アルコール性肝硬変の肝障害や合併症が飲酒により悪化することはよく知られており, 肝機能および門脈圧に禁酒が与える影響を検討することは重要と考えられる.対象は食道静脈瘤を有する男性アルコール性肝硬変16例 (平均年齢56.8歳) で, 飲酒群9例, 禁酒群7例であった.食道静脈瘤治療前に飲酒量, 禁酒期間肝機能, 門脈圧について両群で比較した.治療前の禁酒群の平均禁酒期間は最短2カ月, 最長36カ月, 中央値15.4カ月であったが, 飲酒群に比べGOT, GPT, γ-GTPは有意に低値で, かつAlb, PT活性は有意に高値であった.門脈圧は, 飲酒群の26.0±2.6mmHgに対し, 禁酒群では19.0±7.4mmHg (3例は15mmHg未満) と低値の傾向があった.以上より, アルコール性肝硬変症例において約1年の禁酒でも門脈圧と肝障害の軽減に有用であり, 継続して禁酒すれば, 食道静脈瘤の再発が抑制される症例もあると示唆された.
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