理論と方法
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1 巻 , 1 号
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特集 社会学における理論と方法
  •  
    高坂 健次
    1986 年 1 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     数理社会学の一般的な議題はどこにあるか――それはフォーマライゼーションにあり、というのが本稿の結論である。では、フォーマライゼーションとは何か。その狙いはどこにあるのか。何をいったいフォーマライズするのか。また、どのような数学的手法が必要か。既存の社会学からは何を学びとり、またそれに対して何を与えることができるか。こういった点について、できるだけ数学的な議論に立ち入らないで述べる。また最後に、数理社会学の当面の議題および数理社会学教育をめぐる問題点にも触れる。
  • 井上 寛
    1986 年 1 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     社会学におけるフォーマライゼイションは社会学とそれを取りまく知の歴史においてどのような役割を担うのだろうか。本稿はフォーマライゼイションを志向する研究とその状況のいくつかの分岐点について、若干の整理を試みるものである。
     理論とよばれるものを、法則的なものを含む、体系的に連関した立言の集合であり、対象について一貫した説明と予測をあたえることができ、累積的に発展することのできるようなものとするとき、数理と計量の両面でフォーマルな理論の実質的貢献がみられることを示す。しかしながら、方法的個人主義、歴史性、没価値性、そして分化と統合をめぐる抜きさしならないアポリアが存在することを指摘し、それらにたいする処方を検討する。
  • ―「個人と社会」問題への数理・計量的アプローチ―
    海野 道郎
    1986 年 1 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、「個人と社会」問題に対する数理・計量的アプローチを概観し、その発展の方向を考察することである。第1に、この問題に対する研究を「多水準分析」という枠組で整理し、計量分析から数理分析へ、という傾向を見いだした。第2に、数理モデルを用いた研究の動向を検討し、1) マクロレベルでのモデル定立からミクロレベルでのモデル定立へ、2) ミクロレベルとマクロレベルとの関係に関する明示的定式化が不在のモデル(相互作用のない複数の行為者の集合として社会を表現したモデル)から、ミクロモデルのシステム(方程式系や交換)によるマクロレベル(社会)の表現へ、3) 行為者の内的メカニズムを無視した「行動モデル」から、行為者の認知過程を意図的に定式化した「認知モデル」へ、という3つの傾向を見いだした。この傾向は、数学モデルの社会現象への応用という色彩の強いモデルから人間行動の深みに迫り得るモデルへという変貌、すなわち、数理社会学が応用数学としてではなく社会科学としての自立を始めたこと、を示唆している。しかし、数理社会学の今後を担うと思われる認知モデルも、現在の段階では未だ不十分なものである。また、認知モデルを発展させるには、数理社会学がこれまで用いてきた数学は、必ずしも適当でないように思われる。本稿では、このような現状認識に基づき、認知モデルを基礎にすえた社会モデルの構築に新しい「社会研究の言語」が必要となることを示唆し、認知科学としての数理社会学の構築を提唱した。
  • 和田 修一
    1986 年 1 巻 1 号 p. 41-56
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     地位の不一致・移動効果に関する従来の研究の中で用いられてきた理論と計量モデルの構造を批判的に検討することによって、ひとびとの態度や行動にたいする社会構造の影響分析のしかるべき理論と実証方法について検討した。構造機能概念における社会システムと個人の心理システムは、まったく次元を異にするシステムであり、これらの間の連関関係をモデル化するためには、それらを仲介するメカニズムの存在をパラメータとしてモデルに組み入れ、かつその存在を何等かの手段で証明することが必要である。従来の研究では(ある一部の研究を除いて)、この点の理論的構造を明確にすることなしに、単に計量モデルの改良に腐心してきた嫌いがあるが、地位の不一致効果にしろ移動効果の場合にしろ、それらの事象の本質は一方において社会的地位のバランスや変化という事柄であり、他方においては心理的な要素間のバランスというメカニズムという異質のメカニズムが因果的な関係性において結び付いている点に求められるのであり、したがって社会的地位の形状や変化と態度・行動レベルでの帰結を内生変数とするシステムを当該分析対象とするならば、特定の心理的プロセスをそのシステムの外生変数とする分析枠を設定しなければならない。このパラメータとなる心理的プロセスが具体的にどのような構造と機能を持つものであるかは、注目している人々の態度や行動様式がいかなる性質を有するものであるかによって相対的に決定される。したがって、状況や該当者のパーソナリティ特性などの限定抜きに、地位の不一致や移動の効果を議論することは意味のあることではない。
  • 白倉 幸男
    1986 年 1 巻 1 号 p. 57-70
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     数理社会学の古典としてのSimon-Homansモデルは、本質的部分は図形による質的推論を用いる。Simonの方法では、より一般的な定式化を進めると2つの難点に直面する。「(1)システムは、2つの内生変数のみ限られる.(2)測定単位の影響を被る。」この難点は、Simon=Homansモデルに一貫した解析性がないことに起因する。
