日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
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55 巻, 2 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2005 年 55 巻 2 号 p. Cover1-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2005 年 55 巻 2 号 p. Toc1-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 大串 隆之
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
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  • 巌佐 庸
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 225-226
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
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  • 松浦 健二
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 227-241
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    進化生物学においてHamilton(1964)の血縁選択説の登場は、Darwinの自然選択説以降の最も重要な発展の一つである。本論文では、この40年間の真社会性膜翅目とシロアリの研究を対比しながら、昆虫における真社会性の進化と維持に関する我々の理解の進展について議論する。まず、真社会性膜翅目の性比に関する研究により血縁選択説の検証が行われていった過程について概説する。一方、シロアリにおける真社会性の進化に関して、血縁選択の観点からのアプローチを紹介し、その妥当性も含めて議論する。なぜ「性」が進化し、維持されているのか。この間題は古くから、そして現在も最も重要な進化生物学の課題の一つである。実は真社会性の進化と維持の問題は「性」の進化と維持の問題と密接な関係にある。社会性昆虫の社会は血縁者に対する利他行動で成立しており、血縁度の側面から社会進化を考えるならば、コロニー内血縁度の低下を招く有性生殖よりも、いっそ単為生殖の方が有利なはずである。つまり、真社会性の生物では、ほかの生物にも増して単為生殖によって得られる利益が大きく、それを凌ぐだけの有性生殖の利益、あるいは単為生殖のコストが説明されなければならない。現在までに報告されている産雌単為生殖を行う真社会性昆虫に関する研究をレビューし、真社会性昆虫にとっての有性生殖と単為生殖の利益とコストについて議論する。
  • 藤崎 憲治
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 243-245
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 辻 和希
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 245-247
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
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  • 近藤 倫生
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 249-261
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    食物綱とは生物群集内の捕食・被食関係を描いたグラフである。個体群動態は直接・間接の種間相互作用の影響を受けるが、捕食・被食関係を通じた相互作用の生じ方は食物網の構造に依存する。したがって、食物綱構造は個体群動態を理解するうえでの鍵となる。これまで、食物網の複雑性(種数、結合度)と安定性の間の関係について多くの研究がなされてきたが、数理モデルを用いた理論研究ではしばしば食物網の複雑性が高くなると安定性が低下するとの予測がなされてきた。その後、現実の食物網の特徴や現実的な仮定を組み込むことによって、複雑な食物綱が安定に存続しうることが理論的に示されてきた。しかし、これらの研究の多くは「食物綱の構造は固定的で変化しない」という生物の根本的な特徴を無視した仮定にとらわれてきた。生物の最も重要な特徴のひとつは、表現型可塑性や進化のためにその行動や形態が適応的に変化するということだ。捕食行動や対捕食者防御行動が適応的に変化する場合、食物網を構成する捕食・被食関係のリンクもやはり時とともに変化しうる柔軟なものとして捉えなくてはならない。このような適応のひとつである適応的餌選択とそれに由来する食物網の柔軟性を考慮すると、食物網・生物多様性の維持に関してこれまでとはまったく異なる理論予測が導かれる。第一に、複雑性-安定性関係が正になりうる。第二に、食物網の結合度と安定性の間の関係が時間スケールと結合度の差を生み出すメカニズムに依存するようになる。第三に、生物の適応が生物間の相互作用の歴史の結果にできたものであることから、歴史こそが群集を安定化する鍵になっていると考えることができる。食物網の柔軟性が個体群動態におおきな影響を与えうることが多くの研究によって示唆されてはいるが、それを確かめるのは容易ではない。なぜなら食物綱の時とともに変動する詳細な構造を調べ上げることは簡単ではないからだ。工夫を凝らした実証研究によってこれらの理論予測をテストしていくことが今後の課題であろう。
