本研究では超臨界二酸化炭素中または窒素中で熱処理した木材の海洋暴露試験による評価を行った。実験試料はスギ(Cryptomeria japonica D. Don)心材試片を用いた。超臨界での熱処理は,220℃/10MPaの二酸化炭素中で,含水率を10%に調整した試片を1時間または3時間加熱した。窒素中での熱処理は,全乾試片を220℃で3時間加熱した。試片を神奈川県横須賀市の試験地に設置し,海中暴露試験および飛沫帯暴露試験を合計24ヶ月間実施した。その結果,海中暴露試験では処理時間が3時間の熱処理試片において,総暴露期間12ヶ月までは質量や曲げ強度の変化はほとんどなかった。適切な熱処理条件を見出すことで,さらに長期間の耐海虫性を付与できる可能性がある。一方,飛沫帯暴露試験において,熱処理試片にはコントロール試片と同様の質量減少や曲げ弾性率の低下が生じることが示された。
脱炭素社会の実現に向け木材利用が重視される中,公共物件への木材利用に関する法律が整備され,外装の木質化が新たなニーズとなっている。乾式防腐・防蟻処理木材は,高い防腐・防蟻性能を有するが,これまで外装利用に必要とされる耐候性能の評価が不十分であった。そこで耐候性能を評価するため,スギ辺材,スギ心材,ヒノキ辺材,ヒノキ心材それぞれの無処理材,乾式防腐・防蟻処理材(AZN処理材),乾式防腐・防蟻処理+水性半造膜塗装材(塗装材)の3種類の試験体について,千葉県にて南向き・傾斜45度の条件で屋外暴露試験を実施し,試験体の外観,撥水度,色差,割れを経時的に測定した。撥水度は,無塗装材(無処理材とAZN処理材)では暴露直後から低下し24ヶ月後には共に10%程度となったが,塗装材では全ての試験体で暴露後12ヶ月までの間は100%の値を示し,それ以降は85%程度まで値が低下した。色差(∆E*)は,無塗装材では暴露後24ヶ月には共に20~30程度となったが,塗装材ではスギ心材を除き10程度に留まっていた。割れは,塗装材では無塗装材に比較して大きく低減していた。この成果を受けて,現在では乾式防腐・防蟻処理材に水性半造膜塗料を施した外装材が,多数の非住宅物件に採用され始めている。今後,更に木材利用が進んでいく中で顧客ニーズに沿った製品開発を進めていく。