日本生態学会誌
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67 巻, 2 号
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原著
  • ―土壌圏炭素動態の解明に向けた新たな試み―
    友常 満利, 鈴木 庸平, 大塚 俊之, 吉竹 晋平, 墨野倉 伸彦, 新海 恒, 小泉 博
    原稿種別: 原著
    2017 年 67 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    マングローブ林における土壌圏から大気への炭素放出の動態を明らかにするため、従来型の自動開閉チャンバー 法(AOCC 法)装置に改良を加え、堆積物表面からのCO2 放出速度(土壌呼吸速度)の連続測定を試みた。石垣島吹通川流域のオヒルギを優占種とするマングローブ林において、2013 年7 月4 日から8 日にかけて、土壌呼吸速度と環境要因の連続測定を行った。その結果、AOCC 法を用いることで、従来考えられていたマングローブ林や陸上森林生態系とは大きく異なる土壌呼吸の変動パターンを検出できた。本研究では、土壌呼吸速度と土壌温度に明瞭な相関は認められなかったが、潮位変動の影響を受けて複雑に変動する土壌温度が、土壌呼吸速度の変動パターンを説明する一つの要因として考えられた。土壌表層の冠水直前や干出直後には、一時的に高い土壌呼吸速度が観測され、潮位変動にともなう物理的影響と推察された。干出時の平均土壌呼吸速度(140 mgCO2 m-2 h-1)は陸上生態系に比べて低い値を示し、これは測定された土壌呼吸に根呼吸がほとんど含まれていないこと、土壌圏の酸化的環境が少ないこと、発生したCO2 が溶存無機炭素として流失していることなどが原因と考えられた。冠水時における堆積物から表層水を通して大気へ放出されるCO2 の速度は干出時の約50%程度であった。従来のマングローブ林における土壌呼吸量の推定は主に干出時に測定した値を基にしていることから、年間の土壌呼吸量が過大評価されており、生態系純生産量の推定にも大きな影響を与えていることが示唆された。以上のことから、マングローブ林における土壌圏の炭素動態を明らかにするためには、様々な環境条件を考慮したうえで、AOCC 法などによる連続的な土壌呼吸速度の測定が有効であると考えられた。
  • 木田 森丸, 金城 和俊, 大塚 俊之, 藤嶽 暢英
    2017 年 67 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    過去20年の研究でマングローブ林は熱帯森林生態系でもっとも炭素賦存量の多い生態系のひとつであることが示されており、その生態学的役割が注目されている。マングローブ林は河川を通じて流域および沿岸海域とつながっており、河川中の溶存態の有機物(Dissolved Organic Matter, DOM)を鍵としてマングローブ林の炭素循環および生態学的役割を議論することは重要である。DOMは生態系を支える栄養塩や微量金属元素のキャリアーとして働き、沿岸域の豊かな生態系を下支えしている可能性があるが、その機能性や循環速度は組成(構成成分割合)に応じて変化することが予想される。そこで本研究では、DOMの多くの機能を担い、かつ微生物分解に対して難分解性とされるフミン物質の組成をDOMの質的評価法として取り入れることで、沖縄県石垣島吹通川マングローブ林流域におけるDOMの特性把握を試みた。源流から海にかけて採水試験した結果から、吹通川のフミン物質割合は源流から海にかけて減少する傾向を示し、フミン物質割合の低い海水との混合および林内土壌へのフミン物質の凝集沈殿が示唆された。また、吹通川源流水中のフミン物質割合は他の非有色水系河川に比べて高く(60.9〜75.9%)、マングローブ林を含む沿岸生態系へのフミン物質の供給源として重要な役割を果たしていることが示唆された。加えて、マングローブ林内で採取した表層0〜25 cmの土壌から超純水を用いて水抽出有機物(Water Extractable Organic Matter, WEOM)を逐次抽出し、WEOM溶液中のフミン物質割合を測定した。その結果、電気伝導率の低下に伴いWEOM溶液のフミン物質濃度は大きく増加し、フミン物質が液相に移行溶出されることが確認された。これらの結果は、海水塩の影響により、マングローブ林内土壌に難分解性のフミン物質が選択的に保持されることを示唆するものであり、マングローブ林土壌の有機炭素貯留メカニズム解明に向けた大きな糸口を示したと言える。
