インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼは, PB1, PB2, PAからなる3つのサブユニット構造をとり, (-) 鎖ゲノムRNAの転写, 複製を共に触媒する。それぞれのcDNAを発現し, 再加構成を行い, インフルエンザウイルスゲノムの両末端を持つモデルRNA鋳型に対する反応を調べるという artificial な系を構築することで, PB1はRNA合成を行い, PB2はキャッププライミング, そして, PAはゲノムRNA複製の第2段階のcRNA→vRNA合成に関与することが明らかとなった。また, これらの反応は, 84ヌクレオチドのモデルRNA鋳型を用いれば, NPが存在しなくても行わせることができたので, PB1, PB2, PAは, インフルエンザウイルスゲノムRNAの転写, 複製の必要かつ十分な因子であるといえる。そして, それぞれのサブユニットを発現する細胞内においては, PB1-PB2, PB1-PAのバイナリーコンプレックスが存在し, ターナリーコンプレックスとしての3Pが形成されるのにはやや時間がかかる。複合体形成においてもPB1はコアーとなり, C末158アミノ酸の部分でPB2のN末249アミノ酸の部位と結合し, N末140アミノ酸の部位でPAのC末3分の2の部位と結合した。NPのN末端側には核酸結合部位も2ヶ所同定された。また, ゲノムRNAの末端構i造として, pan-handle モデルに加えて, 新たに, RNA-fork モデルが提唱された。
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