日本門脈圧亢進症学会雑誌
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17 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • Hiroaki Iwase, Masaaki Shimada, Tomoyuki Tsuzuki, Noboru Hirashima
    2011 年17 巻4 号 p. 137-144
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    Background and study aims: Endoscopic tissue glue cyanoacrylate (Histoacryl) injection has become established as an effective, nonsurgical method of treating bleeding gastric varices. However, there are still some controversies concerning technique, complications, and long-term efficacy. In this 17-year study, the efficacy and safety of treatment of gastric variceal bleeding with Histoacryl were clarified and the baseline patient-related prognostic factors were identified.
    Patients and Methods: Seventy-one patients with fundal gastric variceal bleeding underwent endoscopic obliteration with Histoacryl diluted with 5% Lipiodol (1:1). The gastric varices and visible supply veins were occluded under fluoroscopic guidance.
    Results: The primary successful hemostasis rate was 95.8%. Fifty-five of the patients (77.5%) remained free of variceal bleeding during the entire follow-up period. Complications were generally mild; however, five patients developed accidental complications: one developed splenic infarction, two developed splenic vein thrombosis, and two developed gastric wall necrosis. The median survival time was 5.5 years and the one-year, 10-year, and 15-year cumulative survival rates were 76%, 28%, and 12%, respectively. In the final multivariate baseline model, the Child-Pugh classification was identified as a poor prognostic factor. With regard to blood parameters, the serum total bilirubin level, prothrombin time, and platelet count were significant prognostic factors.
    Conclusion: Endoscopic obliteration with Histoacryl was highly effective for the management of fundal gastric variceal bleeding in the short term and the long term. The prognosis of the patients depended on the severity of the underlying liver disease. KEY WORDS: gastric variceal bleeding, cyanoacrylate glue, survival, complications, prognostic factors
  • ─経過観察例による検討─
    上嶋 昌和, 松村 雅彦, 小島 邦行, 梅本 典江, 瓦谷 英人, 福井 博
    2011 年17 巻4 号 p. 145-147
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    われわれは2005年に無治療経過観察できた孤立性胃静脈瘤症例を解析し,その出血予知因子として(1)高度の肝障害(2)食道静脈瘤硬化療法の既往(3)大酒家(4)胃静脈瘤上の発赤・びらん(5)肝細胞癌の合併の5項目が重要であり,とりわけ食道静脈瘤治療後に出現・増悪するものは短期間に破裂する場合が多く,迅速に予防的治療を行う必要があることを発表した.これを踏まえ当科の孤立性胃静脈瘤の予防治療適応を「F2以上で発赤びらんを有し,かつ他の予知因子のいずれかが該当する症例」と決定した.この基準を定めた2005年までと,基準決定後の2006年以降とで孤立性胃静脈瘤出血を減らすことができたかをretrospectiveに検討したところ,F2以上の静脈瘤に関しては出血率を有意に減少させることができた.当科の治療基準は妥当かつ有効であることが示唆された.
臨床研究
  • 俵藤 正信, 佐久間 康成, 藤原 岳人, 太田 真, 宇井 崇, 瑞木 亨, 細谷 好則, 長嶺 伸彦, 安田 是和
    2011 年17 巻4 号 p. 148-152
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    当科では内視鏡治療とB-RTOが困難な胃食道静脈瘤に対して直達手術である血行郭清術を施行している.2002年から脾温存,2004年から血行郭清にLigaSureを導入,さらに2007年から開腹創を縮小して2009年には鏡視下手術へと血行郭清術の低侵襲化を試みた.対象は16例全例胃静脈瘤で,脾温存13例・脾摘3例,LigaSure使用12例で,大開腹9例・上腹部正中切開3例・鏡視下4例であった.脾臓を温存しLigaSureでの血行郭清術は,術後の重篤な合併症や再出血がなく安全な術式と思われ,長期成績も良好であった.さらに鏡視下等の創の縮小は,出血量低下と在院日数の短縮が期待できる.一方,顕在してくる食道静脈瘤への対応が重要であり,定期的内視鏡検査と予防的内視鏡的治療の必要性も示唆された.
症例報告
  • 横山 圭二, 阿南 章, 入江 真, 高良 真一, 浦川 博史, 東原 秀行, 吉満 研吾, 向坂 彰太郎
    2011 年17 巻4 号 p. 153-158
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.C型肝硬変症,肝性脳症の診断で当科入院.各種画像検査にて胃静脈瘤(Lg-cf, F2, RC-)と,巨大な胃─腎短絡路を認めた.内科的治療では肝性脳症のコントロールが不良であり,肝性脳症改善を目的に,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行した.B-RTO後速やかに肝性脳症は消失し,肝予備能の改善も認めた.B-RTO後に食道静脈瘤が増悪し,内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)で予防治療を行った.B-RTO施行2日後に腰背部痛が出現,膵酵素の上昇,造影CTにて膵の軽度腫大と膵周囲の脂肪織濃度の上昇,軽度の液体貯留を認め,急性膵炎と診断した.膵炎は軽症で,内科的治療で速やかに改善した.今までに同様の報告例はなく,本症例が,B-RTO後に急性膵炎を発症した初めての症例報告である.
