肝硬変症における脾摘術前後の門脈血行動態の変化について検討した. 腹腔鏡下脾摘術前後で超音波ドプラにて門脈血行動態を評価した肝硬変57例(男/女=29/28, 57.5歳, Child-Pugh A/B/C=19/29/9)を対象とし, 術前・術後7─10日目に超音波ドプラや肝静脈カテーテル検査による門脈血行動態, および末梢血・肝静脈血中endothelin-1(ET-1), NO
Xについて評価した. 摘脾により, 門脈血流速度は変化しなかったが, 断面積は0.83→0.62(cm
2), 血流量は699→575(ml/min)と有意に低下し, うっ血係数も0.057→0.044(cm・s)と有意に低下した. 肝静脈圧較差は23.9→17.2(cmH
2O)と有意に低下し, 肝内門脈血管抵抗も0.033→0.026(cmH
2O/ml/min)と有意に低下した. 摘脾により, ET-1値は末梢血で2.95→2.11(pg/ml), 肝静脈血でも2.37→1.83(pg/ml)と有意に減少した. NO
X値は末梢血で29.2→25.0(pg/ml)と低下傾向を示し, 肝静脈血では24.5→30.9(pg/ml)と増加傾向を示した. 以上より, 肝硬変の門脈血行動態において, 脾腫は門脈流入血流増大だけでなく, ET-1やNOを介して肝内門脈血管抵抗増大にも関与している可能性があると考えられた.
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