総説
  • 長谷川 元洋, 藤井 佐織, 金田 哲, 池田 紘士, 菱 拓雄, 兵藤 不二夫, 小林 真
    2017 年 67 巻 2 号 p. 95-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    土壌動物の生態学的研究における近年のトピックとして、地球環境変動などの撹乱を視野に入れた土壌動物の分解過程や炭素動態に与える影響の評価、群集生態学における進化的アプローチ、安定同位体解析や新たな形質をベースとした手法の導入、生態系の地上部と地下部の連携の詳細なプロセスの実験的検証などがあげられる。本総説では、これらに関連する次の6つのトピック、分解における土壌動物の機能、ミミズの炭素隔離、ミミズの群集形成プロセス、トビムシにおける形質ベースアプローチ、安定同位体を用いた土壌動物の食性解析、土壌動物が植物に及ぼす影響について近年の研究成果をレビューした。
特集 生物のクローン性:クローン増殖による分散と局所環境変化への応答からその有効性を考える
  • 荒木 希和子, 福井 眞
    2017 年 67 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
  • 大河原 恭祐, 飯島 悠紀子, 吉村 瞳, 大内 幸, 角谷 竜一
    2017 年 67 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    社会性昆虫であるアリには分巣と呼ばれるコロニー創設法があり、それに基づき複数の女王と複数の巣からなる多女王多巣性のコロニーが形成される。一部の多巣性の種では、コロニーが拡大してもメンバー間の遺伝的均一性が維持され、巣間では敵対行動が起きない。それによって種内競争を緩和し、コロニーを拡大できるとされている。これらの事は遺伝的に均一性の高い集団の形成はアリでも資源の占有や種間競争に有利であることを示唆している。本研究では多女王多巣性で、クローン繁殖によって繁殖虫を生産するウメマツアリVollenhovia emeryi についてコロニー形態や遺伝構造を調べ、その繁殖様式と多女王多巣性の発達との関連を調べた。さらにこうした繁殖機構をもつウメマツアリがアリ群集内の種間競争で有利に働き、優占的に成育できているかを、他種とのコロニー分布を比較することによって推定した。金沢市下安原町海岸林でのコドラートセンサスによる営巣頻度調査と巣間のワーカー対戦実験により、調査区内には8 個の多巣性コロニーがあると推定された。さらにそのうちの主要な6 個のコロニー(S1 ~ S6)について、女王とワーカーを採集し、その遺伝子型をマイクロサテライト法で特定した。4 つの遺伝子座について解析を行ったとこ ろ、女王には19 個のクローン系統が確認され、1 つのコロニーに2 ~ 5 個の系統が含まれていた。また各コロニーのワーカーの遺伝的多様性は高かったが、コロニー間での遺伝的分化は低く、6 個のコロニーの遺伝的構成は類似していた。このような遺伝的差異の少ないコロニー群は、越冬前に起きる巣の再融合によってコロニー間で女王やワーカーが混ざるために起きると考えられる。さらに類似した生態ニッチを持つ腐倒木営巣性のアリ群集でウメマツアリの優占性を調べたところ、営巣種14 種の中でウメマツアリは高密度で営巣しており、比較的優占していた。しかし、ウメマツアリによる他種の排除や成育地の占有は見られず、ウメマツアリは微細な営巣場所を利用することによって他種との住みわけを行っていた。これらのことからウメマツアリのコロニー形態や遺伝構造には、他の多女王多巣性種とは異なる意義があると考えられる。
  • ─コロニーベースモデルによる検証─
    中丸 麻由子
    2017 年 67 巻 2 号 p. 133-145
