パーソナリティ研究
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最新号
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原著
  • 富井 繭, 小塩 真司
    2024 年 32 巻 3 号 p. 141-151
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究の目的は,自己意識と孤独感の関連を検討することであった。研究1では,公的自己意識および私的自己意識と孤独感の関連について検討した。日本人男女200名が公的・私的自己意識尺度,日本語版UCLA孤独感尺度第3版に回答した。重回帰分析の結果より,公的自己意識と私的自己意識は孤独感と有意な関連を示さなかった。研究2では,公的自己意識の下位側面である賞賛獲得欲求・拒否回避欲求と私的自己意識の下位側面である反芻・省察と孤独感の関連について検討した。日本人男女400名が賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度,反芻・省察尺度,日本語版UCLA孤独感尺度第3版に回答した。重回帰分析の結果より,賞賛獲得欲求と省察は孤独感と負の関連,反芻は正の関連を示し,拒否回避欲求は有意な関連を示さなかった。

  • 上田 皐介, 山形 伸二
    2024 年 32 巻 3 号 p. 152-163
    発行日: 2024/03/13
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究は(1) Big Five各特性の社会的望ましさの認知と個人的望ましさが正に相関するか,(2)その強さが関係流動性の認知により異なるかを検討した。参加者(研究1:大学生224名,研究2:調査会社のモニター558名)は,Big Five尺度の各項目の社会的望ましさの認知と個人的望ましさ,関係流動性の認知を回答した。確認的因子分析の結果,社会的望ましさの認知と個人的望ましさの両方で5因子構造(+ランダム切片または方法論的因子)が最適であった。社会的望ましさの認知と個人的望ましさは全特性で正に相関し(研究1: rs = .52–.69,研究2: rs = .59–.67),その強さは一部の特性において関係流動性の認知(高群vs.低群)により異なった(誠実性:r = .42 vs. .64 (研究1),r = .55 vs. .66 (研究2);調和性:r = .59 vs. .73 (研究2))。性格特性の望ましさの研究への示唆が議論された。

  • 永井 颯
    2024 年 32 巻 3 号 p. 164-175
    発行日: 2024/03/13
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム障害(ASD)の診断を持つ者や,ASD傾向が高い者において,実行機能の低下が見られることが多くの研究で報告されている。本研究では,特性不安をASD傾向が高い者の実行機能の低下を引き起こす要因として捉え,検証を行った。ASD傾向及び特性不安は自己記入式の質問紙で,実行機能は自己記入式の質問紙とともに,フランカー課題とウィスコンシンカード分類課題を用いて測定した。その結果,ASD傾向と実験課題で測定された実行機能の間には関連が見られなかった。一方,ASD傾向と質問紙で測定された実行機能の間には関連が見られ,その関連は特性不安により部分的に媒介されていた。このことから,ASD傾向が高い者も,行うべきことが明確である構造化された環境下では,特性不安の影響を受けずに本来有する機能を発揮できるのに対し,日常的な環境下では,特性不安の影響を受け,実行機能の基礎的能力の適切な応用が困難となる可能性が示唆された。

  • 向井 智哉, 井奥 智大, 岩谷 舟真, 貞村 真宏, 田中 晶子, 松木 祐馬, 湯山 祥, 綿村 英一郎
    2024 年 32 巻 3 号 p. 179-187
    発行日: 2024/03/14
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー
    電子付録

    児童虐待の防止が重要であること,ならびに児童虐待者に対する量刑に際しては市民の意識が重要であることは広く認識されている。しかし,児童虐待者に対する量刑と態度の関連を検討した研究は極めて少数にとどまる。そこで本研究は,性役割態度に関する知見および法学の議論に基づき,伝統的性役割態度が虐待者への非難を強め,非難が転じてより重い刑を導くという媒介モデルを検証した。807名から得られたデータを分析したところ,伝統的性役割態度の媒介効果は有意であった。しかし,仮説とは異なり,その方向性は負であり,平等志向的な性役割態度を有する人(つまり,伝統的性役割態度の得点が低い人)ほど,児童虐待者を非難し,長い刑を求めることが示された。この結果は,量刑研究においては平等が重要な考慮事項であることを示唆していると解釈された。

  • 樋口 収, 新井田 恵美, 田戸岡 好香
    2024 年 32 巻 3 号 p. 188-198
    発行日: 2024/03/14
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー
    電子付録

    新型コロナのパンデミックによって,私たちは感染ガイドラインを遵守するように求められるようになった。先行研究によれば,心理的特権意識が高い人たちはガイドラインを遵守した行動をとりにくい。私たちは,こうした現象は心理的特権意識が高い人たちが他者のことを配慮していなかったり,自分が新型コロナに感染しても重症化しないと考えるために生じるという仮説をたてた。本研究は,2021年4月と2022年1月に合計5回の調査を実施した。本研究に参加したのは,全部で日本の大都市圏に住む1750名であった。調査の結果,仮説は支持された。ただし,それは緊急事態宣言やまん防が発出されているときに限られていた。心理的特権意識が高い人たちがなぜガイドラインを遵守しにくいのかについて考察した。

  • 小林 茉那, 瀬戸 正弘
    2024 年 32 巻 3 号 p. 199-212
    発行日: 2024/03/14
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー
    電子付録

    先行研究により,自己愛傾向者における感情制御の困難さが指摘されている。しかし,対人交流の中で展開される対人的感情制御(以下,IERとする)については,自己愛における重要性が示唆されているにもかかわらず十分に検討がされていない。本研究では,自己愛傾向がコンパッションへの恐れを媒介としてIERの効果認知に及ぼす影響について検討した。大学生228名に直近でIERを行った経験の想起を求め,IERの効果認知,自己愛傾向,コンパッションへの恐れを測定した。214名のデータを分析対象として構造方程式モデリングと媒介分析を行った結果,自己愛的な誇大性は他者に対するコンパッションへの恐れを媒介して,自己愛的な脆弱性は他者に対するコンパッションへの恐れおよび他者からのコンパッションへの回避を媒介して,それぞれIERの効果認知と負の関連を示した。

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