真夏の強い日差しの下でレジャーやスポーツをすることにより, その日の夕方から夜にかけて極度な疲労を感じることがある。これに関し, 22-62歳の健常男女204名を対象にアンケート調査を行った結果, 太陽光により疲労が誘発されることは一般的に認識されていることが確認された。一方, 疲労を脳機能のパフォーマンスの低下として捉えることで客観的に定量化する試みがなされており, Advanced Trail Making Test (ATMT) 法が近年報告されている。本研究では, 太陽光によって誘発される疲労を科学的に捉えるために, ATMT法を用いた評価の可能性について検討した。太陽光曝露による疲労発生試験として, 26-41歳の健常男性15名を, 真夏の晴天時の日中, 紫外線として100kJ/cm
2相当量の太陽光に1日3-4回, 連続3日間曝露させた。被験者の着衣条件は半袖および半ズボンとし, 頭部はタオルで防御した。3日間の太陽光曝露により“疲労を感じた群 (
n=10)”では, “疲労を感じなかった群 (
n=5)”に比べ, 太陽光曝露日 (1, 2および3日目) の夕方および3日目の朝に疲労感の主観評価点において増加が観察された。一方, ATMT値においても, 太陽光曝露1日目, 2日目の夕方および3日目の朝に主観評価と同様に有意な増加が認められた。これらのことから, 太陽光により発生する疲労はATMT法を用いることにより客観定量できる可能性が示唆された。また, 主観評価項目について重回帰分析を行った結果, 太陽光による疲労感は, 非曝露時の疲労感に影響する“眠い”に加え, “消極的な気分”および“注意の集中ができにくい”といった項目にも影響されることが示され, 日常感じる疲労とは質的に異なることが推測された。
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