日本化學雜誌
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88 巻, 11 号
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  • 筒井 稔
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1129-1137
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報で解説したように遷移金属π錯体の触媒化学における重要性を確立するとともに, 生体内の金属酵素作用における金属の果す役割には, π錯体機構が含まれているであろうと推定して, 複雑な生化学的物質のπ錯体を合成した。この結果, 生体内では安定で生体外では不安定なビタミンA, β-カロチンおよびリコピンのような高度不飽和化合物がπ錯体として生体外でも安定化される事実を見いだした。
    またチロシナーゼの酵素作用は銅によるπ錯体作用が重要な役割をしていると思われる結果を得た。金属ボルフィリンも同様にその生化学的機作においてπ錯体機構が重要な役割をなすと思われるが, 著者らはその事実を認めて, 酸素担体としてのヘモグロビン中の鉄イオンがその過程において2価イオンで原子価を変えないのは酸素分子と2価鉄イオンとのπ結合によるものと推定している。
  • 戸田 昭三, 永田 親清, 鎌田 仁
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1138-1140
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    7種類のチアゾリルアゾフエノール類の四塩化炭素, クロロホルム, アセトン溶液中における核磁気共鳴スペクトルの化学シフトと, これらの溶液中における電子スペクトルの関係を検討した。
    これらの溶液中でのキノンサドラゾン-フェノールアゾ互変異性体のモル分率は電子スペクトルを各吸収帯に分離して推定した。τ=1. 0~-2. 0の間に現われるNMRジグナルの化学シフトは, それぞれの溶媒についでフェノールアゾ異性体のモル分率に対して直線的に変化した。したがって, ごの互変異性体間の交換速度は常温でも十分速いことを示している。
    紫外可視部における両異性体の吸収帯の荷重平均位置とNMR化学シフトとは一定の関係を示した。さらにベンゼン環の3-位プ資トンの化学シラトは分離ざれた吸収帯の位置とよい関連性をもつことがわかった。
  • 鈴木 喬, 妹尾 学, 山辺 武郎
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1141-1144
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    近年開発された巨大網状構造イオン交換樹脂は従来のゲル型のイオン交換樹脂に比較して, 膨潤収縮が少なかので, 非水溶媒中でも十分使用可能であること, 気相中でも使用できるなどすぐれた利点を持っている。著者らはH形, OH形としたこのイオン交換樹脂を簡単な酸・塩基触媒と考え, エステル (酢酸メチル, 酢酸エチル) の加水分解, 加アルコール分解 (酢酸ブチルをエタノールで) を行ない, その反応機構を動力学的に考察し, 塩基触媒の場合は, 触媒自身が反応に直接関与しているとして結果を説明した。またこの樹脂の特性は従来のゲル型の樹脂と大差ないことも判明した。最後に一般の酸および塩基触媒の反応速度の差を生成物の自由エネルギーの差に基づく活性化エネルギーの変化によるとして定性的に説明できることを示した。
  • 樋口 泉, 小林 純一, 久保田 昌治, 伊藤 昭二, 脇坂 一真
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1144-1151
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    修正毛管凝縮理論を基礎にすれば収着等温線から収着剤の比表面積はもちろんのこと, 半径約1μ 以下の毛管容積ならびに毛管分布を容易に求めることができる。ここでは, (A) 共沈亜鉛鉄シュウ酸塩, および, (B) 酸化亜鉛と酸化鉄の混合物, からの亜鉛フェライト生成における調製温度, 時間, 加圧などの条件の異なる一連の試料について0℃におけるベンゼンの等温線を測定し, 亜鉛フェライト生成の初期段階における毛管構造の変化を修正毛管凝縮理論を基礎にして検討した。
    各試料におけるフェライト生成量は化学分析およびX線回折法で定めた。A試料では500℃以下の温度で大部分はフユライトになり, フェライトを含む単位粒子は調製温度とともに急激に成長するが, 共沈シュウ酸塩結晶の形骸はそのまま保持されると推定される。一方, B試料では試料を構成している単位粒子は加熱温度とともに急速に成長するが, フェライト生成量はA試料にくらべてきわめて少ない。A試料のフェライト生成における顕著な速度は, 共沈したシュウ醐とシユウ酸亜鉛が混晶を形成しているため生成した混合酸化物は緊密に混合していることに帰せられる。
