ウイルス
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最新号
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総説
  • 大場 靖子, 澤 洋文, 松野 啓太
    2020 年 70 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     アルボウイルスは吸血性節足動物によって哺乳動物へと媒介されるウイルスの総称で,節足動物体内でも増殖するものを指す.アルボウイルスの生活環は節足動物に強く依存しているため,一般的に,アルボウイルス感染症対策には媒介節足動物(ベクター)のコントロールが重要であるとされる.医学・獣医学領域で重要な疾病の原因となる様々な病原体がアルボウイルスというカテゴリーに属しており,20世紀前半からアルボウイルス発見の歴史があった.さらに,最近の塩基配列解読技術の進歩と相まって,新しいアルボウイルスが次々と発見されている.本稿では既知のアルボウイルスとその感染症を振り返ってみたい.
  • 國保 健浩
    2020 年 70 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     アフリカ大陸サハラ砂漠以南の風土病であるアフリカ豚熱(ASF)はイノシシ科(Suidae)の動物が罹患する熱性・出血性のウイルス感染症である.通常はサバンナ等に生息するカワイノシシやイボイノシシ等の野生種とOrnithodoros属の軟マダニとの間で非臨床的な感染環を形成するが,ひとたび豚が感染するとダニの介在を要することなく水平伝播し,その強い毒力により養豚業に甚大な被害を与える.治療法・予防法は未だ確立されていない.病原体であるASFウイルス(ASFV)は環境中での安定性が高く,感染豚の肉やその加工品中に潜んでアフリカ大陸から持ち出され,大流行を招くことがある.2018年8月には中国で発生し,以来東アジア,東南アジアで猛威を振い,日本の養豚業にとっても極めて大きな脅威となっている.本稿では本病を概観し,万一の発生に備えた”awareness”と“preparedness”の形成に役立てたい.
特集:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
  • 神谷 亘
    2020 年 70 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     コロナウイルスは多くの動物種に感染し,特に,呼吸器あるいは消化器に感染することで病気を引き起こす.コロナウイルスはニドウイルス目に分類され,ヒトのコロナウイルスは一般的に風邪の原因ウイルスの一つである.しかしながら,コロナウイルスにより重篤な肺炎を示す2002年の重症急性呼吸器症候群と2012年の中東呼吸器症候群が発生した.そして,2019年には新型肺炎が中国を発生源として世界各国に感染拡大した.この新型肺炎はCOVID-19,その病原体はSARSコロナウイルス-2である.
  • 忽那 賢志
    2020 年 70 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス感染者(COVID-19)はSARS-CoV-2による呼吸器感染症である.発症から数日〜1週間ほど上気道炎症状が続き,一部の患者では肺炎症状が悪化し重症化する.基礎疾患のある患者および高齢者は重症化のリスクファクターである.鼻咽頭スワブまたは喀痰のPCR検査でSARS-CoV-2を検出することで診断する.治療は対症療法が主体となり,現時点ではレムデシビルのみ臨床症状を短縮する有効性が示されている.感染対策は標準予防策に加え,接触予防策,飛沫予防策を遵守し,エアロゾル発生手技を行う際には空気予防策を行う.
ネオウイルス学
  • 〜新型コロナウイルスを含めて〜
    中川 草
    2020 年 70 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
  • 朝長 啓造
    2020 年 70 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     RNAウイルスは複製過程でDNAの形態をとる必要はなく,RNAのみで複製サイクルを完結する.一方で,1970年代以降から,RNAウイルス感染細胞内にRNAウイルスに由来するDNA断片が検出されることが知られていた.さらに,21世紀に入り,真核生物のゲノムにはレトロウイルス以外のRNAウイルスに由来する遺伝配列が存在することも明らかとなってきた.これらRNAウイルスに由来するDNA配列は,転移因子であるレトロトランスポゾンが持つ逆転写機構を介して作られると考えられている.内在性RNAウイルス配列の多くは,真核細胞におけるプロセス型偽遺伝子と同じ機構で形成されるが,感染細胞においてRNAウイルスの“偽遺伝子”が作られる意義については明らかではない.著者らは,一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるボルナウイルスに由来する内在性ボルナウイルス様エレメント(Endogenous bornavirus-like elements: EBLs)を発見し,哺乳動物ゲノムにおけるEBLsの多様性と生理的機能について研究を行ってきた.EBLsの解析は,宿主とボルナウイルスとの攻防と共存の歴史をひも解く手段を私たちに与えてくれる.本項では,哺乳動物ゲノムに存在する内在性RNAウイルス配列,特にEBLsの機能についての知見を概説するとともに,生命進化におけるRNAウイルス内在化の意義について考察を行いたい.
