理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
4 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集 意図せざる結果
  • 海野 道郎
    1989 年 4 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  •  
    海野 道郎, 長谷川 計二
    1989 年 4 巻 1 号 p. 5-19
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、(1)社会科学において「意図せざる結果」の概念が持つ重要性を主張するとともに、(2)「意図せざる結果」について概念的検討を加え、今後の分析のための枠組みを提供することにある。社会科学の古典において「意図せざる結果は繰り返し論じられてきた。さらに現代においても「自己組織性」や「社会運動論」などの現代社会学の最先端で「意図せざる結果」が論ぜられており、この概念の重要性が示唆された。
     これらの研究の中でとりわけ重要なのはマートンとブードンである。そこでまず、マートンの「潜在機能」および「予言の自己成就」の2つの概念に検討を加え、これらの概念が「意図せざる結果」の下位類型であることを示した。次に、ブードンの研究を取り上げ、「意図せざる結果」の類型化の問題点を指摘するとともに、個々の行為が集積されるプロセスに着目した類型化の必要性を示唆した。最後に、ブードンによる「意図せざる結果」に関する社会理論の4つの形式─「マルクス型」、「トックヴィル型」、「マートン型」、「ウェーバー型」─を取り上げ、これらの類型が、ブードンの「方法論的個人主義」の立場と密接に関連して設定されていることを示し、「意図せざる結果」が生ずるプロセスについて一般的な枠組みを示唆した。
  • 山岸 俊男
    1989 年 4 巻 1 号 p. 21-37
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     社会的ジレンマにおける成員の行動が「意図せざる効果」を生むことはよく知られている。
     すなわち社会的ジレンマにおいては、個々の成員の自己利益追及という意図にもとづく行動が、社会的に集積されることにより、それぞれの成員の意図に反する結果(利益の減少)が生み出されている。このような社会的ジレンマ問題の解決のためにこれまでいくつかの解決法が示唆されてきたが、これらの社会的ジレンマ解決法の「意図されざる効果」については、これまであまり議論がなされていない。本稿では、ジレンマ解決法の「意図されざる効果」の例として、選択的誘因の使用に伴う協力への「内発的動機づけ」の減少、および戦略的行の「外部性」により引起こされる「非協力の悪循環」をとりあげ、そこに含まれる問題を整すると同時に、関連研究の紹介を行なう。
  • 佐藤 嘉倫
    1989 年 4 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     従来の社会計画論は社会計画の失敗メカニズムを的確に捉えることができなかった。その理由は、従来の社会計画論が「社会システムは通常の行為者の『理論や知識』(一次理論)に依存する」ということにあまり注意を払わなかったからである。このため、「社会計画の実施によって通常の行為者の一次理論が変動する」というようなケースを適切に扱うことができなかった。
     本稿では、分析モデルの構成要素として、計画主体の一次理論(政策と結果を結びつける理論)、通常の行為者の一次理論、通常の行為者の一次理論に依存する社会的メカニズム(政策と結果の実際の関係)を設定する。さらに、「社会計画の実施は通常の行為者の一次理論を変動させる」、「通常の行為者の一次理論の変動は社会的メカニズムを変動させる」という二つの仮定を置く。そして計画主体の一次理論と社会的メカニズムの一致・不一致、上の仮定の成立・不成立を組み合わせて、六つのケースを得る。これらの中、社会計画の失敗メカニズムに対応する三つのケースを検討し、失敗メカニズムを解明する。さらに、成功メカニズムに対応する残りの三つのケースも検討し、成功メカニズムの解明も行う。
  • ─数理・計量的研究の展望─
    木村 邦博
    1989 年 4 巻 1 号 p. 53-72
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     公式組織・官僚制における「意図せざる結果」に関する数理・計量的研究を概観し、この種の研究の発展の方向を示唆する。まず、官僚制の逆機能の研究に対するフォーマリゼーションの試みを取り上げ、フォーマリゼーションの戦略に2つのタイプがあることを示す。ひとつは、「Aが大きければBも大きい」という命題の積み重ねによって理論を構築しようとするものである。もうひとつは、合理的行為者モデルを用いて「意図せざる結果」の生じるメカニズムを明らかにしようとするものである。組織における「意図せざる結果」の研究のうち、官僚制の逆機能の研究以外のものでも、これら2つの戦略が用いられていることを示す。さらに、新たなタイプのフォーマリゼーションの可能性を開いたものとして、行為者を「問題解決者」としてとらえる「ゴミ箱モデル」を紹介する。「意図せざる結果」が生じるプロセスの解明に一定の成功を収めてきたのは「合理的行為者モデル」を用いたアプローチであるが、今後はこれに加えて問題解決者モデルの展開が期待される。