  • 久司 佳彦, 小宮山 好道, 黒谷 寿雄
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1151-1153
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソチオシアナトペンタアンミンコバルト (III) 塩化物[CoNCS (NH3) 5] Cl2の結晶構造をX線回折法により決定した。結晶は正方晶系に属し, 単位格子はa=7. 16Å, c=10. 13Åである。密度の実測値1. 73 g. /cm-3からZは2となる。これに対する計算密度は1. 75 g. /cm-3である。消滅則より可能な空闇群としては5種が存在するが, 解析の結果, I4 mm-C94v (No.107) と決定された。通常のFourier法により解析を進め, 最終の信頼度因子Rは15. 7%である。錯基 [CoNCS (NH3) 5]2+ の構造はつぎのとおりである。6個の窒素原子(5個のNH3分子と1個のNCS基のN)がコバルト原子のまわりを正八面体状にとりかこんでいる。Co-Nの原子間距離は1.98~2.01Å, ∠N-Co-Nは90°である。NCS基は空間群の対称要素として存在する4回軸上にあり, でコパルトに配位している。したがって, Co-NCSは一直線上にあり, ∠Co-N-Cは180°である。またN-Cは1. 15Å,C-Sは1. 79Åである。
  • 引地 宏, 田中 信行
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1154-1157
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    滴下水銀電極におけるヘキサアンミンクロム (III) イオンの一電子還元波は, マンガン (II) イオンおよびマンガン (II) -オキシエチルエチレンジアミン三酢酸 (HEDTAと略記) 錯体が存在するとき, 2段に分裂する。これはつぎのような電極反応
    [Cr (NH3) 6]3++e→Cr2+aq+6NH3
    MnX-+jH+⇔Mn2+aq+HjX (3-j)-
    Cr2+aq+HjX(3-J)-〓+jH+
    (j=0, 1)
    CrX-→CrX+e
    に基づくものであるが, その第1波の限界電流値は適当な条件では, クロム (II) イオンとHEDTAとの錯形成反応の速度に依存する。水銀滴1滴間の電流-時間曲線を測定し, その結果を解析することにより, 25℃, μ=1, ρH4. 1~5. 1における正反応の速度定数 k+X, k+HXとして, k+X=5.7x 1010 and k+HX=1. 2×105l・mol-1・sec-1の値を得た。
  • 小松 貞吉, 萩野 堅
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1157-1163
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸性溶液で硝酸イオンを金属亜鉛で還元し, 生成された亜硝酸イオンをGriess Romijn試薬 (以下GR試薬と略記) で発色させる硝酸イオンの光度定量法を検討し, ある種の塩類の共存によって亜硝酸への還元が定量的に進行することを見いだした。その結果, 硝酸の微量が精度よく定量できた。
    試料溶液10mlを沈殿管にとり, これに3mol/l塩化マグネシウム溶液2ml, 4mol/l塩化ナトリウム溶液1mlならびに0. 1N酢酸0. 5mlを加えて酸性にする。これに粉末状金属亜鉛400~500mgを添加しセンをして静かにまぜ合わせる。遠心分離後, 上澄液から10mlを比色管に移し, これにGR試薬を加えて発色させる。0. lppm NO-3-N以下の場合 (B法) は, この溶液の吸光度を波長520mμで測定すれば濃度と吸光度は0. 005~0. 07ppm NO-3-Nの範囲内で直線関係を示し, 再現性よく極微量の硝酸イオンが定量できた。また, 0. 1ppm NO-3-N以上の場合 (A法) はGR試薬で発色させたのち, これに3N塩化アンモニウム溶液2ml, 10% EDTA・2Na溶液7mlならびに9Nアンモニア水1mlを添加してアルカリ性にし, 吸光度を波長480mμで測定すれば, 0. 05~2. 5ppm NO-3-Nの範囲内で直線関係が得られ, 定量範囲が拡大された。
    亜硝酸イオン共存の場合の硝酸イオンの定量法についても実験し, 好結果をおさめた。
  • 小松 寿美雄, 野村 俊明, 臼井 義子
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1164-1167
