パーソナリティ研究
Online ISSN : 1349-6174
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29 巻, 3 号
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原著
  • 浅野 良輔, 浦上 萌, 徳田 智代, 園田 直子
    2020 年 29 巻 3 号 p. 125-136
    発行日: 2020/12/03
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー
    電子付録

    社会的関心の高さにもかかわらず,モバイル端末利用と子どもの自己制御をめぐるエビデンスは乏しい。本研究では,幼少期におけるスマートフォン・タブレット利用とエフォートフル・コントロール(EC)の関連を検証した。研究1では,2–6歳の長子をもつ養育者183名にインターネット調査を行った。スマートフォン・タブレット利用用途尺度,利用場面尺度,利用規則尺度が作成され,いずれも1次元性と高い信頼性が示された。研究2では,2–6歳の長子をもつ夫婦カップル455組にインターネット調査を行った。共通運命モデルによる分析の結果,人口統計学的特性を統制してもなお,スマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途,スマートフォン・タブレット利用場面はECと関連していなかった一方で,スマートフォン・タブレット利用規則がECの高さと関連していた。子どもの年齢に基づく下位集団分析でも,同様の結果が得られた。

  • 下村 寛治, 西口 雄基, 石垣 琢麿
    2021 年 29 巻 3 号 p. 150-158
    発行日: 2021/01/06
    公開日: 2021/01/06
    ジャーナル フリー

    加害型対人恐怖症(加害型TKS)とは,対人恐怖症のうち,自分が他者を害していると確信して対人場面を恐れるサブタイプである。このサブタイプは,社交不安症(SAD)と類似した病態を示しながらも,恐怖が他者指向であるという違いが指摘されてきた。しかし,加害型TKSとSADに特有の症状を個人のどのような要素が予測するのかは検討されてこなかった。そこで本研究では,BIS/BAS (behavioral inhibition/activation system)および過剰適応傾向に着目し,これらの変数がそれぞれに特有の予測要因となるかを検討した。大学生274名を対象に質問紙調査を実施し,対人恐怖症傾向,社交不安症傾向,BIS/BAS,過剰適応傾向,抑うつ傾向を測定した。重回帰分析の結果,BIS/BASはSADに特有の予測要因である一方,過剰適応傾向は加害型TKSに特有の予測要因であることが示唆された。これは加害型TKSとSADがそれぞれ特有の心理的メカニズムを持つ可能性を示唆する。

  • 中川 威, 安元 佐織, 樺山 舞, 松田 謙一, 権藤 恭之, 神出 計, 池邉 一典
    2021 年 29 巻 3 号 p. 162-171
    発行日: 2021/01/26
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    発達科学分野において,加齢に伴い感情がどのように変化するかが記述されてきた。ほとんどの研究は,年間隔といった長期的な個人内変化に着目してきた。しかし,日間隔といった短期的な個人内変動に関する知見は限られている。本研究では,若年者19名(19–29歳),高齢者21名(82–84歳)を対象に日誌調査を行い,感情の個人内変動の年齢差を検討した。調査参加者は,ポジティブ感情とネガティブ感情を経験した程度を7日間毎晩回答した。感情の個人内変動の指標には,変動性(個人内標準偏差),慣性(自己相関),不安定性(平均二乗逐次差)の3つを用いた。高齢者では,若年者に比べて,変動性と不安定性は小さかった。また,高齢者でのみ,ポジティブ感情の慣性が高いとネガティブ感情の平均的な程度が高かった。今後,感情の個人内変動の年齢差のメカニズムを検討すべきだろう。

  • 櫛引 夏歩, 望月 聡
    2021 年 29 巻 3 号 p. 172-182
    発行日: 2021/02/09
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,第一に境界性・自己愛性・演技性・回避性・依存性パーソナリティ障害傾向(PD傾向)と獲得的セルフ・モニタリング(獲得的SM)および防衛的セルフ・モニタリング(防衛的SM)との関連を検討すること,第二にPD傾向がSMを媒介して自己像の不安定性に及ぼす影響について検討することであった。大学生・大学院生297名を分析対象とした質問紙調査を行った。結果より,獲得的SMに対して演技性PD傾向は正の関連を,依存性PD傾向は負の関連を示し,防衛的SMに対して境界性・演技性・回避性PD傾向は正の関連を,自己愛性PD傾向は負の関連を示した。また,自己愛性・演技性・回避性PD傾向において,防衛的SMの下位因子を媒介して自己像の不安定性に影響することが示された。本研究の結果から,演技性・回避性PD傾向において,他者志向的なSMを行い,他者や状況のような外的要因の影響を受けることが自己像の不安定性につながることが示唆された。

  • 賀屋 育子, 山崎 勝之, 横嶋 敬行, 内田 香奈子
    2021 年 29 巻 3 号 p. 191-203
    発行日: 2021/03/02
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究の目的は,小学生を対象とし,不適応的セルフ・エスティームとして提唱されている他律的セルフ・エスティーム(Heteronomous Self-Esteem: HSE)が児童の心理的ストレス反応に及ぼす影響について予測的研究方法を用いて検討を行うことであった。調査は小学校4年生から6年生592名(男子291名,女子301名)を対象に5から6週間の間を空けて2回行われた。HSEの測定には,全体的な特徴を示す全体HSEと,コンピテンス領域の勉強HSE,運動HSE,芸術・技術HSEの4つを用いた。階層的重回帰分析の結果,Time 1の全体HSEおよび勉強HSE,運動HSEは,Time 2の人間関係に対する心理的ストレス反応の高さを予測していることが示された。このことから,他律的SEの高まりが精神的健康や不適応行動に繋がる可能性が示唆された。科学的効果検証に基づくSE教育の知見の必要性と,本研究の課題について議論された。

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