(RC)再発率,F2以上の形態再発率,出血再発率,再発の関連因子,偶発症,入院期間,とした.65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者に分けた検討も行った.RC再発率は62%,F2以上の形態再発率は26%,出血再発は19.2%であった.RC再発因子は治療前のRC陽性,形態再発因子は女性,出血再発因子は女性・形態再発・RC再発であった.重篤な偶発症は認めず,平均入院日数は16.3日(±6),いずれの検討も高齢者と非高齢者で差は認めなかった.EISL単独治療は,再発率が高く非再発維持期間も短いが,高齢者でも安全に治療でき,処置回数の低減に貢献していた.また,再発因子の検討から,RC陰性例に対して考慮できる治療法と考えられた.

臨床研究
  • 木下 幾晴, 木下 真樹子
    2021 年 27 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    食道静脈瘤に対する内視鏡的治療,特に血管内注入によるEIS(intra-EIS)においては良好なEVISを得ることが重要である.貫通静脈(Pv)の存在を術前に把握することで,治療難渋例の予測につながるが,その存在診断は従来より食道内の脱気水充満(注水法)による細径プローブEUS(UMP-EUS)によって行われてきた.我々は脱気水の代わりに医療用潤滑ゼリーを観察範囲に充填する方法(ゼリー法)を考案した.ゼリー法の利点は観察範囲にゼリーが長くとどまることで,観察条件が安定し術者が手技に集中できることである.このため注水法に比しF1のような小さな静脈瘤でもPvの指摘率が向上した.簡便に行えるゼリー法は食道静脈瘤治療術前診断のためのUMP-EUS手技として有用であると考える.

症例報告
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総会・研究会 司会総括
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