  • 中島 久男
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 263-265
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 仲岡 雅裕
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 265-268
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 高井 則之
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 269-285
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海における有機物および一次生産者の炭素・窒素安定同位体比分布を、海域特性の異なる4海域に分けて概括し、安定同位体を用いた有機物質フロー解析の枠組みを提示した。表層水中に含まれる懸濁態有機物や堆積物中有機物の安定同位体比は、炭素・窒素とも大阪湾奥部で低くなる傾向があるのに対し、大阪湾中西部、広島湾および安芸灘では、そのような傾向は認められていない。大阪湾奥部には淀川などから大量の河川水が流入するため、δ13C、δ15N共に低い陸成有機物が流入・堆積していることが示唆されている。また、δ15Nについては、富栄養化した湾奥部で藻類が無機態窒素の一部を同化する際の同位体分別によって、堆積物中有機物の値が低下する機構の存在も示唆されている。大規模なアマモ場が形成される三津口湾(内湾)の堆積物中有機物の安定同位体比は、アマモ場の内部でδ^<13>Cが高くなり、δ15Nが低くなる傾向にある。アマモ場内部でδ13Cが高かったのは、アマモとその葉面付着藻類が枯死してアマモ場内部に堆積したためであるものと推察されている。また、アマモ場内部でδ^<15>Nが低かったのは、小河川から陸成有機物が流入・堆積したことに起因している可能性が示唆される。付着微細藻類の指標である付着有機物は、瀬戸内海では概ね懸濁態有機物よりδ13C値が高い。ただし、δ13C、δ15Nとも付着基盤の種類(石面、海草表面、貝殻表面)によって分布が異なる傾向にある。海藻類の安定同位体比分布は、δ13Cの幅広い分布で特徴づけられる。広島湾では、湾央水域より都市化の進んだ湾奥水域で、海藻類の安定同位体比がδ13C、δ15Nとも上昇していることが報告されている。瀬戸内海の底生動物群集の多くは底生植物とδ13C分布が重なっており、底生植物起源の有機物から多量の炭素供給を受けていることが示唆されている。
  • 原稿種別: 付録等
    2005 年 55 巻 2 号 p. 287-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 山内 淳, 川端 善一郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 289-290
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 山内 淳
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 291-299
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    植食者からの摂食を受けることで植物の一次生産や繁殖量が増大する「grazing optimization」という現象が、多くの研究によって報告されている。この現象は、植物と植食者という異なる栄養段階に属する生物間の相互作用が、生態系を支える重要な要因である一次生産に影響するという意味で、生物多様性の機能と役割を理解する上で興味深い現象である。本研究では、このgrazing optimizationがどのような条件の下で引き起こされるのかについて、植物体中の栄養が植食を介して土壌中に再供給される「nutrient cycling」の役割に注目しながら、さらに植物のフェノロジーの進化と関連づけて理論的な解析を行った。その際、以下の点を明確にしながら解析を進めた。すなわち、(1)植食圧の増大に対する植物の反応が、進化や適応的な表現形可塑性によるフェノロジーの変化を伴う場合(「長期的反応」)とそれらを伴わない場合(「短期的反応」)の区別、および、(2)植食圧の増大に対して植物の一次生産が増大するのか、それとも繁殖量が増大するのかという区別である。これらの解析から、一般に「長期的反応」では「短期的反応」に比べてgrazing optimizationが生じにくいこと、特に繁殖量に関するgrazing optimizationが起きる条件がかなり厳しいことが分かった。また、植物個体間に栄養を巡る競争が存在する場合には、grazing optimizationが生じる条件が大きく緩和されることが明らかになった。
  • 清野 達之
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 301-305
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    熱帯林の樹木多様性は分類学上の種の多様性と、それらの機能的な多様性から特徴づけられる。材の生態学的な特性に着目し、種内と種間の機能的多様性を検討した。種多様性が高い熱帯林であるボルネオ低地林では、種の多様性と材の生態的特性の多様性が密接に関係していた。これに対し種多様性が低いハワイ山地林では、種内の形態変異によって機能的な多様性が観察された。そのため、熱帯林でも分類学的種多様性と機能的な種群(または種内エコタイプ)の両面を考慮した多様性の実態は複雑であり、種間と種内の機能分化を考慮した視点から種多様性が生態系機能に及ぼす影響を検討する必要がある。
  • 中村 誠宏
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 307-312