  • 三隅 一人
    1989 年 4 巻 1 号 p. 73-92
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     地域生活にはさまざまな共有物がかかわっており、その性質がゆえに、「社会的ジレンマ」を典型とする「意図せざる結果」をともなう。入会地もそのような共有物の特殊例であるが、近代化とともにその制御問題は変質を経てきた。もともと入会をめぐる社会的ジレンマは、基本的に集団規制によって処理可能であった。それを支えていたのは土地を守っていくべき財産とみる農民の価値観である。ところが近代化の影響のもとに土地を商品とみる価値観がムラに浸透し、コンフリクトをともなって「意図せざる結果」を複雑化しながら、入会地の村外流出を促進することになる。このような流れは時間非均質マルコフ連鎖によって定式化できる。そしてそのモデルの中で、危機感をつのらせた農民がある時点で価値観を再度転換した場合に、入会地を守ることができるかどうかを調べた。その結果、地域の置かれた状況や転換時期に大きく依存するものの、入会地の保全が不可能ではないことが確かめられた。これは「意図せざる結果」の処理法として、選好の転換を促す状況変革的な方策の有効性を示唆するものである。
  • ─再生産を伴う資源と社会的ジレンマ─
    高坂 健次, 吹野 卓
    1989 年 4 巻 1 号 p. 93-116
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     天然の漁業資源は、一方では自然的再生産メカニズムを享受しているものの、他方では、人間の手による乱獲のためにしばしば枯渇の危機に晒されている。本稿では、資源の再生産メカニズムの仮定をモデルに組み込み、(1)漁獲規制を遵守した漁獲戦略と、(2)規制を無視して可能な限りの漁獲をする漁獲戦略、の2戦略が選択可能な状況について考察する。そして、漁獲活動がDawes(1975)の定式化による「社会的ジレンマ」に陥るのは、資源再生産と漁獲に関するパラメータが特定の関係を持つ場合だけであることを示す。あわせて、囚人のジレンマ・ゲーム論的な観点から、乱獲の数理モデルの社会学的含みについて考察を加える。
  • ─ゲーレン、ルーマン的規範論の展開─
    井上 芳保
    1989 年 4 巻 1 号 p. 117-132
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     見えない優生思想は知らず知らずのうちに我々の日常の中に入り込んでいる。規範の存在を意味による複雑性の縮減という脈絡で正当化しようとする、ゲーレンからルーマンに受け継がれた規範論もそうした一例として問い直される必要がある。そこでは「意味」は不確実性を極力除去し、我々の救済願望を充足する道具と化している。それは「意図せざる結果」を前にして、不確実性に耐えるだけの「精神の貴族主義」を尊重する立場に立つニーチェとウェーバーとは際立った違いをみせる保守的規範論であり、意外にもフーコーの批判した「抑圧からの解放」図式の再生産といえる。「不確実性」を多分に有するが故に排除されがちな「障害者」との共生の可能性を模索するとき、こうした功利主義的価値前提に基づく機能主義的進化論の問題点を批判的に検討することは不可欠な作業である。
研究ノート
  • 小林 淳一
    1989 年 4 巻 1 号 p. 133-142
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿では、コールマンの集合的決定モデルに対する1つの変種として、行為者間での結合を対象とする「離合集散」モデルを紹介する。そのモデルにおいては、他者の態度・行為に対するコントロールの交換の結果として成立する均衡状態が問題とされ、行為者のインタレスト・地位などの基本的概念が定義される。そうした離合集散モデルの数学的構造を、マルコフ連鎖に関する諸定理によって理解してみる。また実際のデータをモデルに適用し、各職業カテゴリーの地位や勢力を計算してみる。
  • 園田 茂人
    1989 年 4 巻 1 号 p. 143-152
    発行日: 1989/03/24
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     Lipset-Zetterberg命題からFJH命題に至る社会移動に関する研究、ならびにTreimanによる国際威信スコアー研究等に代表されるように、アメリカを中心とする階層研究は元来国際比較を指向する傾向を持っていた。一方、非西洋社会として唯一膨大な階層データを蓄積しつつある日本においては、階層研究者と地域研究者との間に奇妙な形での住み分けが行われている状況にあるためか、日本以外の非西洋社会における階層研究の状況についての情報が極めて不足している状態にあるといってよい。
     そこで本小論においては、筆者の関心領域である中国社会(台湾を含む)を対象とした階層研究について、その歴史的展開と現況を概観し、その中で指摘されてきた若干の知見について紹介することにしたい。
書評シンポジウム
書評
feedback
Top