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジエチルジチオカルバミン酸銀とヨウ素イオンの交換反応の結果, 遊離するジエチルジチオカルパミン酸イオンに銅 (II) を加えてジエチルジチオカルバミン酸銅を生成させ, これの四塩化炭素の溶液の吸光度を測定してヨウ素イオンの間接定量を行なった。ヨウ素イオン溶液を分液漏斗にとり, ジエチルジチオカルバミン酸銀10~20mgならびに5×10-3mol/l硫酸銅溶液5mlを加え, 3N水酸化アンモユウム-20%クエン酸アンモニウム系緩衝溶液10mlでρH7. 3~7. 8にしたのち, 水で全容30mlにする。これに四塩化炭素10mlを加えて約20分ふりまぜたのち, 分離した四塩化炭素溶液の吸光度を波長435mμで測定する。ヨウ素イオン6~125μg/30mlの濃度範囲でBeerの法則が成立する。見かけのモル吸光係数は2. 3×104であって, 再現性はよい。シアン, チオシアン酸, イオウの各陰イオンならびに水銀 (II), 金 (III), 白金 (IV)などの共存は妨害する。他のハロゲンイオンの相当量の共存は妨害にならない。
  • 野崎 亨, 三瀬 皓愛, 檜垣 一夫
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1168-1171
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過塩素酸ナトリウムでイオン強度 (μ) を0. 2あるいは0. 4に調節したマレイン酸盧(X2-)溶液申で, インジウム (III), 銅 (II), 鉛 (II) およびカドミウムのポーラログラフ的挙動を調べた。インジウム (III) 系ではρH3~4. 5で可逆性三電子還元波が, 銅 (II), 鉛 (II) 系ではρH4~7, カドミウム系ではρH4~8で可逆性二電子還元波がそれぞれ得られた。DeFord-Humeの方法により各金属ともMX1, MX2, MX3の3種の錯体が見られ, それらの安定度定数を計算した。25℃での全安定度定数の対数はμ=0. 2で,インジウム (III) では5. 0, 7. 1, 10. 9, 銅 (II) では3. 4, 4. 9, 6. 2, 鉛 (II) では3. 0, 4. 5, 5. 4, カドミウムでは2. 2, 3. 6であった。 さらに, カドミウムではμ=0. 4で2. 0, 3. 2, 3. 8の値が得られた。
  • 黒川 一夫
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1171-1176
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者は陰イオン交換樹脂Amberlyst-A29によるカルシウム-ストロンチウム-バリウムの分離に関する一連の研究を行なった。塩化カルシウム-塩化ストロンチウム-塩化バリウムをMe0H-isoPrOH-7mol. /l NHO3-1mol. /l KNO3-H2O (容積比 60: 30: 5: 2: 3), Me0H-7mol/l HNO3-1 mol. /l KNO3-H2O (90: 5: 2: 3) および 0.1mol. /l HNO3をそれぞれ用いると, カルシウム-ストロンチウム-バリウムを分離できる。カルシウムの溶出曲線において二つのピークがあらわれたのは興味深い。カルシウム-ストロンチウム-バリウムの全量が0. 12mmolまではφ1. Ocm×14cmのカラムによってすみやかに分離できることがわかった。樹脂相に吸着されている錯体の形は樹脂内配位子濃度と分配比からグラフ解析する方法により推定した。Amberlyst-A29の樹脂内ではMe0H-isoPrOH-HNO3の存在下で新しい高次の錯イオン種Ca(NO3)53-, Ca (NO3)64-, Sr(NO3)64-, Sr(NO3)75-, Ba. (NO3)75-などが存在していることが推定された。
  • 上田 一正, 山本 善一, 上田 俊三
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1177-1179
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-ベンジルモノオキシム (以下α-BMOと略記)によるパラジウム (II) の抽出吸光光度定量法について検討した。
    パラジウム (II) はα-BMOと反応して黄緑色の錯体を生成し, この錯体はクロロホルムに抽出される。波長435mμ に吸収極大をもち, ρH2~10の範囲内で定量的に抽出され, クロロホルム10m1中, パラジウム2~60μgの濃度範囲でBeerの法則が成立する。モル吸光係数は1. 98×104, 感度は吸光度0. 001に対し5. 4×10-3μgPd/cm2であり, 抽出錯体の組成は, パラジウム: α-BMO=1: 2である。EDTA, チオシアン酸イオン, チオ硫酸イオン, スズ (II) などは妨害し, 白金 (IV),イリジウム (IV)・スズ (IV),フッ素はわずかに影響を示す。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1179-1184
