海の研究
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14 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 近藤 明希子, 磯辺 篤彦, 篠原 満寿美
    2005 年 14 巻 3 号 p. 399-409
    発行日: 2005/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1975年2月から2001年3月の25年間にかけての水温観測記録から, 福岡湾の水温長期変動を解析し, その要因を検討した。その結果, 福岡湾の水温は冷却期(9月~3月)では上昇傾向にあり, 加熱期(4月~8月)では下降傾向にあった。冷却期における福岡湾の水温上昇の原因は, 湾外水温の上昇にあることが示唆された。これに対し加熱期における水温下降は, 福岡湾での局所的な現象であった。この原因を, 福岡湾を単純化した簡単な数値モデルによって検討した。その結果, 湾内成層が年々強くなることで湾内のエスチャリー型鉛直循環も強化され, これが冷たい湾外水の流入を促進したために, 湾内水温が低下したことが明らかになった。
  • 川口 修, 山本 民次, 松田 治, 橋本 俊也
    2005 年 14 巻 3 号 p. 411-427
    発行日: 2005/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    ノリ不作のメカニズムを解明するために, 物理的・生物的過程を考慮したノリと優占的浮遊性珪藻Skeletonema costatumの栄養塩競合モデルを構築した。ノリと珪藻による栄養塩摂取と増殖に影響を与えると考えられる主要な因子(水温, 塩分, 河川負荷量, 海水交換率, 二次生産者による摂食等による珪藻の損失率)について感度解析を行うことで, ノリと珪藻の栄養塩競合におよぼす影響を研究した。その結果, 珪藻の損失率の低下が珪藻の増殖を促進させる最大の要因であることが明らかとなった。また, 珪藻の損失率の低下が背景にあることによって, 水温, 塩分, 河川負荷量などの因子のわずかな変化にも珪藻の増殖が支配され, ノリへの影響が大きくなることが理解された。近年, 有明海では二枚貝現存量や浮泥再懸濁量の減少が観察されており, これらが珪藻細胞の損失率低下の主な原因と推察された。
  • 二村 彰, 武岡 英隆, 郭 新宇
    2005 年 14 巻 3 号 p. 429-440
    発行日: 2005/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    燧灘全域, 来島海峡および備讃瀬戸西部において, 2002年5月末から8月中旬まで4回にわたりCTD観測を実施した。観測データを2層1ボックスモデルで解析することにより, 燧灘成層域上下層の海水交換に対する移流と水平・鉛直混合の寄与を明らかにするとともに, 各層の熱収支を定量的に評価した。その結果, 海水交換に対しての寄与は上下層ともに鉛直混合よりも水平混合が数倍大きく, さらに, 下層では水平混合が移流よりも大きいことが判明した。また熱収支からは, 成層域下層の加熱に対する鉛直混合の寄与は23%~41%に過ぎず, 59%~77%を水平混合と移流による加熱が占めていることも明らかになった。この結果は, 熱バイパス(Takeoka, 2002)が燧灘成層域下層の加熱に重要な役割を果たしていることを実証するものである。
  • 井桁 庸介, 北出 裕二郎, 松山 優治
    2005 年 14 巻 3 号 p. 441-458
    発行日: 2005/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    海岸・海底地形が沿岸捕捉波の伝播におよぼす影響について, 簡単な地形を用いた数値実験により研究した。狭い陸棚を持つ深い湾へ伝播する場合には, 岸に沿う風で発生した内部ケルビン波型の沿岸捕捉波は, ほとんど分裂せず湾内へ伝播する。一方, 陸棚が湾口の外側まで張り出す浅い湾へ伝播する場合には, 沿岸捕捉波は湾内へ進入する内部ケルビン波と, 陸棚に沿って湾口沖を伝播する陸棚波型沿岸捕捉波に分かれて, 波形が変化した。これらの特徴は, 沿岸捕捉波による日本南岸各地での潮位変動を良く説明している。陸棚幅が広い場合には, 岸に沿う風により陸棚波が発生するが, 浅い湾の湾口で分裂せずに陸棚端に沿って伝播した。また, 湾口の陸棚に沿って伝播する陸棚波型沿岸捕捉波は, 陸棚の途切れを跳び越えて伝播し, その振幅は途切れ幅が狭くなるに従い大きくなることが確認された。さらに, 湾の幅がロスビーの内部変形半径の2倍より狭い場合, 湾口で分離して湾内へ入射する内部ケルビン波の一部が湾口を跳び越えることが明らかになるとともに, その振幅は湾口幅が狭くなるに従い大きくなることが判明した。
  • 大島 巌
    2005 年 14 巻 3 号 p. 459-462
    発行日: 2005/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    有明海湾奥部の佐賀県西部では, 1980年から夏季に貧酸素水塊が発生しており, 環境省調査でも2001年夏季に諫早湾央で2mg L-1を下回る貧酸素水塊を確認している。貧酸素の主要因である底泥DO消費速度実験を行ったところ, 泥質性二枚貝のサルボウガイが生息する実験系は生息しない実験系に比べて2倍強の速度となっていることから, 仮にサルボウガイの生息する湾奥部浅海域で貧酸素水塊が発生する際には, サルボウガイの呼吸が少なからず寄与している可能性が示唆された。
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