  • 塩田 浩二, 緒方 俊郎, 佐藤 寿洋, 安永 昌史, 奥田 康司, 木下 寿文, 鹿毛 政義
    2011 年17 巻4 号 p. 159-164
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.アルコール性肝硬変,脾腎Shuntによる高アンモニア血症と肝性脳症にて入退院を繰り返していた.前医にてバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を試みたが,脾腎Shunt径が大きく治療が不可能なため,外科治療目的にて当院紹介となった.入院時身体所見で脳症(-),黄疸(-).入院時採血で血中アンモニア160μg/dl,血小板8.5万/μl,ICG15分値78.4%,Child-Pugh分類Grad B(8点).腹部造影CTでらせん状に蛇行する最大径34mmの巨大Shuntを認め,流入血管は脾静脈,流出血管は左腎静脈であった.脾腎Shunt血流減量,および肝血流改善の目的で脾摘および門脈圧モニタリング下に調節的Shunt binding術を施行した.術中門脈圧は開腹時12mmHg,脾摘後12mmHg,調節的Shunt binding術後15mmHg(圧上昇率25%)であった.術後から現在まで肝性脳症は一度も認められず,術後1年3カ月目で外来通院中である.
  • 菊池 志乃, 鍋島 紀滋, 谷口 尚範, 中村 武史
    2011 年17 巻4 号 p. 165-168
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.10数年前よりC型慢性肝疾患としてフォローされていた.数年前より肝細胞癌を発症し,肝動脈塞栓術による治療-再発を繰り返していたが,2年前より脳症が出現し,肝癌治療は行わずに対症療法を行っていたが,連日脳症のため救急搬送や救急受診を繰り返すようになったため,入院となった.CTに拡張・蛇行した脾腎短絡が認められ,上腸間膜静脈由来の血流が脾腎静脈系短絡へ流出していることが脳症の主要な因子と考えられた.まず,親バルーンを脾腎短絡合流部で拡張し,マイクロカテーテルをシャント内へ挿入,5%EOI 60mlを子バルーンの拡張下に3回に分けて注入しEOIの停留を確認した.16時間後の造影にて良好な塞栓効果を確認した.治療後肝性脳症の症状は速やかに消失し,肝予備能もChild-Pugh Aに改善したため,多発肝癌に対しリピオドール加のIA-callの動注治療を複数回行い,良好な腫瘍縮小効果を得た.
総説
  • 橋爪 誠
    2011 年17 巻4 号 p. 169-173
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    脾臓摘出術は,古くはBanti病に対する治療法として,また食道静脈瘤治療法の一つとして報告されたが,近年の内視鏡的治療の出現により手術療法自体の適応が少なくなってきた.しかし,内視鏡外科手術の普及とsealing vessel等の新しい機器の発達により腹腔鏡下脾臓摘出術が安全・確実に施行できるようになった.特に,脾臓摘出術により長期に血小板数が維持できることや,肝機能の改善,肝線維化抑制,肝再生にも影響があることが報告されるようになり,脾臓摘出術の適応が見直されてきた.現在では,内視鏡的治療抵抗性の難治性食道胃静脈瘤治療目的のほか,IFN治療導入目的や肝癌治療目的など慢性肝疾患患者に対しても積極的に施行されるようになってきた.今後は,さらに分子標的治療や幹細胞を用いた肝再生療法との集学的治療の一環としてその役割が期待される.
臨床経験
  • 堀田 直樹, 綾田 穣, 黒川 剛
    2011 年17 巻4 号 p. 174-177
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者における栄養療法として,BCAA製剤の投与に加え,エネルギー代謝異常に伴う早朝空腹時の飢餓状態を抑制するためにLES療法も推奨されている.今回,肝不全用経腸栄養剤により腹部膨満感を認め内服を拒否した76歳男性の肝硬変患者に対して,LESとしてBCAA含有食品(ヘパスII,(株)クリニコ)を投与し,2週間投与での早朝空腹時の飢餓状態(遊離脂肪酸は,投与前574μEq/lから1週目には268μEq/l,2週目には272μEq/l))の改善を認めた.また,副次項目として,栄養状態(BTRは,2.9から3.43と1週目に改善を認め,2週目には,3.34と低下は認めていなかった.Albは,3.4g/dlから4.0g/dlと1週目に改善を認め2週目は,3.8g/dlと軽度低下を認めた.Pre-Albは,投与前は,12mg/dlから14.8mg/dlと上昇を認め,2週目は,14.1mg/dlとほぼ変化を認めていなかった.レチノール結合タンパク(Retinol Binding Protein:RBP)は,投与前は,1.3mg/dlで1週目には1.5mg/dlと上昇を認め,2週目も1.4mg/dlと変化は認めなかった.)の改善も認めた.本栄養剤投与にては,腹部膨満の出現は認めず,継続して内服が可能であった.本食品は,125ml, 150kcalである.LESの推奨されている200kcalよりは50kcal少ない製品であるが,今後症例を増やすことにより,本食品での効果を検討する予定である.
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