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸塩およびそのエステル類をKjeldahl法で定量する際, 濃硫酸中に加えられるサリチル酸の効果を明確にするため, 濃硫酸中における微量硝酸とサリチル酸の反応を紫外および赤外吸収スペクトルその他の方法で検討し, つぎの結果を得た。
    (i) 両者は1: 1の比で定量的に反応し, 3-および5-ニトロサリチル酸を生成する。
    (ii)生成したニトロサリチル酸の濃硫酸溶液は焼く245mμに極大吸収波長を有し, これを利用して微量硫酸が定量できる。
    (iii) 硝酸エチルおよび硝酸セルロースのような硝酸エステル類も, 硝酸の場合とまったく同様である。
    (iv)ニトロリチル酸の濃硫酸溶液を加熱分解すると, 還元剤を加えない場合でも3-ニトロ体は理論量のアンモニアを生成するが, 5-ニトロ体のそれは理論量より低い。したがって3-と5-ニトロ体を含む反応生成物はその中間値となり, 定量的にアンモニアにするにはなんらかの還元剤が必要である。
  • 御園生 晃, 長 哲郎, 上野 高尚
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1184-1192
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α, β-不飽和アルデヒドであるメタクロレインについて, 中性塩としてρ-トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム (Mckee塩), 酸としてρ-トルエンスルホン酸 (ρ-TSA)を選び, 両水溶液中で定電位電解還元を行なった。生成物としては二量体, 三量体, ポリマー, 水銀化合物が多かった。これらの生成物を確認し, 反応機構を検討した。Mckec塩水溶液中ではβ炭素-カルボニル炭素間の結合による二量体, β炭素間の結合による二量体, Diels-Alder型二量体が確認された。単量体還元物は認められなかった。
    還元二量体の生成機構は電極界面で生成する単量体アニオンが他の単量体に付加して二量体アニオンとなり, これにプロトン付加するものである。ρ-TSA水溶液中ではイソブチルアルデヒド, β炭素-カルボニル炭素間の結合による二量体, Diels-Alder型二量体, さらに2種の三量体が確認された。単量体は主としてプロトン付加物である共役酸を生成しており, 還元二量体生成機構は電極界面で生成する共役酸ラジカル間のカップリング, 還元三量体生成機構は共役酸ラジカルが他の単量体へ付加して生成する二量体ラジカルと共役酸ラジカルとのカップリングであることを認めた。
  • 松木 保夫, 藤枝 邦美
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1193-1196
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-アセチル-2, 3-ジブロムチアナフテン [2] と6-アセチル-3-プロムチアナフテン [4] (チアナフテンをTNと略記) について試料対過酸のモル比が1: 1, 1: 5の場合の反応を研究した。 [2] は等モル比の案験では主として [2] のスルホン( [3] ,mpl87~187. 5℃) を生成し, 僅少量の6-アセトキシ-2, 3-ジブロム-TN (mp193~194℃) が副生する。モル比1: 5の反応では [3] と6-アセトキシスルホンが生成し, それの生成比は約4: 1である。 [4] は等モル比の実験ではほとんど定量的に [4] のスルホン( [5] , mp176~176. 5℃) を与え, モル比1: 5の場合は [5] とアセトキシスルホンが約4: 5の割合で生成した。上記アセトキシスルホンの加水分解でそれぞれ2, 3-ジブロム-6-オキシ-TN-1-ジオキシド (mp280℃) と6-オキシ-N-1-ジオキシド (mp228~228. 5℃) をえた。 [4] を二酸化セレンで酸化してグリオキサル-水和物(83%, mp254~255℃) を, [4] のSchmidt反応でアセトアミド体 (89%, mpl45~146℃) を得た。上記のTN誘導体とスルホンの紫外吸収スペクトルについて若干の考察を行なった。
  • 野市 勇喜雄
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1196-1201
