日本門脈圧亢進症学会雑誌
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Editorial
原著
  • 近藤 真由子, 大木 隆正
    2021 年 27 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    非代償性肝硬変に伴う肝性脳症による再入院率や生存率に関して検討した.2009年1月から2017年6月までに初発の肝性脳症の入院加療を要した85例を対象にした.年齢(中央値)は73.7歳,男性42例,Child Pugh grade C 64例,肝細胞癌治療中29例,観察期間の中央値は178日間であった.初回入院中に14例が死亡した.退院した71例において,51例が肝性脳症再発により再入院を要し,累積再入院率は1か月で27.4%,3か月で45.8%であった.肝性脳症再発による再入院に関与する因子に関して,単変量解析ではChild Pugh 12点以上(p=0.007),肝細胞癌治療中(p=0.04)が抽出され,多変量解析ではChild Pugh 12点以上が有意な因子であった(p=0.005).累積生存率は1年49.7%であり,肝細胞癌の症例において予後が不良であった(p<0.001).

  • 荒木 拓次, 今泉 瑛, 岡田 大樹, 佐々木 優, 大西 洋
    2021 年 27 巻 4 号 p. 271-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    【目的】PSE前後門脈圧変化を動脈径から推定し実測値との相関を検討した.【方法】PSE 13例でPSE前後の肝静脈圧と楔入圧の圧較差(HVPG)を算出,PSE後CTで梗塞率を算出,PSE前腹腔(CA),上腸間膜(SMA),脾(SA),総肝動脈(CHA)径を計測した.門脈血流モデルは(1)門脈圧は動脈血流で規定,(2)全血流はCAとSMAから供給,比は半径のx乗に比例,(3)CA血流はSAとCHAの比で分割,(4)SA血流は梗塞率で減少とした.流体力学からx値:4,3,2.33,2の時の推定門脈圧低下率とHVPG低下率を比較した.【結果】平均脾梗塞率は57.5%,HVPG低下は2.7 mmHg,HVPG低下率は19.1%となった.平均推定門脈圧低下率はx=2の時23%,p値0.046でHVPG低下率と相関があった.【結語】PSE前の動脈径測定と梗塞率から門脈圧低下率を予想できる可能性がある.

  • 瓦谷 英人, 山本 晃, 赤星 朋比古, 山上 卓士, 谷合 信彦, 松谷 正一, 松村 雅彦, 國分 茂博
    2021 年 27 巻 4 号 p. 279-291
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    今回,日本門脈圧亢進症学会評議員に対して門脈圧亢進症治療における偶発症のアンケート調査を行った.調査対象は,内視鏡治療・interventional radiology(IVR)が2016年1月1日から2017年12月31日までの2年間,外科手術が2015年1月1日から2017年12月31日までの3年間に各施設で行ったすべての治療とした.本研究で各種治療法の総数ならびに偶発症の種類・頻度に関して報告する.

症例報告
  • 河原 大和, 太田 正之, 藤永 淳郎, 多田 和裕, 河村 昌寛, 中沼 寛明, 川﨑 貴秀, 平下 禎二郎, 猪股 雅史
    2021 年 27 巻 4 号 p. 292-295
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    Warshaw手術は良性や低悪性度の膵腫瘍を対象とし,脾門部で脾動静脈を切離し脾臓を温存する尾側膵切除術である.術後には高率に胃静脈瘤が発生するが,その血行動態について詳細な検討はなされていない.今回,当科で腹腔鏡下Warshaw手術を施行した3例の血行動態について検討した.平均年齢41歳,男性1例,女性2例で,対象疾患は膵粘液性嚢胞腫瘍2例,膵神経内分泌腫瘍1例であった.3例中2例(67%)にLg-b, F1-2, Cw, RC0の胃体部を中心とした胃静脈瘤を認め,術後平均9.5か月でその存在が示唆された.3D血管構築画像で検討すると,胃静脈瘤の発生した2例では脾臓~短胃静脈~胃壁~左胃静脈の血行路を認めたが,胃静脈瘤が発生しなかった1例は脾門部から後腹膜を走行し脾静脈に交通する血管を認めた.Warshaw手術後の胃静脈瘤発生予防には,膵背側の剥離層を温存することが重要と考えられた.

  • 佐々木 嶺, 石川 剛, 西村 達朗, 松田 崇史, 高見 太郎, 坂井田 功
    2021 年 27 巻 4 号 p. 296-301
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    B型肝硬変症の70歳代女性患者が,脾機能亢進に伴う血小板減少症に対する精査加療目的で当科に紹介され入院した.腹部造影CT検査では脾腫および脾腎シャントが認められ,ドプラ超音波検査では脾静脈血流は遠肝性を呈していた.部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)によって血小板数は著増(4.5→10.1×104/μl)し鼻出血などの出血症状は消失した.しかしながら,PSE後に血中アンモニア濃度が漸増(54.4→154.7 μg/dl)したため,脾腎シャントに対するバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術を施行した.脾静脈血流は求肝性に転じ,血中アンモニア濃度は47.6 μg/dlへと速やかに低下した.脾腎シャントを伴う脾腫・脾機能亢進症症例に対しては門脈-脾静脈系血行動態を十分に把握した上で,その治療戦略を構築しなければならない.

  • 横山 晋也, 石津 洋二, 武藤 久哲, 石上 雅敏
    2021 年 27 巻 4 号 p. 302-308
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    患者は2歳女児.生後56日に胆道閉鎖症の診断で当院小児外科にて腹腔鏡肝門部空腸吻合術を施行された.尿路感染症や胆管炎のため複数回の抗生剤投与歴がある.黒色便の疑いのため当科紹介となり,上部消化管内視鏡検査を施行.Lm F2 Cb RC3(RWM),Lg-c F2 Cw RC1の食道胃静脈瘤を認めたため5% ethanolamine oleateによる内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)および内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行った.治療後にPseudomonas aeruginosaによる菌血症,肝膿瘍を生じたが抗生剤への反応は良好であり改善を認めた.感染経路としてEISの穿刺部やEVL潰瘍からの血管経由の感染または肝門部空腸吻合を介した胆道の逆行性感染の可能性が考えられ,内視鏡的静脈瘤治療後の発熱時に鑑別として挙げるべき病態である.

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