様々なウイルスの世界
  • 〜細菌の天敵をデザインして創る〜
    安藤 弘樹
    2020 年 70 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
  • 藤本 祐司, 橋本 将典, 山次 康幸
    2020 年 70 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     絶対寄生性の病原体である植物ウイルスは,そのゲノムに極めて限られた数の遺伝子しかコードせず,その感染過程において宿主植物細胞の様々な因子を利用している.これらの宿主因子をコードする遺伝子は植物のウイルスに対する感受性に関与することから感受性遺伝子とよばれる.感染に必須な感受性遺伝子が欠損あるいは変異した植物はウイルスに対して抵抗性を示す.このような抵抗性形質は劣性遺伝する特徴があるため劣性抵抗性と呼ばれ,既知の栽培作物においてマッピングされたウイルス抵抗性遺伝子座の約半数を占める.最もよく知られている感受性遺伝子は,翻訳開始因子の一種であるeukaryotic translation initiation factor (eIF)4Eファミリー遺伝子である.翻訳開始因子を介した植物ウイルスに対する劣性抵抗性に関する知見は数多く存在するが,それらの多くは抵抗性という現象の観察のみにとどまっており,翻訳開始因子の機能にまで迫っている研究は比較的限られている.本稿では翻訳開始因子を介した劣性抵抗性について,そのメカニズムが解明された研究に焦点をおいて総説する.
令和元年杉浦奨励賞論文
  • 浦田 秀造
    2020 年 70 巻 1 号 p. 69-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     主にアフリカ地域で流行しているエボラウイルス病やラッサ熱,そして日本を含む東アジア地域で流行している重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)など,我々は多くの高病原性ウイルス感染症の脅威に曝されている.近年,これら感染症への注目度が高まり研究の進展は以前と比べて遥かに早まっている.その結果,抗ウイルス薬やワクチンの開発が進み,一部認可されているものも出てきている.しかし同時に,新たな高病原性ウイルスの出現も起きており,私たちはこれら高病原性ウイルスの細胞内複製機構を分子レベルで解明し,新たな創薬標的の検証そして有用な抗ウイルス化合物の同定を目指している.
  • 佐藤 好隆
    2020 年 70 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     Epstein-Barrウイルス(Epstein-Barr virus; EBV)は,Γ-ヘルペスウイルス亜科に属するDNAウイルスで,最初に発見されたヒト癌ウイルスでもある.EBVは潜伏感染と溶解感染(ウイルス産生感染) の2つの感染様式を持ち,基本的にEBV感染細胞は潜伏感染を呈するが,ときに溶解感染へと移行し,子孫ウイルス産生およびウイルス伝播が起きる.溶解感染では約80個のウイルス遺伝子が秩序立って発現し,短時間の内にウイルスゲノム複製と,続く粒子形成が協調的になされる.本稿では,潜伏感染から溶解感染へと変化するときに,宿主細胞内でどのような変化が起きているのかについて,筆者の研究経緯を交えながら概説する.
  • 杉田 征彦
    2020 年 70 巻 1 号 p. 91-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー
     マイナス鎖RNAウイルスは堅牢なウイルス殻を持たず,その構造は柔軟で不安定である.我々は,様々な電子顕微鏡法を用いて,インフルエンザウイルスとエボラウイルスの構造を解析してきた.その結果,インフルエンザウイルスが本来持つ形態や内部構造が明らかになったほか,エボラウイルスのコア構造が原子レベルで明らかになった.
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