     Simonの方法では、調整速度の概念により、多変数システムを2変数システムへ帰着させ、位相図を用いる。かつては、これ以外に、質的な推論を行う方法がなかった。この桎梏からSimon=Homansモデルを解放し、新たな解析的展開の方法を提示する。このために、Jeffries(1974)の二色点法と質的比較静学が用いられる。二色点法は、サイクルテスト、彩色テスト、マッチングテストからなり、質的安定性を識別する。Simonの定式化は、Homansのいう内部体系を充分に把握しない。それゆえSimon=Homansモデルは、質的安定でない。Homansの下位モデルである南洋諸島の呪術と不安の相互連関は、飽和性の想定により集団の安定を保証する。Homansの小集団論の一般化の可能性をあわせて指摘する。
  • 盛山 和夫
    1986 年 1 巻 1 号 p. 71-86
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     社会学の現状の“危機”は、その理論の欠如に由来しており、個別科学としての社会学の独立と安定のためには理論の創出という営為が不可欠である。社会学にはこれまで理論と言うよりも擬似理論の方が横行している。それらは例えば「視座」「概念図式や定義」「経験的一般化」「the more..., the more型言明」あるいは「パスモデルのような統計的モデル」などである。前二者は真偽性を欠いているし、後の三つは説明力に乏しい。
     こうした背景には次のような方法的な誤りがある。(1)説明の持つ意義を否定して記述のみに満足する経験主義的バイアス、(2)小さな問題への理論的考察の価値を評価しない全体論的バイアス、(3)理論の正しさがそれ自体にではなくそれが生産される基盤の方にあると考える土台理論とそれと関連した方法的一元主義、(4)新しい知識がデータからのあるいは既存の言明からの積み上げによってえられるとする積み上げ主義。
     我々の知識の拡大に貢献するような理論の創出にとって必要なのは、知的課題に対してさまざまな解を思い付く想像力とともに、それを自ら厳しく検討していく批判力である。
論文
  • A Proposal for Its Modification
    Atsushi NAOI, Kazimierz SLOMCZYNSKI
    1986 年 1 巻 1 号 p. 87-99
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
         The Yasuda index Y is based on a representation of “pure” mobility that contradicts fundamental assumptions underlying the definition of mobility components. Using a matrix representation of pure mobility the index is modified so that it retains its theoretical appeal and validity. Under the proposed modification the index is a ratio of the two amounts of pure mobility - that which is extracted from the matrix of observed mobility and that which is extracted from the corresponding matrix of “perfect mobility.” For a given matrix of observed transitions both quantities are determinable by means of linear programming.
  • ―投票率を例として―
    宮野 勝
    1986 年 1 巻 1 号 p. 101-114
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     投票率を例として、標本調査が社会の実際と異なる理由を三分し、その相対的重要性を調べる方法を考察する。データとした1980年衆議院選挙に関する明るい選挙推進協会の全国3000サンプル調査の投票率は、選挙結果より12.4%高かった。第一に、この差を、(1)標本誤差、(2)「誤答効果」、(3)非回答バイアス、の三原因に数学的に分解できることを示した。第二に、層別二段抽出法による標本誤差の5%信頼区間はわれわれのデータでは±2.2%であることから、標本誤差以外の二原因によって10.2%~14.6%の誤差がもたらされていると推測した。そこで、第三に、点推定である12.4%を用いて、この誤差を「誤答効果」と非回答バイアスとに分解することを試みた。一つ目の方法は、非線形回帰分析を用いた統計的手法で、データが十分に存在する場合に適用できる。二つ目の方法は、先験的にまたは他のデータから仮定を導入して、数学的に解く手法である。われわれは二つ目の方法を用いて三種類の異なる仮定の各々について推定した。その結果、非回答バイアスが重要で、7~13%の差をもたらし、「誤答効果は」0~6%の差をもたらしたと推測された。第四に、性別などの属性別の分析が可能であり、投票率のデータでは、男性の方が誤差が大きく、非回答バイアスのウェイトも大きい。また、投票―棄権と回答―非回答とが正の相関を持ち、特に非投票者に非回答バイアスの影響が大きい。以上の検討は、標本調査データの特質の理解に重要であり、かつ、投票率以外の項目、例えば、投票政党、教育年数、所得、等にも適用可能である。
  • ―P. V. Marsdenの分析手法をめぐって―
    鹿又 伸夫, 小林 淳一
    1986 年 1 巻 1 号 p. 115-130
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
    P. V. Marsdenは差別的交際を分析する手法を提示した。この手法はログリニア・モデルを応用して、社会的交際パターンについてのいくつかの仮説を検証しようとするものである。かれの分析手法に含まれる「集団内交際の優越」仮説は、各人の所属する集団内での交際のほうが集団外との交際よりも優越するというものである。また「社会的距離」仮説は、集団間の社会的交際がその集団間の社会的距離の大きさと逆比例関係にあるというものである。こうした仮説を経験的に検証するために、かれはログリニア・モデルを再定式化し、交際が「社会的距離」と関連していることを仮定したモデルでは新たなパラメータを導入した。しかし、このパラメータのデリベーションには問題がある。本稿では、こうしたMarsdenの分析手法を検討し、その問題点を示す。