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    環境撹乱があるときにはリスクを回避するために分散型が有利であると言われている。しかし、環境撹乱下において非放浪種のアリでは非分散型である。また、珊瑚等のように分散型と非分散型を使い分ける生物においても、環境撹乱下において非分散型になっていることもある。このような固着性生物で、環境撹乱下において非分散型が有利になる生態上の条件は何だろうか。そこで、著者はアリのコロニーに焦点を当て、コロニーサイズの成長やサイズ依存の死亡率、そして分巣するときのコロニー分割比率を考慮したシミュレーションモデルやサイズ構造のある行列モデルを構築し、コロニーベースモデルと名付けた。非分散型のアリは、巣を1:1に分割して、一方が隣の空き地へ移動するとした。分散型のアリはコロニーを大きなコロニーと小さなコロニーに分割し、小さなコロニーをランダムに分散させて空き地に定着させるとした。小さなコロニーは女王飛行に相当する。コロニー成長の無いモデル(つまり、コロニーサイズ依存性の無いモデル)では分散型コロニーが有利になるが、小さなコロニーの死亡率が高く、環境撹乱頻度も比較的高い時には非分散型が有利になる事を示した。しかし、環境撹乱が広範囲で生じる時にはリスク回避を行う事の出来る分散型コロニーが有利となった。このアリに関する研究結果から、コロニーダイナミクスを考慮する事で、アリに限らず固着性生物において非分散型が分散型に対して生態的に有利になる条件を探る事が出来る。 キーワード:格子モデル、生活史、分巣、シミュレーション、サイズ構造のある行列モデル
  • ―固着性生活をおくる上での空間不均一性への適応―
    福井 眞, 荒木 希和子
    2017 年 67 巻 2 号 p. 147-159
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    種子植物にはクローン成長で親ラメットの近隣に娘ラメットを生産することで、遺伝的に同一な株の集合が個体となるクローナル植物がある。多くの陸上植物は固着性であり、一度定着したラメットはその場所から移動できないため、クローン成長によるクローンサイズの拡大に伴い、同一クローン内のラメットでも時間空間的な環境変動を経験する。このようなクローン成長に対し、種子繁殖は遠方への分散で環境変動のリスクを回避することができる。繁殖戦略の違いは分散戦略の違いと、遺伝組成の相違の観点から議論されてきた。成育地での撹乱は個体の死亡に大きく影響するが、個体の成育環境への適合性を前提として撹乱前後の成育環境の変化に注目した分散戦略の進化はこれまで考えられてはこなかった。本稿では、成育地への撹乱はそこにいる生物個体の死亡に直接影響するというよりも、成育地の土壌水分や光強度といった性質の変化を通して間接的に影響するものとして、成育環境の時空間変動を表現した空間明示型の個体ベースモデルによってシミュレーションを行った。時空間的に変動する成育環境において、クローン成長のみの繁殖は不適であった。しかし、少ない機会で種子繁殖による遺伝的多様性を保ちつつ、旺盛にクローン成長を行う戦略がこのような環境で有効性を発揮することが示された。また、自然界でクローン成長を行っている植物は、このような時空間的な環境の違いに応じた繁殖をおこなっているかをクローナル植物の野外データを用いて検証した。野外個体群内の個体の位置と遺伝子型を調べ、ペア相関関数によって空間的遺伝構造を種間で比較した。さらに、シミュレーションにおいても同様のデータの取り扱いが可能であるため、自然界で見られる空間的遺伝構造を再現するようさまざまな変動環境下でシミュレーションを行った。その結果、スズランの野外個体群のデータは、成育環境との適合性を考慮したうえで、インパクトの小さい環境変動が高頻度で起きているシミュレーションの空間的遺伝構造パターンが類似し、このような環境変動が個体群構造に影響していることが示唆された。
  • 広瀬 大
    2017 年 67 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    菌類は菌糸体もしくは酵母として生活する微生物である。いずれの生活型においても、菌類の殆どの種はクローン増殖する能力を有する。微小であり観察できる表現型が少ないことに加え、単相と重相の世代を持つ種が存在することなどから、菌類は個体の判断やその連続性の把握が難しい生物である。その様な菌類におけるクローン増殖の生態的意義を明らかにするためには、核酸をターゲットにした分子マーカーは強力なツールとなる。分子マーカーにより決定される遺伝子型を基にした遺伝的変異の空間分布に関する研究は、個々の菌種の生活史や繁殖戦略の解明に繋がると期待される。本稿では、まず菌類のクローン増殖の生態的意義を考える上で前提となる基本的な生活様式について概説する。次に、外生菌根菌における遺伝的変異の空間分布研究を例に、菌類のクローン増殖にみられるパターンについて紹介する。
