日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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ISSN-L : 1344-8447
19 巻, 1 号
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Editorial
総説
  • 野口 和典
    2013 年19 巻1 号 p. 19-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    腹腔-静脈シャント(シャント)術は,腹腔内と中心静脈を一方向弁付きのシリコンカテーテルで短絡し,腹水を強制的に大循環に還流し,難治性腹水を減少・消失させる治療法である.多くは非代償性肝硬変の大量腹水が対象となるが,この門脈圧亢進状態下の腹水貯留では,門脈圧>腹腔内圧(腹水圧)>中心静脈圧(CVP)の順で,圧勾配が存在している.シャントによる腹水還流は,術後早期は腹水圧―CVPの圧差に依存し,晩期は呼吸に伴う腹腔圧―胸腔圧差によって形成される.大循環に還流された腹水は,尿として排泄されるため,術後1~2週で腹水圧―CVPとなり,CVPも次第に低下正常化する.晩期のシャント内流量は,門脈内から腹腔内に移動する水のみとなり,量も減少してくる.この圧勾配全般の減少による術後の食道静脈瘤消退例が存在する.以上のことにより,術前の門脈圧亢進状態には,腹水貯留自体が,圧亢進因子として加味している可能性がある.
臨床研究
  • 星野 崇, 林 星舟, 今村 潤, 木村 公則, 佐伯 俊一
    2013 年19 巻1 号 p. 25-32
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    当院で経験したHIV感染者に合併する食道静脈瘤症例7例の臨床的検討を行った.3例がHCV,2例がHBVとの重複感染例であり,非B非Cが2例であった.HCCの合併は2例にみられた.F2以上,もしくはRC1以上の食道静脈瘤に対して内視鏡治療(硬化療法・結紮術)を行い,平均2.1回の内視鏡的治療で全例F1以下,RC0が得られた.観察期間中(平均30.4か月)に追加治療を4例に必要としたが,食道静脈瘤破裂を来した症例はなかった.治療後の平均生存期間は,HCV重複感染例では9か月,HCC合併例では13.5か月と予後不良であった.死因は肝不全3例,HCC1例,脳出血1例と肝関連死が多く,AIDS関連死はみられなかった.非B非C例には抗HIV薬の関連を疑う症例もみられた.HIV・HCV重複感染例では肝疾患の進行が速い症例があることや,抗HIV薬に起因する門脈圧亢進症が生じうることは認識する必要がある.
症例報告
  • 井深 貴士, 荒木 寛司, 小野木 章人, 森脇 久隆
    2013 年19 巻1 号 p. 33-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.2003年よりアルコール性肝硬変にて加療中,2004年から食道静脈瘤の加療歴を複数回認める.2009年3月の内視鏡検査では食道静脈瘤は認めないが,EUSにて上切歯列より37cmの胸部下部食道に径8mmの貫通血管を認めていた.腹部造影CTにて著明な傍食道静脈の発達を認め,貫通血管も確認された.2010年8月吐血にて入院となった.緊急内視鏡にて貫通血管からの噴出性の出血を認めた.内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation : EVL)を試みるも吸引結紮できず,ショック状態となった.S-B tube(Sengstaken-Blakemore Tube)を留置し人工呼吸管理とした.翌日出血部位にヒストアクリル®とリピオドール®混合液(83%ヒストアクリル®溶液)による内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy : EIS)を行った.硬化療法後止血し全身状態は安定し,抜管し退院した.治療12か月後の内視鏡検査にて治療部位は瘢痕化しており,静脈瘤の再発なく,EUSにて貫通血管の消失を確認した.
  • 柾木 慶一, 相方 浩, 河岡 友和, 田中 未央, 苗代 典昭, 本田 洋士, 中原 隆志, 宮木 大輔, 村上 英介, 長沖 祐子, 高 ...
    2013 年19 巻1 号 p. 38-44
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.C型肝硬変,肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma : HCC)に対し当院通院中であった.CTでは下腸間膜静脈を供血路とした直腸静脈瘤を認め,静脈瘤の血管径は11 mmと拡張を認めた.下部消化管内視鏡では下部直腸後壁にF3相当,RC1の静脈瘤を認めた.同病変は出血のリスクがあると考え治療を予定したが,静脈瘤径が太く内視鏡的治療に抵抗性と思われ,またHCCに伴うVp4の門脈腫瘍栓のため経門脈的治療も困難と考えられた.そのため全身麻酔下・開腹下に経回結腸静脈的静脈瘤塞栓術,並びに排血路での塞栓術を組み合わせた同時性バルーン下塞栓術を施行した.術後軽度腹水を認めたが利尿剤投与し速やかに改善した.本症例は術後約5か月目に肝不全死の転帰をたどるも,経過中直腸静脈瘤からの出血を認めず,また画像上静脈瘤は縮小したままであった.今回我々は直腸静脈瘤に対してIVR治療が奏功した症例を経験したので報告する.
テクニカルレポート
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