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    昆虫による被食が植物の質的・量的な変化を引き起こし、他の昆虫に影響を与えるというプロセスを通って、昆虫間に間接効果が生じることが明らかになってきた。これまでのこの植物を介した間接効果の研究では、植物の変化として誘導防御反応に注目していたために、マイナスの間接効果を検出した報告が非常に多い。しかし、植物の変化として被食による構造の変化と補償生長に注目した場合、プラスの間接効果が生じる可能性がある。そこで本総説では、植物上に構造物を作る昆虫としてエゾノカワヤナギSalix miyabeanaに葉巻を作る鱗翅目幼虫と、植物に補償生長を起こさせる昆虫としてジャヤナギS. eriocarpaにゴール(虫こぶ)を形成するヤナギタマバエRabdophaga rididaeに注目することで、プラスの間接効果を検出した研究を紹介した。さらに、ヤナギの特徴である補償生長に焦点を絞って「プラスの間接効果がどの様な条件で生じ、どのような影響を昆虫群集の多様度に与えるのか?」についても考察した。攪乱環境に適応した植物上の昆虫群集では、補償生長を介したプラスの間接効果が普遍的に生じている可能性が高いことを指摘し、攪乱頻度と間接効果が昆虫群集の多様度へ与える影響についての予測をたてた。
  • 時田 恵一郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 313-316
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 古賀 庸憲
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 316-318
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 山内 淳, 川端 善一郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 319-320
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2005 年 55 巻 2 号 p. 321-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 中静 透
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 323-325
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    大規模長期生態学専門委員会主催の第1回シンポジウムを2004年9月に釧路で開催し、大規模・長期生態研究の例として4つの研究を紹介していただいた。それらを参考に、日本における大規模・長期研究のありかた、国際的な研究プログラムとの連携に関する問題点、応用的研究との接点などについて議論をおこなった。とりわけ、若い研究者が大規模・長期研究や国際的な研究プログラムにもっと主体的なかかわりができるような環境をつくることが重要と考えられた。
  • 川村 健介, 秋山 侃, 横田 浩臣, 安田 泰輔, 堤 道生, 渡辺 修, 汪 詩平
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 327-335
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    大面積で起こる生態学的現象を長期的に評価・定量化する場合、衛星リモートセンシングは有効なツールである。衛星リモートセンシングの主な利点に、大面積を面データとして定量化する広域性と、過去のデータにさかのぼって年次変動をモニタリングする長期的観測が可能な点があげられる。また、衛星情報のみでは判読困難な開墾や都市化といった人間活動情報による周りの環境への影響を定量的に予測する際に、地理情報システム(GIS)および全地球測位システム(GPS)を組み合わせて利用することで、より実利用性の高い予測モデルの構築が可能になると考えられる。本報告では、大面積かつ持続的な研究の例として、衛星モニタリングとGPS/GISを利用した中国内蒙古草原の砂漠化防止研究を紹介する。中国内蒙古草原では、1950年代以降、過放牧の影響による草原の衰退および砂漠化の問題が深刻化している。まず内蒙古草原における砂漠化の背景と既存の研究例を紹介する。その後、衛星リモートセンシングを用いた大面積における草量と草質の推定を試みた研究を紹介する。ここで革質とは、家畜生産を決める草の栄養価の指標となる粗タンパク(CP、crude protein)含有率を指す。調査地は、近年特に土地の荒廃化が著しいシリン川流域草原(約13,000km2)に設定した。空間分解能は250-1,000mと粗いが、データを毎日取得可能なTerra衛星(1999年打ち上げ)搭載のMODIS (Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)センサーから得られる植生指数EVI(enhanced vegetation index)を用いて、草量および草質の推定を行った。その結果、緑色草量(R2=0.79, p<0.01)とCP含量(R2=0.74, p<0.01)が高い精度で推定が可能であることがわかった。EVIとCP含有率との間には、有意な相関は認められなかったが(R2=0.108, p=0.058)、草量が増加するに従ってCP含有率が減少する傾向が見られた。最後にGPS/GISを用いて、羊群の放牧強度が草量に与える影響を定量化する手法の構築を試みた。2002年夏に、3羊群(合計1,751頭、ヤギを含む)が利用する放牧実験エリア(約30km2)を設定し、携帯型GPS(HGR3、Sony製)を3羊群×4個体(計12個体)に取り付け、8月4-8日の5日間連続で羊群の空間分布を調査した。GPSから得られた羊群の行動軌跡を用いることで、GIS上で作成したグリッドセルから放牧強度の空間的分布を定量化した。その結果、放牧強度が高くなると草量が低くなる傾向が認められた。今後は、気象や地形などの空間的な影響に加えて、羊の行動パターン(採食、反芻、休息など)の違いによる影響を考慮する必要性が示唆された。