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロブロパン環に隣接するα位に二重結合およびヘテロ原子を含むシクロブロパン誘導体における環開裂反応方式を研究するために, 2-オキサ-ピシクロ [3. 1. 0] -3-ヘキセン [1] ,1, 3-ジメチル-2-オキサ-ビシクロ [3. 1. 0] -3-ヘキセン [2] , 3-メチル-2-オキサ-ピシクロ [3. 1. 0] -3-ヘキセン [3], および1-メチル-2-オキサ-ピシクロ [3. 1. 0] -3-ヘキセン [4] をメタノール性塩酸で処理した。 [1] は主としてテトラヒドロ-2, 5-ジメトキシ-3-メチルフラン, メチルスクシンアルデヒド-ビス (ジメチルアセタール) およびグルタルアルデヒド-ピズ (ジメチルプセタール) を与え, [3] および [4] は主としてメチルレプリンアルデヒド-ジメチルアセタールを与えた。しかるに [2] は唯一の生成物として, 2, 3, 5-トリメチルフランを与えた。これらの物質の生成については, まず2-オキサービシクロ [3. 1. 0] -3-ヘキセン, およびそのメチル置換体にメタノールが1, 2付加をし, 生ずる付加物のフラン環が開裂してシクロブロパノール中間体を生成し, これがさらに酸によって開裂して相当する生成物を与えるものと思われる。
  • 小田 良平, 林 良之
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1202-1210
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸塩化物とジメチルスルホキシド (DMSO) との反応で生成するクロルメチルメチルスルフィド(CMS)はDMSOと反応して塩化メタンスルフェニルとホルムアルデヒドを生成する。すなわち, DMSOによるハロゲン化物の酸化反応の変形であり, α-クロルスルフィドは一般にこの形式でDMSOにより酸化されてカルボニル化合物になることを見いだした。メテルケトンは塩化スルフェニルと反応してβ-ケトスルフィドを生成する。 活性メチレンスルフィドと塩化スルフェニルとの反応では, スルホニウム塩を中間に生成し, この塩は分解してα-クロルスルフィドを与える。アセトフェノンあるいはベンジルスルフィドを酸塩化物およびDMSOで処理すれば, 上述の数段の反応が起こりフユニルグリオキサールあるいはベンズアルデヒドを収率よく得ることができる。
    DMSOとCMSとの反応でメタンチオールスルホン酸メチル, ジメチルスルフィド, ホルムアをデヒドおよびジメチルジスルフィドが生成することが知られているが, この場合も申間に生成する塩化メタンスルフェニルとDMSOが反応して生成すると考えられる。
  • 植野 禎夫, 井本 英二
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1210-1212
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5-置換ニコチン酸エチルの85%エタノール中のアルカリ性加水分解速度に対しては, Hammettのメタ置換基定数を用いるとよくHammett式が成立し, その反応定数ρHは反応温度25℃のとき2. 26であって, 同条件下の置換安息香酸エチルエステルの反応定数ρBとの比は,ρHB=0. 89であった。 また, 5-置換ニコチン酸の50%エタノール水中におけるρKaについてもよくHammett式が成立し, その反応定数は1. 73で, 同条件下の置換安息香酸のρBに対して, ρHB=1. 08であった。すなわち, 置換基,反応基およびヘテロ原子の三者の問に交叉共役が存在しない場合はρHBが1に近くなる。
  • 植野 禎夫, 大辻 吉男, 井本 英二
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1212-1217
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    置換複素芳香環式化合物の各炭素原子上のπ電子密度, およびsuperdelecarizabilityの値を環内ヘテロ原子および置換基に与えるCoulomb積分の値を種々変えて,Hückel法により計算した。
    π電子密度およびsuperdelocarizabilityの値は, いずれも環内ヘテロ原子のCoulomb積分の絶対値の増大につれて, 一般に小さくなった。 また, 上記の反応性指数に対する置換基効果は複素芳香環の種類および環内ヘテロ原子と置換基との相対位置によって変化した。さらに, 計算によって得られた置換基効果の伝達の度合は実験結果とよく一致することが明らかになった。
  • 山口 真守, 新井 万之助, 相沢 冨士子
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1218-1220
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メントールを合成する目的で, ρ-メンタン-3, 8-ジオールのシス体 (4) およびトランス体 (5) を200℃で加圧下に接触水素化分解を行なった。ラネーニッケル触媒のとき, 低圧 (20kg/cm2) では主生成物としてメントール類 (3) を,副生成物として3-メチルシクロヘキサノール (6) を得た。なお (3) は, 原料 (4) のときはネオメントールを, 原料 (5) のときはメントールを主成分とし, それぞれの主成分中より(+) -ネオメントールおよび (-) -メントールの存在を確認した。つぎに高圧 (98kg/cm2) では主として (6) が生成し, (3) の生成量はいちじるしく低下した。また銅クロム酸化物を触媒とするときは, 反応圧に関係なく(6) のみが生成し, (3) は得られなかった。 (6) はシスおよびトランス異性体の混合物で, 前者が後者にくらべ優位に存在し, 本実験の条件ではその割合は約2: 1であった。