  • ―細胞の特殊性とクローン生物との共通性を考える―
    荒木 希和子, 福井 眞, 杉原 洋行
    2017 年 67 巻 2 号 p. 169-180
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    質を示すのは良性腫瘍である。また、悪性腫瘍(ガン)は、自らゲノムを改変したサブクローンを作り、そのニッチ幅もしくは環境収容力を広げることによって、周辺組織や他臓器に適応し、浸潤・転移する。これは細菌以外の生物個体レベルでは知られていない特異的な進化メカニズムである。マクロな生物の成育環境と同様、ガン細胞も変動環境下に存在し、治療や免疫は生体内での細胞に対する攪乱と捉えられる。そして、腫瘍細胞に突然変異等の遺伝的変化が蓄積するに伴い、ゲノム構成もサブクローン間で異なってくる。この遺伝的変化の時間的進行は、クローン性進化の分岐構造として、系統樹のような分岐図として示すことができる。組織内でのガン細胞の空間的遺伝構造は、組織内や成育地内で環境の不均一性とサブクローンの限られた分散距離を反映し、サブクローンがパッチ状に分布した構造になっている。このように、細胞レベルのクローン性の特性を生物のクローン性と比較することで、両分野に新たな研究の進展をもたらすことが期待される。
  • : クローナル植物とクローン性を示す他の生物群の比較
    鈴木 準一郎
    2017 年 67 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    本特集では、「クローン性」を示すと考えられる生物に注目しそれらの特性を紹介してきた。本稿では、研究例が多いクローナル植物とそれ以外の生物群をモジュール性という観点から比較する。そのために、まず、「クローン性」(clonality)とクローナル植物が、この40 年間にどのように定義されてきたかを紹介する。続けて、その定義の構成要素であるモジュールの概念を紹介する。さらに、クローナル植物と「クローン性」を示す生物群の比較を、生態学的あるいは遺伝学的な機能の単位に注目して試みる。最後に、モジュールと撹乱と分散の関係を考察する。
学術情報
学術情報特集 次世代の経済・社会と生物多様性の政策統合に向けて
  • 西田 貴明
    2017 年 67 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
  • 岡野 隆宏, 笹渕 紘平
    2017 年 67 巻 2 号 p. 205-215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    2014 年に公表された内閣府世論調査の結果では、「生物多様性」の言葉の認知度が低下していることが明らかになった。生物多様性条約COP10 以降、生物多様性の主流化に向けてさまざまな施策が進められてきたにも関わらずである。一方で、国連生物多様性の10 年日本委員会や事業者を始めとする、各主体の具体的な取組には着実な進展がみられる。また、経済価値評価などのツールも活用が進んでいる。生物多様性の主流化は進んでいるのか、いないのか。COP10 以降の具体的な取組を概観し、それぞれが抱える課題を整理しつつ、今後の方向性について議論する。また、新 たな仕組みづくり等の最新の政策動向を追う。
  • 佐々木 宏樹
    2017 年 67 巻 2 号 p. 217-227
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    農業従事者の高齢化等による農林水産業による地域環境への働きかけの減少により、今後十分な生態系サービスが供給されるかどうか懸念されている。このような中、近年、政府の直接的な支援に加え、「農」を支える多様な連携軸の構築を通じた農山村の活性化が注目されている。本稿では、政府の直接支払いの在り方、そして多様なステークホルダーによる農山村の生物多様性保全活動の可能性とその仕組みづくりについて、国内外の取組や研究事例を基に考察した。農業生物多様性の保全を総合的に推進するためには、生態系サービスの供給者たる農業者にインセンティブを付与する環境支払いの充実に加え、生物多様性を入り口とした農村の活性化に向けた多様な取組に対する政府の後押しも必要となろう。
