【目的】末期肝硬変症例では,門脈圧亢進症に加えて門脈血栓・閉塞を合併することが少なくない.教室では,門脈血栓・閉塞に伴う門脈再建困難症例に対しても,“左腎静脈門脈吻合”,“下大静脈門脈吻合”,“Jump Graft”といった再建法による肝移植を施行してきたので,その成績について報告する.
【対象と方法】2014年12月までに成人肝移植を施行した156例中,再肝移植5例を除く151例を対象とした.術前画像診断にて門脈血栓閉塞や狭窄などを認めた症例は28例(18.5%)で,そのうち門脈血栓の程度や側副血行路の発達により,門脈血流変更を伴った門脈再建を施行した症例は12例(Modified群)であった.Modified群12例と対照群139例について,2群間の背景因子,術後短期成績,腎機能の変化,生存率について比較検討した.
【結果】Modified群12例のうち,脳死肝移植は3例で,下大静脈門脈吻合(1例),上腸間膜静脈(SMV)からのJump Graft(1例),左腎静脈門脈吻合(Renoportal Anastomosis)(1例)を施行した.生体肝移植は9例で,うち8例は発達した脾腎シャントを確認し,左内頸静脈を間置した左腎静脈門脈吻合を施行した.残る1例は脾摘後で膵下縁のSMVまで血栓を認めたため,Jump Graftを用いた門脈再建を行った.対照群との比較では,背景因子に有意差を認めず,手術時間はModified群で長かったものの,全例で間置グラフトの開存性は保たれており,門脈吻合に伴う合併症は認めなかった.長期成績では,術後1年,5年,10年生存率はそれぞれ91.7%,91.7%,76.4%であり,対照群と有意差を認めなかった.
【結語】門脈血栓症・閉塞症を伴った末期肝硬変症例に対しても,門脈再建を工夫することで肝移植が可能である.
抄録全体を表示