  • 卯西 昭信, 長谷川 正木
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1221-1223
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-アシルアミノナフタルイミドを無水ナフタル酸と各種カルボン酸ヒドラジド (RCONHNH2, R=H, CH3, C2H5, C3H7, C6H5 2-ピリジル) から合成した。カルボン酸ヒドラジドと無水ナフタル酸の反応を示差熱分析で検討した。この反応では, 無水ナフタル酸とカルボン酸ヒドラジドの縮合反応と縮合生成物の閉環反応が連続的に起こることを示差熱分析で確かめた。N-アシルアミノナフタルイミドは一段階で合成され, 中間体の分離は成功しなかった。N-アシルアミノナフタルイミドの構造は赤外吸収スペクトルと元素分析で確かめた。この化合物の赤外吸収スペクトルの特性吸収, すなわち, 第一νc=oおよび第二νc=oを測定し, 第一νc=oは1718~1723cm-1領域に, 第二νc=o は1600~1700cm-1領域にあった。
  • 湯規 泰秀, 井畑 敏一
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1223-1228
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5α-ジアゾアセトフェノンは熱, 光, 触媒分解によってWolff転位を起こし, 相当するケテンを経てフェニル酢酸誘導体を生じることが知られている。著者らは触媒分解の際のNewmanらの遊離基連鎖機構を確かめる目的と, γ線によるジアゾケトンの分解と光分解の差異について調べる目的でこの研究を行なった。反応は不活性なガスまたは酸素の雰囲気中で, アルコール, ベンゼン, 四塩化炭素, ブロモホルム, チオフェノールやこれらの混合溶媒中で行なった。γ線分解では,Newmanらの機構に示されているラジカル中間体が生成すると考えられるようないかなる条件下で反応を行なっても転位生成物は見いだされなかった。酸素雰囲気中では溶媒のいかんにかかわらず安息香酸が得られた。四塩化炭素やプロモホルム中でのγ線分解では, 同じ条件下での光分解の場合と同じく, 相当するハロゲン化フェナシルを得た。トリエチルアミンを添加して四塩化炭素中でジアゾケトンをγ線分解した際, トリエチルアミン塩酸塩を生じることから, ハロゲン化フェナシルの生成はハロゲンを含む溶媒の分解によって生じた塩化水素とジアゾケトンの反応によるものと考えられる。これらの結果および著者らの前報の結果から, 安息香酸銀触媒によるWolff転位に対するNewmanらの遊離基連鎖機構にいくらかの疑問が持たれる。
  • 安河内 一夫, 岩松 良伸
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1229-1230
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 大島 昭雄
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1231-1233
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 戸田 敬, 久保田 英世, 野副 鉄男
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1234-1235
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 杉田 実男
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1235-1237
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 杉田 実男
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1237-1238
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 上村 多嘉彦, 山下 徹志, 中村 暢夫
    1967 年 88 巻 11 号 p. 1238-1239
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 1967 年 88 巻 11 号 p. A67-A72
    発行日: 1967/11/10
    公開日: 2011/05/30
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