日本門脈圧亢進症学会雑誌
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25 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 巽 亮二, 小関 至, 推井 大雄, 山口 将功, 木村 睦海, 荒川 智弘, 中島 正明, 桑田 靖昭, 大村 卓味, 狩野 吉康
    2019 年 25 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    当院で緊急内視鏡検査を実施した直腸静脈瘤破裂症例の特徴を検討した.緊急内視鏡検査(来院から24時間以内)を実施した直腸静脈瘤破裂21例(延べ27例)を対象とした.出血時にショックを疑った症例(収縮期血圧≦90 mmHgまたは心拍数≧100回/分)は6例(22%)であった.直腸静脈瘤破裂前後のヘモグロビン値を比較したところ,ヘモグロビン低下量は0.4 g/dl(-1.5~2.8)で濃厚赤血球の輸血を行った症例は7例(26%)であった.直腸静脈瘤の内視鏡所見は,形態がF1/F2/F3:9(33%)/12(44%)/6(22%)例,RC陽性が14例(52%),形態がF2, F3またはRC陽性の症例は24例(89%)であった.直腸静脈瘤破裂症例は輸血を必要とする出血症例は少なく,内視鏡所見では形態がF2またはF3,もしくはRCを認める症例が多かった.

  • 平嶋 昇, 岩瀬 弘明, 島田 昌明
    2019 年 25 巻 4 号 p. 224-229
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)患者にTransient elastography(FibroScan®)で前向きに経過観察して肝脂肪度と肝硬度の変化と関連する因子を検討した.

    【対象と方法】FibroScan®を年1回施行し,計2回以上施行したNAFLD 80症例である.肝脂肪の測定にはCAP(controlled attenuation parameter;dB/m)を肝硬度liver stiffness(LS)の測定には弾性度(kPa)を用いた.皮下厚20 mm以上はXLプローブを使用し,CAP≧232 dB/mをNAFLD,LS≧7.9 kPaを肝線維化ありと定義した.

    【結果と考察】平均年齢64歳,糖尿病非合併は50例,合併は30例,平均観察期間2.7年,平均CAP 280 dB/m,平均LS 8.5 kPaであった.CAPの改善/不変/悪化は順に19例(24%)/46例(57%)/15例(19%)であった.CAP変化量は体重(body weight;BW)変化量のみが関連した(p<0.001).LSの改善/不変/悪化は順に11例(14%)/61例(76%)/8例(10%)であった.LS変化量はaspartate aminotransferase(AST)変化量(p<0.001),alanine aminotransferase(ALT)変化量(p<0.001),CAP変化量(p<0.05)が関連した.

    【結論】NAFLDとそれに伴う線維化の改善を得るには,BW減量によりAST/ALTとCAP低下を確認し,最終的にはLSの低下が必要である.したがって,BW,肝機能検査AST/ALT,FibroScan®の組み合わせはNAFLDの経過観察に有用である.

  • 山宮 大典, 荒井 邦明, 宮澤 正樹, 北原 征明, 鷹取 元, 北村 和哉, 山下 竜也, 金子 周一
    2019 年 25 巻 4 号 p. 230-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)は本邦で幅広く施行されているが,合併症として術後に肝動脈門脈短絡(APF)が形成されることがある.短絡の血流が多い場合,静脈瘤,腹水,脳症,門脈血栓の出現増悪などの門脈圧亢進増悪症状(PH症状)を来す.今回我々はRFA後のAPFについて自験例の検討を行った.RFA後に生じたAPFによるPH症状の増悪を認め,かつ治療を要したのは,1638例中9例(0.55%)であった.また,retrospectiveな検討では,治療数日後の効果判定CTの時点で,原因となるAPFの合併を認識可能である症例が多かった.そのためRFA後の効果判定時のCTではAPFの有無を確認し,合併した場合はPH症状の発生に留意した慎重な経過観察が求められる.PH症状が出現した際は対症的な治療のみならず,経カテーテル的動脈塞栓術にてAPF自体を治療することが望ましい.

臨床研究
  • 森 奈美, 髙木 慎太郎
    2019 年 25 巻 4 号 p. 238-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    肝性脳症は肝硬変における重篤な合併症のひとつである.難吸収性抗菌薬であるリファキシミンは,肝性脳症に対する有効性が示されており,推奨されている.本邦では2016年に保険認可されたが,日本人における実臨床のエビデンスは少ない.そこで,昏睡度II度以上の肝硬変合併肝性脳症患者に対して合成二糖類に3か月以上リファキシミンを併用投与した28例を対象に,リファキシミンの肝性脳症に対する治療成績を検討した.治療開始時における昏睡度はII度14例,III度14例であり,治療開始後3か月目にはI度以下20例,II度7例,III度1例に改善した.治療開始後I度以下に改善した後,II度以上の顕性脳症への累積再発率は3か月25%,6か月29%,12か月46%であった.今回の検討において有害事象を認めた症例はなく,リファキシミンは安全に投与することが可能であり,過去の合成二糖類単独投与の報告と比較して同様の効果の傾向を示した.

症例報告
  • 杉原 英治
    2019 年 25 巻 4 号 p. 243-250
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    高度の食道・胃静脈瘤および多量の胸腹水を有する60歳代女性の肝硬変患者に対し,スネアを用いたEnhanced-Snare TIPSを施行した.手技は,肝内門脈P3を穿刺し,後区域枝にスネアカテーテルを留置.また内頚静脈より中肝静脈にグースネックスネアを留置.この2個のスネアを貫くようにGun-sight positionにて18 G PTCD針にて穿刺した.ガイドワイヤーを挿入し,短絡路をバルーン拡張した上で,ガイドワイヤーを門脈P3および内頚静脈より引き出し,pull-throughとした.短絡路にE-Luminexxステントを留置した.門脈圧は低下,胸腹水は消失,食道・胃静脈瘤は改善した.一時的に肝性脳症を来したが,保存的に改善した.本法はTIPS針が不要で,内頚静脈の様に遠位からでなく肝の周囲で主な手技を行うことができるなどTIPSよりも施行が容易な点もあり,有用な方法と考える.

  • 榮枝 弘司
    2019 年 25 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    胃全摘術後の食道空腸吻合部静脈瘤は,報告例も少なく,適切な治療法は確立されていない.症例1は,内視鏡にて吻合部食道側からの出血が疑われたが,活動性出血はなく,血管造影および経皮経肝門脈造影を施行して,第一空腸静脈が供血路で,奇静脈が排血路であることを確認した.症例2も内視鏡にて吻合部空腸側からの出血が疑われ,供血路は第一空腸静脈で,排血路は奇静脈,半奇静脈,肋間静脈など多数存在していた.いずれもバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)は困難であったため,まず経皮経肝門脈塞栓術を施行し,数日後に内視鏡的硬化療法(EIS)を追加した.症例3は心房細動でワーファリンを服用しており,EISのみを施行した.これまで胃全摘後の吻合部静脈瘤にPTOとEISを併用した報告はなかったが,今回併用した2症例では,いずれも2年半と5年3か月の時点で吻合部静脈瘤の再発を認めておらず,長期的に見ても有用な可能性がある。

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