TIPS施行症例における肝予備能の推移, シャントの開存性, 予後を検討した.1996年1月から2001年4月までにTIPSを施行した症例のうち経過を追跡しえた28例を対象とした.TIPSを施行した原因疾患は胃食道静脈瘤16例, 難治性腹水10例, PHG2例.6例にHCCの合併を認めた.1年以上生存した26例のChild-Pughscoreの平均は, 術前8.4, 4週後8.0, 1年後8.8であった.評価項目のうち腹水は術後有意に改善したが, PT, 脳症, T-Bilが悪化する傾向にあった.術後17例 (60.7%) にシャント狭窄を認め, 拡張術を行った.拡張術を行うことにより, シャントの1, 2, 3年開存率は96, 96, 87%であった.静脈瘤の再出血を来した症例は1例のみであった.1, 3, 5年生存率はそれぞれ92, 40, 30%であり, 平均生存期間は27カ月であった.死亡例は15例で, 主な死因は肝不全6例, HCC4例であった.1年後のC-Pscoreが上昇傾向ではあるが有意差はないため, TIPSの肝予備能に及ぼす影響は軽度であると考えられた.
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