前庭神経鞘腫の手術を受けて10年が経つ。頭蓋底外科を志し、良き師に恵まれ、多くのことを教わった。現在、前庭神経鞘腫の執刀は30症例を超え、少しずつではあるが日々研鑽を積んでいる。
現在、医療を取り巻く厳しい社会情勢から手術がときに敬遠される現状ではあるが、それでも尚、手術が必要な症例は必ずある。その時にこそ立ち向かえる医師でありたいと常々思う。
小腫瘍は手術適応の判断も難しく、術者にかかる重圧は決して少なくない。しかしながら、顔面神経からの剥離は腫瘍径が小さいほど容易であり、全摘もより確実となる。加えて、合併症の頻度が少ないのもまた事実である。
多くの経験と自信を兼ね備えた師の存在は、常に輝いている。少しでも追いつき、また追い越せるよう精進するのみである。
私が手術を受けたとき、術前の執刀医による自信に満ちた言葉は今でも鮮明に記憶している。
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