日本門脈圧亢進症学会雑誌
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20 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • ─IVRとの融合による正しい治療選択─
    末永 昌宏, 高見 秀樹
    2014 年 20 巻 4 号 p. 194-201
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    反復する肝性脳症に対する治療は門脈血中アンモニアが大循環系に多量に排出しないよう短絡路の遮断を要する. 本邦では1970年代からHassab手術を含む胃腎静脈短絡路遮断が行われ, 上腸間膜・下腸間膜静脈から下大静脈への短絡の遮断術も報告されてきた. 門脈圧亢進下の手術で静脈を損傷しない丁寧な剥離操作を必要とするが, 直視下に供血側から排出側まで短絡路を確実に遮断できる. 高度肝障害例が多く手術適応基準の決定は難しい. 短絡によって影響されるICGは信憑性に乏しく, Child A, B症例の手術成績は良好であり, PTを加えたChild-Pugh分類A・Bが適応と考える. PTOやB-RTOなどのIVRの著しい進歩により, 胃腎静脈短絡症例は一部の症例を除いて治療の第1選択となる. しかし上腸間膜・下腸間膜静脈から下大静脈への複数の短絡路が存在するような症例では治療困難で, 可能であれば手術を行った方がよいと考える.
原著
  • 加藤 慶三, 島田 紀朋, 井家 麻紀子, 佐藤 祥之, 塙 紀子, 米澤 健, 立花 浩幸
    2014 年 20 巻 4 号 p. 202-212
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    脾機能亢進症を伴うC型肝硬変に対して, 部分的脾動脈塞栓術(PSE)施行後にインターフェロン(IFN)ベースの治療をした39例を対象にその成績を解析した. PSEにより血小板数(Plt), 白血球数は増加し, IFN治療が全例可能となった. Transient virological response(TVR)/sustained virological response(SVR)率は53.8%(21/39)/37.8%(14/37)であった. TVRに寄与する因子は, 単変量解析で, 年齢≦62歳, Plt≧8.3×104/μl, AFP≦18.4 ng/dl, IL28B(rs8099917)TT, テラプレビル治療であった(各々p=0.017, 0.023, 0.038, 0.048, 0.049). さらにSVRに寄与する因子は, コリンエステラーゼ(ChE)≧180 U/l, IL28B TT, Plt≧8.3×104/μl, アルブミン≧3.8 g/dl, 年齢≦61歳, ICGR15≦30.5%であった(各々p=0.003, 0.005, 0.014, 0.022, 0.031, 0.048). TVR例ではアルブミンやChEが上昇し, AFPが減少した. またNon-virological response例に比して累積肝発癌率が低い傾向があった(p=0.073). PSE後にIFNベースの治療でTVRが得られた症例では, 肝予備能の改善や肝発癌が抑制されることが示唆された.
  • 上田 純志, 吉田 寛, 真々田 裕宏, 谷合 信彦, 吉岡 正人, 平方 敦史, 川野 陽一, 水口 義昭, 清水 哲也, 神田 知洋, ...
    2014 年 20 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    末期の肝硬変や癌性腹膜炎による難治性および癌性腹水は患者のQOLを著しく低下させるため, 症状改善などの緩和を目的とした治療が主となる. 本研究では当科で施行された難治性および癌性腹水に対する腹腔-静脈シャントの成績を報告する. (対象と方法)1998年3月から2012年7月までに腹腔-静脈シャントを施行された62例を対象とした. 平均年齢62.3歳. 男性42例. 女性20例. 原疾患は肝硬変が47例, 癌性腹膜炎が15例であった. (結果)肝硬変群が癌性腹膜炎群に比して有意に生存率が高かった. 尿量, 腹囲を挿入前後で比較すると両群ともに有意な改善を認めた. また肝硬変では, Child-Pugh B群(22例)がC群(25例)に比して有意に生存率が高かった. 尿量, 腹囲を挿入前後で比較するとChild-Pugh B, C群ともに有意な改善を認めた. (結語)腹腔-静脈シャント術は予後の改善よりもQOLの改善に貢献すると考えられ, 原疾患の種類や肝硬変の進行度にかかわらず有用であると考えられた.
症例報告
  • 魚住 祥二郎, 馬場 俊之, 崔 翔栄, 清野 哲孝, 橋本 東児, 本田 実, 後閑 武彦, 吉田 仁
    2014 年 20 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    症例はアルコール性およびB型肝硬変(Child-Pugh grade B)の60歳代男性で, 7年前に膀胱癌にて膀胱全摘および右下腹部に回腸導管造設の既往がある. 門脈圧亢進症による利尿剤不耐性の難治性腹水を認め, 回腸導管に生じたストマ静脈瘤出血を繰り返していた. 大量出血によりヘモグロビン値は5.0 g/dlと著明に低下したため外科的に静脈瘤を縫縮し, 一時的に止血が得られた. しかし, 再出血が危惧され, 難治性腹水の治療と回腸導管ストマ静脈瘤の出血予防のため経頸静脈的門脈大循環短絡術(transjugular intrahepatic porto-systemic shunt ; TIPS)を施行した. 門脈大循環圧較差(portosystemic pressure gradient ; PSG)は17 mmHgから11 mmHgに低下し, 腹水の改善により体重は61 kgから56 kgに減少した. 回腸導管ストマ静脈瘤は消失し, その後, 腹水の貯留, ストマ静脈瘤出血は認められていない. TIPSは本症例のように門脈圧亢進症を合併した難治性腹水および回腸導管のストマ静脈瘤出血に対する有効な治療と考えられる.
  • 町田 卓郎, 堀田 彰一
    2014 年 20 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    難治性腹水を有する肝細胞癌合併肝硬変に対して経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(transjuglar intrahepatic portosystemic shunt : 以下TIPS)施行後にラジオ波凝固療法(radiofrequency ablation : 以下RFA)を施行し, 良好な治療経過を得た2症例を経験した. 症例1は61歳男性. アルコール性肝硬変にて他院通院中, 食道静脈瘤の増悪, 難治性腹水にて紹介入院. 大量の腹水, 食道および胃静脈瘤, 肝S8に径8 mmの肝細胞癌を認めた. 内科的治療にも反応せず, 門脈圧の低下を目的に部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization : 以下PSE)を施行. その後, TIPSを追加した. TIPS後腹水, 食道および胃静脈瘤は消失. 肝S8の肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma : 以下HCC)に対してRFAを施行した. 症例2は49歳男性. アルコール性肝硬変, 反復する門脈血栓症にてワーファリン内服中であった. 難治性腹水のため入院. 門脈本幹の血栓とS8に径8 mmの肝細胞癌を認めた. TIPSを施行し, 腹水は減少し門脈血栓症も消失した. 肝S8のHCCに対してRFAを施行した. 2症例とも現在まで再発なく経過観察中である.
テクニカルレポート
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