  • 生物多様性地域戦略を活かした地域づくり
    上野 裕介, 増澤 直, 曽根 直幸
    2017 年 67 巻 2 号 p. 229-237
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    生物多様性に関する行政施策は、転換期を迎えている。その最大の特徴は、生物多様性の保全や向上を通過点ととらえ、豊かな社会の実現をゴールに据えている点である。本論説では、地方自治体が策定する生物多様性地域戦略を軸に、生物多様性を活かした地域づくりに関して地方自治体が策定する計画や政策の現状と可能性を紹介する。その上で、生態学者と行政(環境部局と他部局)、民間、地域社会の連携による経済・社会と生物多様性の統合化に向け、生態学者はどのような点で期待され、社会に貢献できるのかを考える。
  • 岩浅 有記, 西田 貴明
    2017 年 67 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    グリーンインフラストラクチャー(Green Infrastructure、以下「GI」とする)は自然生態系が持つ機能を活かして社会資本整備や国土管理を行う新たなインフラの概念であり、従来型のインフラに替わる新たな概念として欧米を中心に近年広まってきている。欧米では既に都市計画や農業土木、自然環境保全など、あらゆる分野でブレイクスルーをもたらす基礎的な概念として浸透しつつある。日本では、2015 年8 月14 日に新たな国土利用計画及び国土形成計画が閣議決定され、さらに同年9 月18 日に社会資本整備重点計画が閣議決定された。日本においても国土計画や社会資本整備に関する計画にGI の概念や施策の方向性が初めて盛り込まれた。本稿ではまず日本における国土の状況を述べ、それに対してGI がどのように活用できるかを、概念や事例を挙げながら説明する。そして国内外におけるGI に関する最近の動きを追い、日本での今後の取組や方向性について論じる。
  • 豊田 光世
    2017 年 67 巻 2 号 p. 247-255
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    自然環境の保全を進めるうえで、多様な主体の参加と協働とはいかなる意味をもち、それらを支える合意形成とはどうあるべきなのだろうか。本稿では、新潟県佐渡市で進めてきた三つの事例を比較しながら、地域協働の保全活動推進に向けた合意形成のあり方を考察する。合意形成は、異なる意見を統合し、対立を克服するプロセスである。対立の可能性を検討するコンフリクトアセスメントから始まり、話し合いの実践、合意の形成、合意事項の実践と進む。それぞれの段階において、あるいは現場の状況に応じて、考慮すべきことが変化する。特に、「参加」というものをどのように理解するかということが、合意形成の質に大きく影響する。本稿では、市民参加の異なる捉え方を踏まえ、話し合いの場のデザインやプロセス設計の具体的考慮点と工夫を事例から分析し、協働という深い参加を実現するための合意形成に必要な視点を示す。
  • 大澤 剛士, 上野 裕介
    2017 年 67 巻 2 号 p. 257-265
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル フリー
    研究成果を実際の現場、例えば保全活動や自然再生事業、インフラ整備における環境アセスメント等の実務において活用してもらいたいというのは、応用分野に興味を持つ生態学者の望みである。しかし、現実には研究成果、少なくとも日本生態学会関係者の研究が現場に反映されている例は決して多くない。なぜ、生態学者の思いは片思いになってしまうのだろうか?研究と実務の間にあるギャップは何なのか?本論説は、研究と実務の間にあるギャップ(Research-Implementation Gap)と、その原因、それを埋めるために生態学者ができることについて、筆者らを含む行政、民間、研究者から構成される勉強会のメンバーで議論してきた内容を論じる。さらにはそれらをふまえ、演者ら、生態学に軸足を置きながら実務に近い現場で研究をしている立場から考えた課題解決に向けた鍵と、その実現に向けた今後の展望を議論する。
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