パーソナリティ研究
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14 巻, 1 号
(2005)
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • ――幼児期と青年期の愛着スタイル間の概念的一貫性についての検討
    金政 祐司
    2005 年 14 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,青年期の愛着スタイルと感情調節ならびに対人ストレスコーピングとの関連についての検討を行った.研究1では大学生460名を対象に,青年期の愛着スタイルと感情調節との関連を検討した.その結果,安定型愛着スタイル傾向は,感情の表出性や感受性と正の関連を,反対に,アンビバレント型傾向は,それらと負の関連性を示していた.また,愛着次元からの分析では,“関係不安”は,感情の感受性に,“親密性回避”は,表出性にネガティブな影響を与えていた.さらに,統制については,それら2次元軸の交互作用が見られ,“関係不安”が低い場合に“親密性回避”の影響が認められた.研究2では,大学生393名について,青年期の愛着スタイルと対人ストレスコーピングとの関連について検討を行った.その結果,安定型傾向は,ポジティブ関係コーピングと正の関連を,ネガティブ関係コーピングとは負の関連を示しており,不安定型の愛着傾向は,ネガティブ関係コーピングと正の関連を示していた.愛着次元からの分析では,“関係不安”の影響は,ネガティブ関係コーピングおよび解決先送りコーピングにおいて見られ,“親密性回避”の影響は,ポジティブ関係コーピングで認められた.これらの結果について,幼児期と青年期の愛着スタイルの概念的な対応性の観点から議論を行った.
  • 藤澤 文
    2005 年 14 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学生を対象として,社会的ルールの決定場面における討論手続きの検討を行った.調査協力者は,ルールの決定手続きに関して,討論条件もしくは統制条件に割り当てられた.質的に異なる複数のルールを提示し,統制条件よりも討論条件において,ルール決定が支持されるかどうかが検討された.研究1では,討論あり条件と討論なし条件においてルール決定を支持する程度は異ならなかった.研究2において,他者視点が提示されるボトムアップの討論手続きを示した場合,討論なし条件よりも討論あり条件においてルール決定が支持されていた.また,いずれの領域(道徳,慣習,個人,個人道徳,状況的慣習)においても討論なし条件よりも討論あり条件においてルール決定は支持されていた.この結果の再現性を検討するために研究3を行った.その結果,研究2を支持する結果が得られた.
  • 山形 伸二, 高橋 雄介, 繁桝 算男, 大野 裕, 木島 伸彦
    2005 年 14 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,成人用エフォートフル・コントロール(EC)尺度日本語版を作成し,その信頼性・妥当性の検討を行った.研究1では,大学生,専門学校生209名を対象に質問紙調査を行い,日本語版EC尺度とその下位尺度が必要な内的一貫性,再検査信頼性を持つことを確認した.また,新奇性追求,損害回避,ビッグ・ファイブのパーソナリティ次元,および抑うつ・不安との関連性から,尺度の構成概念妥当性が支持された.研究2では,日本語版EC尺度が単なる自己認知のみでなく実際の実行注意を測定しているか否かを検討するため,研究1の参加者のうち大学生47名を対象にストループ課題を行い,干渉効果の程度と日本語版EC尺度との関連を検討した.日本語版EC尺度合計および「行動抑制の制御」下位尺度は一致試行における誤反応率と負の相関を示し,また尺度合計および「行動抑制の制御」,「注意の制御」下位尺度は干渉効果の大きさと負に相関した.この結果から,尺度の基準関連妥当性が確認された.
  • 金 美伶
    2005 年 14 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は対人不安が日本文化を反映した日本人の特徴であるという意見に疑問を呈し,同じ東洋文化である韓国大学生272名と日本の大学生250名を対象にした比較文化研究を行った.青年期の発達課題である同一性の確立,公的自己意識,及び相互依存的自己という3つの要因を取り上げて,共分散構造分析により対人不安発生の因果構造を検討した.その結果,対人不安を規定する3つの要因の影響力の表れ方には差があり,対人不安は日本の方が韓国より高いことが見出されたものの,対人不安に影響する3つの要因のパス図が両国に共通することが示された.対人不安が日本人の特徴というより,韓国と日本に共通する心理構造であることが示唆された.
  • 荒木 剛
    2005 年 14 巻 1 号 p. 54-68
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    いじめ被害体験者が青年期後期において示す不適応状態に関して,リズィリエンス(resilience)研究の枠組みに基づき,対人的ストレスイベントとコーピングスタイルをそれぞれ脆弱性因子及び保護因子として取り上げ,青年期後期の適応状態に対する効果をいじめ被害体験者/非被害体験者間で比較・検討した.大学生及び専門学校生301名(平均年齢19.66歳,SD=1.29)を対象とした質問紙調査により,いじめ被害体験者は青年期後期において特に対人的ストレスイベントを多く体験しているわけではないにもかかわらず,非被害体験者よりも適応状態が悪い傾向が見られた.この傾向は男性の方が強く,いじめ被害開始時期は無関係であることも同時に示された.また,被害体験者においては保護因子として問題解決型・サポート希求型コーピングが補償的に機能していることを示唆する結果が得られた.