  • 小泉 逸郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 337-347
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    『大規模長期生態学研究』の定義およびその必要性に関する考えは、研究者ごとに大きく異なる。本稿では、まず『大規模長期生態学研究』を"個体群-個人(グループ)"レベルと"生態系-プロジェクト"レベルの研究に分けて定義づけ、それぞれのレベルにおける研究の必要性について考察する。次に、"個体群-個人"レベルの研究のひとつとして、筆者が7年間にわたり調査を続けてきた、河川性サケ科魚類のメタ個体群動態の研究を紹介する。ここでは、ひとつの対象種に対して様々な研究テーマおよび研究手法を統合することにより、対象種の生態学的現象がより深く理解できることを示す。このような研究分野を統合したアプローチは長期間の継続調査において実現可能性が高い。具体例として、遺伝的解析を大規模長期野外調査に組み入れることにより、個別の研究では分からなかった河川性サケ科魚類の詳細な個体群構造が明らかとなったことを示す。さらに、これらの遺伝的、生態的野外データを理論モデルの枠組みに続合し、野外で実証が困難なメタ個体群動態をシミュレーションにより解析した研究を紹介する。このメタ個体群動態モデルにより、河川生物の保護管理に有効な提言が可能となった。最後に、筆者がこの"個人レベル"における『大規模長期研究』を通して得た教訓などについて率直な意見を述べる。ここでは幾つかの具体例を挙げて、『大規模長期生態研究』を行なう上では、研究者のみならず多くの人達との繋がり(ネットワーク、コミュニケーション)が不可欠であると結論付ける。
  • 福島 路生
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 349-357
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    ダムによる河川分断の淡水魚類種多様性への影響を、北海道日高地方と北海道全域という2つの空間スケールのもとで定量的に評価した。日高地方に設定した125地点では、標高と傾斜角の増加と魚道のないダムで地点下流が分断されることによって水生生物の種数が減少した。一方、北海道全域で過去50年間におこなわれた6674件の魚類調査を解析した結果、標高と傾斜角の他に、流域面積、調査年、調査件数の増加にともなって魚類種数が増加する傾向が見出された。また河口域にダムが建設されることで、最大9種もの淡水魚類が地域的に絶滅することが推定された。このように時空間スケールを違えても淡水魚類の種多様性に及ぼすダムの負の影響は一貫して検出された。しかしスケールを大きくすることで種数-面積関係のような生態学的パターンが新たに見出されることがわかった。大規模長期的な生態研究の意義と問題点についても若干の考察を加えた。
  • 正木 隆, 柴田 銃江
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 359-369
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    日本で例外的に広域または長期におこなわれてきた森林研究の成果のうち、いくつかを紹介した。第一に、北上山地でミズナラの種子落下を23年間(1980-2002年)調査した研究では、際立った豊作(健全種子100個/m^2以上)が1987年と1996年に見られ、そのほかの年では30個/m^2以下の低値安定であった。種子生産の豊凶を示す変動係数(CV)は20年以上の観測をおこなわないと安定した値が得られないことが示された。第二に、東北地方の国有林の約150の森林事務所(範囲は200×500 km)でブナの結実状況の視認が1989年以来継続してきている。2000年までの12年間に、観測点の8割以上で並作以上だったのは1995年と2000年の2回のみであった。それ以外の年では、東北地方の一部でのみ結実するか、またはほとんど結実がみられなかった。結実が同調しているスケールは60-190 kmと判断されたが、これは広域調査をおこなったからこそ把握できた知見である。一方、ブナの花芽形成のトリガーの検出には、林分単位で気象条件をモニタリングする必要のあることが示唆された。これらのブナやミズナラの長期・広域での結実モニタリングから、それを餌とする野生生物の保全管理に有益な情報が提供されることが期待される。第三に、スギ人工林(明治41年植栽)を間伐した試験地で、昭和28年(45年生)から平成14年(94年生)までのモニタリング結果に基づいて、スギの成長を個体ベースで解析した。どの林齢でもスギの直径成長は周辺の自己より大きいスギの胸高断面積合計から負の影響を受けていた。また、45年生時点での各個体のモデル予測値と実測値の差分を計算し、それをモデルの説明変数として加えたところ、それ以降の林齢でモデルの決定係数が0.1-0.2ほど改善された。これは、森林動態予測モデルの開発や、長伐期経営における個体管理技術に貢献する成果である。一方、天然林動態の長期観測研究は開始されてからまだ約10年で、群集動態のメカニズムの解明には至っておらず、さらなる長期観測が重要であると考えられた。林業を産業として再生することなしに、長期・広域観測による森林の科学的研究を深化させることは困難であることを論じた。
  • 下田 和孝, 中島 美由紀, 伊藤 富子, 河内 香織, 柳井 清治, 伊藤 絹子
