日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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24 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 岩瀬 弘明
    2018 年 24 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
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    孤立性胃静脈瘤の多くは一本の血管で構築されているためヒストアクリルの内視鏡的局注により容易に完全塞栓が可能である.リピオドー®1対1混合液により血液との重合体形成時間を延長し,X線透視により局注範囲が確認できる.最も重要な手技は確実な胃静脈瘤穿刺である.ヒストアクリルとリピオドール混合液局注の奥義は50%ブドウ糖溶液を使用して素早く穿刺針から静脈瘤内に押し出し血管内に不完全な重合体の一塊を形成し,引き続き50%ブドウ糖溶液を透視下で慎重に注入して穿刺部位から抹消側に押し広げることである.2倍希釈されているため複雑な血管構築を有する胃静脈瘤の細部まで,また供血路になる胃壁内の拡張血管まで塞栓可能である.治療に伴う侵襲,合併症は軽度で静脈瘤の完全塞栓例はその後,完全消失し再発も稀で胃静脈瘤の最適な治療といえる.高度肝臓障害,終末期症例においても十分な治療効果が得られ適応は広い.胃静脈瘤の血行動態,血管構築の知識と内視鏡的塞栓療法の奥義の習得により多くの胃静脈瘤に悩む患者を救うことができる.

症例報告
  • 多田 和裕, 太田 正之, 髙山 洋臣, 平下 禎二郎, 丸野 美由希, 清末 一路, 猪股 雅史
    2018 年 24 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代男性.非B非Cアルコール性肝硬変の診断で前医外来加療を行われていたが,胃・十二指腸静脈瘤を認め加療目的に当科紹介となった.胃静脈瘤はLg-cf, F2, Cw, RC0であり後胃,短胃静脈を供血路とし胃腎静脈シャントを排血路としていた.十二指腸静脈瘤は球部に認めF2, Cw, RC0であり後上膵十二指腸静脈を供血路とし右腎被膜静脈を排血路としていた.それぞれにB-RTOを施行した.B-RTO施行後,脾機能亢進症の増悪を認めたため腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.その後,静脈瘤の再発や新生静脈瘤の出現なく経過した.治療開始から4年後に多発肝細胞癌(HCC)を発症したが,TACEおよびRFAにて加療を行うことができた.現在,治療開始からすでに7年以上経過しているが静脈瘤,HCCともに再発は認めていない.B-RTOに脾臓摘出術を加えることで静脈瘤を良好にコントロールでき,その後のHCCに対する治療も十分に施行可能になると思われた.

  • 山内 涼, 横山 圭二, 福田 祥, 田中 崇, 入江 真, 向坂 彰太郎
    2018 年 24 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性.肝細胞癌(HCC)の治療を繰り返していた.2014年2月の腹部造影CTにて,HCCの門脈本幹への腫瘍塞栓(PVTT)と巨大な胃腎シャント(GRS),上部消化管内視鏡検査にてLg-cf, Cw, F3, RC0の胃静脈瘤(GV)を認めた.肝内門脈右一次分枝の血流は保たれており,同年5月,HCCに肝動脈化学塞栓術(TACE),同年6月,PVTTに放射線治療(60 Gy)を施行し,同年8月にGVに対するバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)予定とした.しかし,B-RTO前の上腸間膜動脈,脾動脈造影いずれにおいてもGRSがほぼ描出されず,GRSの血栓化と退縮を確認した.GRS自然退縮の原因として,PVTTの縮小による求肝性門脈血流の回復が考えられた.巨大なGRS自然退縮の症例は現在までに報告がなく,きわめて興味深い症例であったため,報告する.

  • 重福 隆太, 松永 光太郎, 渡邊 綱正, 中野 弘康, 服部 伸洋, 池田 裕喜, 松本 伸行, 高橋 秀明, 奥瀬 千晃, 伊東 文生, ...
    2018 年 24 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    症例1は59歳,男性.アルコール性肝硬変患者で門脈本幹に血栓形成を認めた.血栓溶解療法で門脈血栓は溶解されなかったが側副血行路が形成された.Xenon CTでPVTBF(門脈血流),HATBF(肝動脈血流),PA ratio(門脈・肝動脈血流比)を測定したところ,経時的にPA ratioの改善を認めた.症例2は63歳,男性.背景肝正常で原因不明の動静脈血栓,門脈血栓症を発症した.血栓溶解療法で門脈本幹血栓は消失せず側副血行路が形成され,経時的にPA ratioの改善を認めた.症例3は64歳,男性.急性胆管炎で門脈左枝血栓を認め血栓溶解療法を試みたが消失せず経時的に外側区は委縮した.急性期ではいずれの症例も動脈肝であったが,側副血行路が形成された症例のPA ratioは改善した.一方で側副路形成がない症例の肝実質は委縮した.門脈血栓症では側副路形成が得られると肝血流は改善することが明らかとなった.

  • 工藤 康一, 門野 義弘, 林 洋光, 藤山 俊一郎
    2018 年 24 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    胃全摘術後の食道-空腸吻合部に形成される静脈瘤はまれで,吻合部近傍からの出血という特殊性ゆえ緊急止血法は確立されていない.我々が経験した3症例は全例が慢性肝疾患患者で,術後長期間経過後に吻合部静脈瘤が破裂した.静脈瘤の内視鏡所見は吻合部ヒダ近傍にRCサイン陽性の脆弱な静脈拡張を伴い,出血点は吻合部上かその空腸側に存在した.連続する食道静脈瘤は比較的小さかった.止血手段はEVLが不適のため主にclipを試みたが,確実性に乏しく追加の止血手段は様々であった.胃全摘術後の吻合部静脈瘤破裂に際しては止血に難渋することが多く,内視鏡やIVRなど複数の治療手段を有する施設での加療が望ましい.

テクニカルレポート
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