日本門脈圧亢進症学会雑誌
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21 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 藤崎 宏之, 野浪 敏明, 永田 博
    2015 年21 巻4 号 p. 202-208
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症は心拍出量増加,末梢血管抵抗低下に示される全身循環亢進を呈する.この発生要因として循環血漿量の増大,estrogen, false neurotransmitter, catecholamine, glucagon, endotoxinなどの増加,血管の拡張あるいは収縮を引き起こすNOやendothelinなどの関与がある.門亢症の全身循環亢進は代謝を維持するために代謝低下の代償的意義があると考えられる.門亢症は肺循環にも異常をきたし,低酸素血症や肺shunt率の上昇がみられる.肺血管抵抗は低下し,肺循環においてもhyperdynamic stateである.低酸素血症の原因は,肺内シャント,換気血流不均等などである.Steroidは肺shunt率を低下させ,PaO2を改善させる.門亢症患者の外科手術後や肝不全などの全身管理が必要な時には,全身循環亢進や肺循環異常を考慮した管理が重要である.
原著
  • 和栗 暢生, 大﨑 暁彦, 佐藤 宗広, 五十嵐 健太郎
    2015 年21 巻4 号 p. 209-216
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    【緒言】C型肝硬変例のインターフェロン(IFN)治療の成績は不良であり,併存する肝癌や門脈圧亢進症も含め,管理は難しい.【対象と方法】2005年以降,IFN治療がなされたC型肝硬変25例を対象とし,SVR率に加えて,門脈圧亢進症や肝癌の状況についても後方視的に検討した.【結果】Genotype 1b・低ウイルス量1例と2a 6例は全例で,2bは3例中2例(66.7%)のウイルス排除(SVR)を得たが,1b・高ウイルス量では17例中5例(29.4%)と低率であった.肝癌再発例,IFN無効例は予後不良であった.部分脾動脈塞栓術は血小板数を増加させ,IFN完遂率を上昇させた.【結語】Genotype 1b・高ウイルス量症例以外はSVR率も良好であった.肝癌治療後症例においても,SVRによる予後改善が期待された.門脈圧亢進症や肝癌など合併する病態や,副作用に注意しつつ,IFN治療を行っていくべきである.
  • 野口 隆一, 瓦谷 英人, 吉治 仁志, 美登路 昭, 上嶋 昌和, 福井 博
    2015 年21 巻4 号 p. 217-221
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    我々は当科で利尿薬抵抗性難治性胸・腹水患者と診断され,トルバプタンを投与した22例を対象とし,治療効果に関する因子について検討した.
    平均年齢は66.7歳,原疾患としてHBV 1例,HCV 8例,アルコール2例,その他11例,肝予備能はChild-Pugh B 6例,C 16例,トルバプタン投与量は3.75 mg/日が4例,7.5 mg/日が18例であった.トルバプタン投与により肝不全や門脈血栓症を含む54.5%の症例が体重減少を認めた.無効群は血清BUNが有意に高く,underfillingの状態を反映していると考えられた.無効群は尿中Na濃度が有意に低値であった.飲水制限を行うことで著効する症例を経験した.以上より,トルバプタンはunderfillingの病態で効果不良となることが考えられ,BUNや尿中Na濃度がトルバプタンの治療効果を予測する可能性が示唆された.
症例報告
  • 古山 準一, 水尾 仁志
    2015 年21 巻4 号 p. 222-228
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    70歳,女性.2010年5月B型肝硬変症にてentecavir開始.2012年4月,肝性脳症発症.血小板数は3~4万/μl台.CT検査にて腎および横隔静脈系短絡路を認めた.部分的脾動脈塞栓術後のB-RTOでは後胃静脈(PGV)中心にethanol(ET),microcoil, EOIで治療.その後,特発性細菌性腹膜炎を生じ肝性脳症も認めた.2回目のB-RTOではPGVおよび短胃静脈(SGV)にET, EOIを注入するも無効.3回目のB-RTOではPGVおよび左胃静脈をN-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)にて塞栓.SGVにEOIを注入した.術後CTにて太い短絡路の半分に閉塞を認めたが腎静脈系短絡路は開存していた.その後,肝性脳症の再発はなく,ICG R15の改善を認めた.EOIを中心としたB-RTOでは難治性であったがNBCAにより限局的塞栓が達成され肝機能の改善が得られた.
  • 北嶋 俊寛, 藤本 康弘, 波多野 悦朗, 田浦 康二朗, 柴田 登志也, 上本 伸二
    2015 年21 巻4 号 p. 229-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で,膵頭部癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,Child変法再建術を施行し,術後膵液漏を認めたものの軽快退院した.術後8か月目に下血にて緊急入院し,画像精査・血管造影の結果,再発所見はなく,門脈本幹,脾静脈・門脈合流部の高度狭窄,肝外側副血行路の発達を認め,挙上空腸からの消化管出血と診断し,経皮経肝門脈ステント留置術を施行した.しかしステント留置4日後に大量下血をきたし,大腸全域にわたりtelangiectasiaを認めた.経皮経肝門脈造影では,側副血行路を介して肝内門脈が造影され,ステント内血栓閉塞の所見であった.門脈ステント再留置術とバルーン拡張を施行し,門脈本幹は良好に造影され,側副血行路は造影されなくなった.良性肝外門脈閉塞にはステント留置は有効であるものの,早期ステント内血栓閉塞に注意が必要である.
  • 髙木 慎太郎, 森 奈美, 相坂 康之
    2015 年21 巻4 号 p. 238-243
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー
    症例29歳女性.正常分娩後,産褥18日目より心窩部痛が出現し,拡張した門脈内に構造物を指摘され当科紹介,腹部超音波,CTによる画像診断にて門脈瘤に合併した門脈血栓症と診断.ワルファリンカリウム,ヘパリンによる抗血小板療法,抗凝固療法を開始.開始34日目には,cavernomatous transformationの発達を認め,118日目には血栓の縮小傾向を認めた.妊娠時には血栓塞栓症は発生しやすく,門脈血栓の合併の報告は少なくはないが,分娩後産褥期に門脈瘤に合併し血栓症を認めたという報告はなく,非常にまれな症例と考えられるため報告する.
テクニカルレポート
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