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 371-376
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    通し回遊型サクラマスの炭素・窒素安定同位体比を生活史ステージに沿って測定し、餌生物の安定同位体比との関係から濃縮係数およびターンオーバータイムを推定した。サクラマス卵の安定同位体比はその親魚と同等の高い値を示し、海洋での餌生物由来の物質を親魚から受け継いだことが示された。サクラマス幼魚の安定同位体比は、河川生活の開始直後においては卵と同様に高い値を示した。河川生活の進展に伴い幼魚の安定同位体比は河川での餌生物の値に近づくように低下したが、河川生活の開始およそ120日後以降変化が認められなくなった。この時点での安定同位体比は河川での餌生物の平均値と比べ、炭素で2.1‰、窒素で4.0‰高い値を示した。これらの値がサクラマス幼魚におけるそれぞれの元素の濃縮係数に相当し、ターンオーバータイムは120日程度であると考えられた。
  • 森 照貴, 三宅 洋, 柴田 叡弌
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 377-386
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    岐阜県北部を流れる2つの小規模河川において、河畔林が現存する河川区間(現存区)と河畔林が伐採された河川区間(伐採区)との間で環境特性および底生動物の群集構造を比較した。相対光量子束密度および底生動物の生息密度は現存区よりも伐採区で高かった。刈取食者および捕食者に属する底生動物の生息密度は現存区より伐採区で高かった。光量の増加に伴う付着藻類の一次生産量の増加が、底生動物(特に刈取食者)の増加を引き起こしたものと考えられた。付着藻類量は伐採区よりも現存区で多かった。刈取食者の生息密度が増加するに伴い摂食圧が増大したために、付着藻類の現存量が減少したものと考えられた。河畔林の部分的な伐採により底生動物の群集構造が変化していた。伐採による群集構造の変化は、コカゲロウ属の生息密度の変化と強い関係があるものと考えられた。河畔林の部分的な伐採は、光環境の改変を介して、高次の栄養段階に属する底生動物の群集構造に影響を及ぼすことが明らかになった。
  • 福田 真由子, 崎尾 均, 丸田 恵美子
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 387-395
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    日本の河川敷で分布しているハリエンジュの種子繁殖とその初期侵入過程を明らかにするため、定着初期のハリエンジュ群落が成立する埼玉県の荒川中流域の中州において、2001年9月-2003年12月の期間に追跡調査を行った。その結果、ハリエンジュは春の発芽は見られないが、期間中に台風により中州が水没して土砂の供給を受けた各3回の増水の後、新たな堆積物上に一斉に発芽が見られ、河川敷で種子繁殖していることが明らかとなった。増水の時期が異なる3つの当年生実生集団の最終個体重を比較した結果、増水の時期が早いほど発芽当年の最終個体重は大きくなり、また最終個体重が大きくなるほど翌年までの生存率が高くなる傾向が見られた。そして遅くても9月の増水によって発芽することが定着のためには必要であることがわかった。増水後に発芽した実生は、粗砂からなる粒径組成の堆積物に集中して見られ、このような堆積物はハリエンジュの発芽に適した条件を備えているといえる。
  • 高村 健二
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 397-398
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 菊澤 喜八郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 399-405
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 甲山 隆司, 中静 透
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 407-408
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 佐竹 暁子
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 409-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 小関 右介
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 409-412
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 近藤 倫生
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 413-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 酒井 章子
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 2 号 p. 413-415
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2005 年 55 巻 2 号 p. App6-
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2017/05/27
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