1) ワクシニアウイルスに感染させたウサギ皮膚組織を材料として, ウイルス抑制因子 (IF) を精製した. まず材料を酢酸酸性にして随伴蛋白質の大部分を除き, 硫酸アンモニウムの60パーセント飽和で沈澱するものを除き, 次いで80パーセント飽和で活性成分を沈澱させた. それを溶かしてトリエチルアミノエチル (TEAE) セルローズでのカラム・クロマトグラフィーを行い, 得られた活性分画についてセファデックスG50ゲル濾過によるクロマトグラフィーを行つた.
このようにしてIF活性を有する糖質分画が得られた. その糖はガラクトース, グルコース, フコースから成るオリゴサッカリドまたはポリサッカリドであつた. この分画はセファデックスG50ゲルによつて捕捉されたことから, この分画中のIF活性成分の分子量は10,000以下であろうと推定される.
精製法を少しく変更することによつて, IF活性を有する糖蛋白質分画が得られた. この分画に含まれる主要粒子の電気泳動速度および沈降速度は均一であつた. この分画をセファデックスG50ゲルで濾過すると, IF活性を備えた糖蛋白質分画だけが得られ, IF活性を有する糖質分画は得られなかつた. つまり, この分画ではIF活性は蛋白質を含む粒子と不可分であつた.
2) IFの粗試料または硫酸アンモニウム塩析試料は抗血清によつて不活化されたが, 精製試料は不活化されなかつた.
IFの硫安試料を抗血清で処理したもののIF活性を動物個体で検すると活性を示さなかつたが, 培養組織で検査すると, 抗血清で処理しないIFよりも, かえつて高い活性を示した. この現象の詳細は今のところ不明である.
いずれにしても, 抗血清がIFを不活化するのは抗体がIF活性基そのものを直接に破壊または封鎖することによるのではないと解される.
3) われわれはIFの分子はIF活性を有し, 抗原性を有しない糖質と, 抗原性を有し, IF性を有しない蛋白質とから成ると想定している.
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