  • 都筑 一治
    1986 年 1 巻 1 号 p. 131-145
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     人間集団では、すべての個々人が他者に同じように接するわけではない。ある者は、他者に差別的な行為をとり、ある者は非差別的行為をとるかも知れない。こうした集団内での差別的行為は、時として、特定の個人あるいは少数者に集中することがあることは良く知られている。いわゆる、「いじめ」とか「スケープゴート」はこうした状態につけられた名称である。本論は、集団内においてこの差別的行為の集中が生じるメカニズムを探ることを目的としている。
     この目的のために、ここでは人々が差別的行為をとるか否かが、集団内の他者の差別的・非差別的行為のありかたに依存することを仮定したモデルを用いる。これは、ハンター(1978)の、集団内の他者への情緒的指向のネットワークの変化モデルを簡略化したものである。モデルの定式化ののち、さらにここでは、シミュレーションによって次の2つのタイプの集団の比較を行い、どのような特性を持つ集団で差別的行為の集中が生ずるかに検討を加えた。第1の集団は、集団内の第3者(K)への行為の違いが当該2者(I)(J)の間に差異をもたらす集団、もうひとつは、第3者(K)からの行為の違いが当該2者(I)(J)の間に差異をもたらす集団である。
     シミュレーションの結果は、両集団いずれにも差別的行為の集中がみられることを示している。ただし、被差別集中者が誰になるかは両集団で異なっている。上に述べた第1の集団では、はじめにひとりに対して差別的行為をとっていた者に差別的行為が集中するが、彼が集団内他者への差別的行為を止めれば、差別の集中状態は解消するのに対して、第2の集団では、はじめにひとりから差別されていた者に差別的行為が集中し、さらに、彼の行為の変更によっては差別の集中状態は解消しないという違いが見られ、固定的な差別的行為の集中が、他者からの行為の違いによって対人行為を決定する個々人からなる集団で生ずるのではないかという示唆が得られた。
  • An Application of Multiple Indicator Model
    Yoshinori KAMO
    1986 年 1 巻 1 号 p. 147-161
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
         A causal model of domestic task sharing among married couples was proposed with power, relative resources, time availability, and ideology as the main predictor variables. The model was then examined using a large American sample (N=3649) and multiple indicator model with the LISREL program. Confirmatory factor analysis led us to eliminate some indicators which have loadings on both endogenous and exogenous dimensions. The structural analysis utilizing the LISREL indicated that the theoretical model proposed here was generally valid but some new causal paths must be added. Findings showed us that the husband's relative share in housework decreases when he works full-time, earns more money, holds a traditional sex-role orientation, and gets less satisfaction from performing household tasks. His share also decreases when his wife does not work, holds a traditional sex-role orientation, and gets more satisfaction from doing housework. In addition, the husband does relatively more housework when he is less powerful in the relationship with his wife. A sensitivity analysis was conducted to check the effect of arbitrarily fixed factor loadings of single indicators and it proved that the model was quite stable among combinations of differently fixed indicator loadings on unmeasured dimensions. Although explanations based on the relative resources principle have been the most common in this topic, other factors such as the power relationship and sex-role orientations must be considered in a more plausible theoretical model of domestic task sharing within a family.
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