日本化粧品技術者会誌
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46 巻, 4 号
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特集総説 やさしく洗浄する技術(4)
報文
  • 桒原 亮子, 齊藤 ゆかり, 今井 健仁, 丹羽 正直
    2012 年 46 巻 4 号 p. 264-270
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    近年,毛髪のダメージに対する意識は高まっているが,微細構造レベルでのダメージのメカニズムについては十分に把握されていない。ダメージ毛内部の水の分布状態を可視化できれば,毛髪微細構造のどの部分がダメージを受けやすいのかがわかると考えた。具体的には,含水させたダメージ毛を液体窒素で凍結固定したのち,クライオミクロトームで作製した平滑な毛髪横断面をクライオユニットを装備した走査型電子顕微鏡 (クライオSEM) で観察した。クライオSEMでは氷は昇華するため,もともと水が多い部分は窪みとして観察される傾向にあった。その結果,未処理毛では窪みはほとんど観察されないが,ダメージ毛ではコルテックスのCMC (細胞膜複合体),マクロフィブリル間充物質,細胞核残渣,メラニン顆粒とみられる部位で窪みが観察された。つまり,こういった構造でよりダメージを受けやすく,含水時には水が局在化しやすい部位であることが示唆された。また,クライオSEM像における窪みの度合いは,水による毛髪の膨潤度および引張りによる破断強度との間にそれぞれ相関性が認められ,毛髪のダメージ度合いを表しているものと考えられた。
  • 郷田 千恵, 本田 佳子, 山下 美香, 中出 正人
    2012 年 46 巻 4 号 p. 271-286
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    化粧品の効果,有用性を評価する際には,肌上での化粧品の状態を解析する必要がある。特にメーキャップ製剤では,肌上での化粧塗膜の状態が化粧効果に大きく影響していると考えられるため,その状態の詳細な評価は,より高機能な製品を開発するうえで重要である。従来,皮膚上に形成された化粧塗膜の状態を評価する手法としては目視やマイクロスコープを用いて観察する方法が一般的であったが,得られる情報は巨視的,かつ二次元の情報に留まり,製剤を開発するうえで重要な粉体の微視的情報や塗膜の三次元的な状態を確認することは不可能であった。そこでわれわれは肌に塗布した化粧塗膜の状態を微視的に解析するための手法として,転写剤を用いて肌上の化粧塗膜を転写し,走査型電子顕微鏡 (SEM) を用いて観察する手法を考案した。まず,化粧塗膜の採取方法を検討し,最適な転写剤を選定した。次に,化粧塗膜の観察に適したSEMの観察条件を設定し,塗膜の微視的な解析を試みた。さらに本手法を応用し,塗布方法の違いによる化粧塗膜の状態の差異,および化粧が崩れる際の塗膜構造の崩壊の過程,さらには化粧塗膜に含まれる粉体の分散状態とSPF機能との相関について検討を行った。その結果,われわれが開発した手法により,これまで目視レベルで認識されていた仕上がりの差異を,塗膜状態の差異として微視的かつ客観的に評価できることが明らかとなった。化粧崩れという時間経過を伴う現象においても,油脂と粉体の微視的な挙動を追跡することでそのメカニズムが解明可能であることを示した。化粧塗膜に含まれる粉体の分散性とSPF機能との相関については,粉体の分布が製品の機能に直結することが示された。今回開発した手法は,肌上での粉体の状態の観察を可能とし,メーキャップ製剤の機能性を評価するうえで有用であることが示された。
  • 渡辺 啓, 松尾 玲, 井上 裕基, 安達 謙太郎, 野田 章
    2012 年 46 巻 4 号 p. 287-294
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    メーク落としに求められる重要な特徴は,「メーク落とし効果」と洗い流し後の「さっぱり感」である。しかしながら,これら2つのを要素を満たすメーク落とし製品は市場には存在しなかった。これは,従来技術ではこれらの要素はトレードオフの関係にあったためである。われわれは,この課題を解決するために,「メーキャップとのなじませ」と「洗い流し」の間に存在する「水を加える」という行動に着目し,界面活性剤の溶存状態変化を,相平衡図上で界面化学的に検討した。その結果,「メーキャップとのなじませ」時には洗浄力の高い逆ミセル油溶液であり,水を加えると,両連続構造を経由して,「洗い流し」が容易なミセル水溶液に相転移する特異な系を見出した。このような系を実現するためには,①HLB (親水性-親油性バランス) を釣り合わせ,界面活性剤低濃度領域に存在するO/W領域を縮小すること,②極性の油を添加し,相平衡図の中央付近に出現することの多い高粘性の液晶相を消去すること,が重要であることが明らかになった。逆ミセル油溶液をクレンジングオイルとして用いると,「メーク落とし効果」は非常に良好で従来のクレンジングオイルと同程度であり,「さっぱりさ」は皮膚上への油の残留がきわめて少ないためクレンジングローションと同程度であるという特徴を有していた。この高性能クレンジングオイルは,クレンジングオイルによるメーク落としプロセスを界面化学的に詳細に検討することで,トレードオフの関係にあった要素を両立させたものである。
ノート
  • 谷口 康将, 野村 重雄
    2012 年 46 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    われわれは最小発育阻止濃度を基準とした予測式を用いて,化粧品の保存効力を予測する方法を開発した。今回この方法により,特定の要件を満たした約500品の化粧品の保存効力を予測し,保存効力試験の結果との比較を行った。これらの化粧品は抗菌性原料の組み合わせ,保湿成分,粘度調整剤,油相成分等,配合成分に違いがあるが,本法を用いて保存効力の予測が可能であることが確認された。新しい化粧品を開発する際,防腐に必要な抗菌性原料の配合量は,これらの配合量のみを変えた一連の化粧品を作製し,保存効力試験の結果より決定される。適正な配合量を求めるためには試験を繰り返して実施しなければならないが,本法により計算によって配合量の目安が求められるため,試験品数が削減でき,効率的な新製品開発が可能になると期待される。
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