  • 安藤 玲子, 高比良 美詠子, 坂元 章
    2005 年 14 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    従来の研究は,ネット使用が孤独感などに悪影響を持つ可能性とソーシャルサポートなどにポジティブな効果を持つ可能性の両者を示してきた.しかし,これらは成人を対象としたものが中心で,子どもを対象とした研究は乏しかった.そこで,本研究では中学生298名を対象にパネル調査を行い,ネット使用が友人関係の孤独感とソーシャルサポートに与える影響について検討した.なお,ネット使用は,ツール別および使用目的別にそれぞれ検討を行った.その結果,中学生では,Eメールの使用が多いほど友人関係の孤独感が下がり,ネット使用が全体的に多いほどネット上やネット外の友人からのソーシャルサポートが増えるというポジティブな効果がみられた.特に,多くのツールや使用目的でネットを使用することが多いほど,ネット友人からのソーシャルサポートが増えていた.
資料
  • 上地 雄一郎, 宮下 一博
    2005 年 14 巻 1 号 p. 80-91
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,Kohutの自己心理学の視点から自己愛的脆弱性を測定する尺度を作成することであった.自己愛的脆弱性は,承認・賞賛への過敏さ,潜在的特権意識,自己顕示抑制,自己緩和不全,目的感の希薄さという5つの指標を通して測定できると想定した.用意された52項目を因子分析した結果,上記の指標に相当する因子が確認された.因子分析により選択された40項目が5つの下位尺度に分類され,これらの全体が自己愛的脆弱性尺度(Narcissistic Vulnerability Scale: NVS)と命名された.NVSで測定される自己愛的脆弱性は,過敏型の自己愛と正の相関を示した.NVSの全下位尺度において,高得点者は低得点者よりも高い不安やうつ傾向を示した.精神症状をもつ患者は,NVSの全下位尺度において健常者より高い得点を示した.
  • 村井 潤一郎
    2005 年 14 巻 1 号 p. 92-100
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,質問紙を用い,強調語が発言内容の欺瞞性認知に及ぼす影響について検討するものである.強調語を含む発言内容は,そうでない発言内容よりも欺瞞度が高い,と予測された.この点について検討するために,強調語を含む発言内容と強調語を含まない発言内容の2種類が,各々3つ構成された.質問紙の実施に先立ち,必要なサンプルサイズを算出するため,コンピュータプログラム“GPOWER”を用いた.研究参加者は202名の女子大学生であり,2条件のいずれかに割り当てられ,呈示された発言内容について欺瞞性の評定を7件法にて求められた.その結果,予測に反し,欺瞞性は強調語の影響を受けなかった.さらに,欺瞞性は,一般的信頼尺度と弱い負の相関が認められた.以上,顕著な結果が認められなかった原因などについて論じ,今後の展望を述べた.
  • ――自己決定理論の枠組みから
    岡田 涼
    2005 年 14 巻 1 号 p. 101-112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,自己決定理論の枠組みから,大学生を対象に友人関係への動機づけを測定する尺度を作成し,その妥当性と信頼性について検討した.先行研究に従い,外的,取り入れ,同一化,内発の4下位尺度を設定した.確認的因子分析,下位尺度間相関,他の尺度との関連から4因子構造が確認され,その妥当性が示された.信頼性については,α係数,再検査信頼性を検討した結果,一定の信頼性を有することが示された.また,友人関係への動機づけが友人への向社会的行動に及ぼす影響を検討したところ,同一化や内発など友人関係への動機づけが自己決定的であるほど,向社会的行動の生起頻度が高くなっており,そのような関連は特に男性において強く見られた.以上のことから,友人関係への動機づけは妥当性と信頼性を有し,友人への向社会的行動を予測することが明らかにされた.
討論
  • ――日本パーソナリティ心理学会会員の問題意識の抽出による検討
    酒井 久実代, 大久保 智生, 鈴木 麻里子, 友田 貴子
    2005 年 14 巻 1 号 p. 113-124
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究はパーソナリティ心理学教育における問題点を明らかにし,今後の望ましいあり方について検討することを目的として行われた.日本パーソナリティ心理学会会員を対象とした質問紙調査からパーソナリティ心理学関連の授業を担当している会員は53%,受講した経験がある会員は63%にすぎず,大学におけるパーソナリティ心理学教育は充実しているとは言えない状況であった.またパーソナリティ心理学と他の関連領域を包括した授業のあり方への言及とパーソナリティ心理学の独自性が確立できていないことの指摘がみられた.パーソナリティ心理学教育に関する大会シンポジウムでは,教養教育,経営人事アセスメント,心理臨床におけるパーソナリティ心理学について話題提供がなされた.調査と話題提供で示された視点から,一般教養としてのパーソナリティ心理学は自己理解教育,心理学の入門としての役割があること,専門教育としては学際性の追求と独自性の確立という2つの方向性があることが示された.パーソナリティ理論を幅広く教えることの必要性,関係性を重視したパーソナリティ理論を取り入れることにより臨床心理学や産業・組織心理学の基礎としての有用性が高められることが考察された.
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